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翔ちゃんが『セクシー』に挑戦しました

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その表情はお菓子を作る時の顔を同じくらい嬉しそうだ。
あ、その顔かわいいなぁと2歳年上の恋人に微笑み返す。
その瞬間、ぎゅうっと抱きしめられる体温に、どうしようもなくときめいてしまう。
「翔ちゃん可愛いすぎです」
「お前の方がかわいいし」
くすぐったいやり取りが嬉しい。
少し前までなら抱きつかれるなり恥ずかしくて逃げ出していたが、気持ちが通じあえば彼の抱擁はただ甘いばかりだ。
翔の為だけにその腕はある。
「おーい二人とも、この部屋空いているよー」
レッスンルームの前で手を振る羽鳥の声が呼んでいる。
二人は顔をあげ、その声に応えて歩き出した。
☆☆☆
「いやったー!出来たぜ」
「よし、僕も楽譜と歌詞をPCに入力すれば完成だ」
「わーい。良かったですねぇ」
それぞれが晴れやかな顔で頷きあう。
「けど、羽鳥ってすげーんだな。あんなに早く曲作っちゃえるなんて」
「いやいや、そんなことはないんだよ。二人の歌がインスピレーションをくれたおかげだよ」
ぶんぶんと手を振り、恐縮する様子に、謙遜なんだなと翔は感心した。
歌詞はまだできていなかったのに、イメージを決めて最初の出だしが決まれば、あとは泉が湧き出るようにするすると完成した。
羽鳥の指から奏でられる音に背中を押され、気持ち良く声を出すことができて、気付いたらもう歌い終わっていたのだ。
「僕、こういう雰囲気の曲って書いたことなかったけど、四ノ宮君の声を聴いていたらすごく書きたくなったんだ」
「僕もこんなカッコイイ曲を歌えて嬉しいです」
「でもさ、別に俺いらなかったんじゃねえの。コイツの歌だけで十分だったんじゃないか」
「何を言ってるんだ!」
信じられないという表情で振り向き、翔の肩をがしっとつかみ、その大人しそうな容貌からは想像できないくらいの形相で叫ぶ。
「来栖君がいなければこの曲は出来なかったんだよ!君のその小悪魔的な声がなければ、なければあぁぁ」
「うわあああ!ご、ごめんわかったから。ひー」
ガクガクと揺さぶられて腕が痛い。
「はいはい羽鳥君、落ち着いてねー。翔ちゃんが怯えちゃっていますよ」
那月がなんとか羽鳥を翔から引き離し、どうどうとなだめている。
羽鳥はどうやら、音楽に関しては我を忘れてしまう性質らしい。でも、そんな彼だから200倍の難関を突破して早乙女学園に入学できたのであろう。
この学園にはまだまだすごい奴がいっぱいいるんだな、と翔は嬉しくなった。
ライバルが強ければ、自分もやる気が出る。お互いに向上することができる。
そんな出会いがこの学園には沢山あって、心から楽しいと思う。
すっげえドキドキして、生きているって実感できる。
「あ、あの、来栖くんごめんね。僕ちょっと興奮しちゃって。痛かっただろ」
やっと自我を取り戻した羽鳥が申し訳なさそうに頭を下げる。
「全然ヘイキだし、大丈夫だって。それより、また一緒に曲作ろうぜ」
「勿論だよ。じゃ、僕もう行くね」
楽譜を抱きしめて嬉しそうに駆けて行く後ろ姿を見つめながら、翔は満足そうに笑う。
そんな横顔が愛おしくて、那月もにっこりと笑顔になる。
那月の視線にに気付いて、ちょっと顔を赤らめた翔が唇をとがらす。
「なに嬉しそうに笑ってるんだよ。俺はバレるんじゃないかってヒヤヒヤしてたのに」
「すみません。だけど、とっても魅力的でしたよ」
つ、と人差し指で翔の細い喉をなぞり、鎖骨の辺りで止める。
「でも、羽鳥君に翔ちゃんのあんな姿を見せたのは僕のミスでした」
はだけられた胸元を隠すために、那月は翔のシャツのボタンを嵌める。
「お前がやったくせに」
「はい、だから今とっても後悔してるんですよ」


那月が何を後悔しているかといえば、翔からセクシーさを引き出す為の作戦だった。
もともと羽鳥が作っていた曲は、ミドルテンポで明るい曲調だった。それを少しアレンジして、もう少し大人っぽい曲にしてみないかと持ちかけると、羽鳥もノってきたので那月の考えを話した。
タイプの違う男二人が、同じ女性を口説く為に歌う曲という設定にして、那月は年上の男性、翔は年下の男性で、それぞれの持ち味を活かして口説くという展開だ。
そんなのはレンの役だろ、と最初は嫌がっていたのだが、課題の為ですよと詰め寄ると、渋々首を縦に振った。
なかなか気持ちが掴めずに照れる翔にどうしたものかと考えていたら、那月の頭に天使からのささやき声が響いた。
そうか、恰好から入ればいいかも♪
そんな訳でセクシーな翔を演出する為に、翔のネクタイを解きシャツの前をはだけさせたのだった。
さらに歌いながら指と指を絡め、翔を挑発するように顔を寄せていく。
はたから見れば、恋人同士の危うい絡みに見える密着度だったが、那月がいつも翔に激しいスキンシップをしているのと、没頭している時の羽鳥には音以外のモノには意識がいかないのとで、かなりきわどい体勢だったが二人の関係がただのルームメイト以上のものだということは、気付かれなかった。
それにしても、那月が耳元で歌う声に、赤くなって震える翔はたまらなく魅力的だった。
大きな青い瞳に那月を映し、恍惚とした表情で那月の声を追って歌う翔。
いつもは元気でよく通るその声が、甘く媚びるような色を滲ませる。
これです・・・!!
その声の変化は那月に歓喜をもたらし、羽鳥に特大級の衝撃を与えた。
これだ、これなんだとブツブツ呟く羽鳥は鮮やかな指使いでピアノを操り、ドラマティックな素晴らしい曲を完成させるに至った。
そのままの勢いで翔の課題曲も録音し、無事に両方の課題をクリアした訳なのだが。
(ちょっと調子にのっちゃいましたね)
自分以外の人間に、翔の白くて滑らかな肌をさらしてしまったのは失態だった。




「僕だけの翔ちゃんなのに・・・」
いじけた声を出してうなだれる姿は、大きな犬が耳と尻尾をたれてしゅんとしているように見える。
コイツ、凶悪的にかわいいじゃねえかというのは心の中だけの呟きだが、しょんぼりしている那月の姿を見るのは好きではない。
「はーあ、めんどくさい奴だな。そのお陰で俺の課題も出来たんだから、結果的に良かったじゃねえか」
背の高い那月の頭を撫でるために、翔は両手を上に挙げる。
よしよしと柔らかい髪の毛に触れると、那月は嬉しそうに微笑んだ。
「元気でたか?」
「はい。でました」
「そっか。よかった」
翔のネクタイを結ぶ那月の手がふと止まる。
次の瞬間目の前に影が出来て、翔の唇はあたたかいものに塞がれた。
すぐに離れたキスに心臓がドクドク音を立てる。
「おまえ、この部屋中は外から丸見えだぞ」
「大丈夫だよ。僕の背中で翔ちゃんの姿は隠れちゃいますから」
「~~~~~バカ」
ぷいっとそっぽを向くが、真っ赤な顔をしているのは那月にバレているだろう。
キュ、とネクタイを締め終えると、今度はぎゅっとハグされる。
「お部屋に、帰りましょうか」
耳元で囁かれ、翔はこくんと頷いた。
「翔ちゃん、お願いがあるんですが」
背中の手が腰にまわり、那月の手が愛撫するように動く。
「な・・・に」
知らない感覚に、背中の毛がそそけ立つ。
いつも触られてるのと、何かが違う。
翔は初めての感覚に怯えながらも、その手が与えるぬくもりを気持ち良いと感じる。