贈り物
暗い色の空から、冬の使者がちらほら落ちてくるのに気付いたのは、アムロの肌を赤く染め上げた後だった。
明日は積もるのだろうか?
たぶん、薄化粧ぐらいだろうな。白く降り積もる季節の贈り物に、君はどんな顔で喜ぶのだろう。その姿は、私の瞳にどんな風に映るのだろう。
季節は秋から冬へと移り変わる。
どんなに凍てつく寒さの中でも、君と二人ならいくらでも熱くなれる。この温泉の様に、いつまでも尽きる事無く溢れる情熱を君に注ぐのが私の使命だな。
腕の中に抱いたアムロの事を想っていると、彼の持って来た酒を思い出し、徳利を手に取る。既に中身は冷めてしまっていたが、喉を潤す為に少しばかり風味の落ちた酒を飲み干した。そして、まどろみに漂うアムロの唇を軽く塞いだ。
「・・んっ・・・さけ?・・」
アムロは鼻にかかる声を上げて、薄く瞳を開けた。
「お裾わけだ。さぁ、このままでは風邪を引く。部屋に戻ろう」
「・・あぁ・・そうだな」
アムロはシャアの肩に手を置き、身体をゆっくりと起こして湯船から上がる。
気だるそうに髪を掻きあげると、うなじにかかる髪が退かされ、チラリと見えた赤い痕を見つけて、シャアはほくそ笑む。
「善処はしたぞ」
「あ?何か言ったか?」
「いや、なんでもないよ」
アムロに続いてシャアも上がると、足元の盆を拾い上げた。そして、徳利と一緒に乗った白い花を手に持つと、じっくりと眺めた。
「君の方がもっと赤く染まっていたな」
終 2008/12/03 (加筆改訂 2011/12/07)