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【シンジャ】発情期は恋の季節【C81】

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Prologue

 この世界には三種類の人間が存在している。大型肉食類、小型肉食類、草食類の三種類である。その三種類の人間の関係は平等では無い。三種類の人間の関係を説明するには、三角ピラミッドを描くのが最も分かり易いだろう。
 この世界は三角ピラミッドのようになっており、その頂点に大型肉食類が君臨している。大型肉食類は他の者たちよりも圧倒的な力を持っているのだが、他の者たちよりも人口が少ない。その下にいる小型肉食類は大型肉食類よりも力は弱かったが、大型肉食類よりも人口は多かった。その更に下にいる草食類は小型肉食類よりも更に力が弱かったが、小型肉食類よりも更に人口が多かった。そんな世界では、大型肉食類が小型肉食類や草食類を従えるのが当然であった。
 そんな世界の中にある豪華な宮殿の中には、渦巻き状になっている角と小さな耳を持った、青年と呼ぶにはまだ幼さが顔や体に強く残った人物の姿がある。この世界で暮らしている者たちは、耳や尻尾などという動物の特徴を皆持っていた。
 廊下を迷いの無い動きで進んで行っている白いプルメリアの花のような髪の色をした彼は、この王宮の官のみが着る事を許されている官服を身に纏い、頭には後ろの部分が長い帽子であるクーフィーヤを被っていた。彼が被っている芽吹いたばかりの芽のような緑色の帽子【クーフィーヤ】も、官しか被る事が出来無い物である。
 渦巻き状になっている角と垂れ気味の小さな耳。そして、短い尻尾を持った彼は草食類である羊の一族の者である。地位の低い草食類の彼が官をしている事は、他の国の者からすれば驚くべき事であった。他の国では地位の低い草食類が官になる事は出来無い。しかし、この国には彼だけで無く何人もの草食類の官がいた。
 更に彼はただの官では無い。ここ極南地帯にある島国、シンドリア王国の政務官であった。
 ジャーファルという名前の彼が草食類でありながら政務官をしているのは、この国を打ち立てたシンドバッドと古くから付き合いがあるからでは無い。古くからの付き合いである程度で、政務官になる事など肉食類草食類問わず出来無い。シンドリアの政務官をジャーファルがしているのは、驚くほど見聞が広く英明であるからだ。
 最初は草食類でしかもまだ年若いジャーファルを政務官にする事に異議を唱える者もいたのだが、今は異議を唱える者は宮中には一人もいなくなっている。異議を唱える者がいなくなったのは、ジャーファルの働きを見て異議を唱える事が出来無くなったからだ。
 国政の場である白羊塔【ハクヨウトウ】の廊下をジャーファルが小さな尻尾を揺らしながら歩いているのは、王であるシンドバッドに先日話した件に対する返答を貰う為である。シンドバッドに先日話した件というのは、修繕が必要な下水道についてである。小さな国でシンドリアはあるのだが、大国と比べても遜色が無いほど社会基盤が整っていた。
 侍女が欠かさず掃除をしている為小綺麗な廊下を進んで行くと、シンドバッドが執務を行う為の部屋が見えて来た。不審な人物が中に勝手に入らないように、そんな部屋の前には大柄な武官が左右に立っている。部屋の前まで行くと、そんな武官に話し掛けた。
「王と話しがあります」
 自分の話しを聞いても、武官は普段のように部屋の扉を開ける事は無かった。
 渋い顔をして扉を開けようとしない彼らの姿を見て、全てを察する事が出来た。たったこれだけの事で全てを察する事が出来たのは、今まで何度もこの部屋の主が同じ事をしているからである。何度言えば分かるのだ。王の自覚をもっと持って欲しい。溜息を吐きたい気持ちになりながらそう思っていると、武官から控えめな声で話し掛けられた。
「王は現在部屋の中にはおりません」
 武官の言葉は想像していた通りのものであった。
「何処にいるんですか?」
 何処に居るのかという事を彼らが知らない事は分かっていたのだが、一応そう訊ねた。
「何処におられるのかは……。正午前に少し出掛けて来ると言って部屋を出て行かれたっきり……」
「そうですか」
 またあの人はという事を内心思いながら、シンドバッドの執務室を離れ同じ建物の中にある文官が仕事をする部屋へと戻った。そこに戻ったのは、シンドバッドが戻って来るまで他の仕事をする為では無い。出掛ける事を部下に告げる為である。
 所用で出掛けなければならなくなったという事を部下に伝え部屋を離れた後、王宮を離れ王宮の下に広がっている市街地に入って行った。
 他の国では、政務官が護衛を連れず王宮を離れるという事は普通無い。政務官の命を狙う者が現れる可能性があるからだ。しかし、ジャーファルがこんな風に護衛を連れず王宮を離れるのは、珍しい事では無かった。それは、この国が護衛を連れて行く必要が無いほど平和な国である事だけが理由では無い。大型肉食類に力で勝つ事が出来無い草食類であるというのに、束になってやって来た大型肉食類をいとも簡単に倒してしまうほど彼が強かったからである。
 草食類である彼が肉食類に勝つ事が出来るのは、類ない体格をしているからという訳では無い。見た目は全くその反対である。小柄な部類に入る身長に、貧弱な体つきを彼はしている。そんな体つきであるというのに何故そんなに強いのかというと、幾つか理由がある。その一つは、彼が特殊な暗殺術の名手であるからだ。
 夕方と昼の丁度中間に当たるこの時間、商店や民家が集まっている市街地の中には大勢の人の姿があった。この国が小さな国であるからだけで無く政務官という立場で自分がある為、この国で自分の顔を知らぬ者は殆どと言って良いほどいない。その為、市街地の中を歩いていると諸方から声を掛けられた。それに応えながら市街地を歩いているうちに、目的の建物が見えて来た。
 商家である事が分かる外観をしたその建物は、まだ明るい時間であるというのに店を閉じていた。それを見て自分の思っている通りである事を確信していると、建物の二階の窓から声が聞こえて来た。シンドリアの一般的な建物には扉が無い。窓や出入り口は布で覆ってあるだけである。その為、明瞭に聞き取る事が出来た声を聞き、迷うこと無く建物の出入り口を覆っている布を捲り建物の中へ入って行った。
 家主の許可を得ずに建物の中に入った事に対して何か思う事は無かった。今思っている事は、思っていた通りであったという事と、何度言えば行動を改めてくれるのだろうかという事だけであった。店を閉じた状態であった為店の前に立っている時は分からなかったのだが、店の中に入る事によって、この店が果実を売っている店である事が分かった。果実が並んだ店の中に入る事によって、鼻先を甘ったるい匂いが掠めていった。
 その匂いを普段であれば不快に思う事は無かっただろう。普段であれば不快に思わない匂いを嗅いで不快になったのは、今の自分の気分が原因である。憤りに近いものを。否、憤りを感じながら声が聞こえて来た二階へと店の中にある階段を使い上がると、簡素な寝台の上にいる男女の姿が目に飛び込んで来た。