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こらぼでほすと ケーキ6

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その日のうちに、歌姫様とニールは、件のショッピングモールへ行き、時計を返品した。というか、そういう体にして預けてきた。翌日、歌姫様の手元に、それは戻ってきたが、渡せる算段はつかない。けれど、歌姫様は手放すつもりはない。
「・・・ラクス、僕、考えたんだけど渡せる機会がある。」
 キラは落ち込む歌姫様に、自分の考えを聞かせた。もちろん誕生日祝いとしては、今後も受け取ってもらえないだろう。けれど、一度限り、ラクスの我侭を聞かなければならない時がある。
「いつですか? キラ。」
「僕らがプラントへ戻る時。ラクスが、あちらで政治活動を始めたら、こっちにはなかなか戻れないだろ? だから、その時に自分だと思って持っていて欲しいって言えば、ママは受け取ると思うんだ。どう? 」
 まだまだ先の話にはなるが、そういう予定は組まれている。プラントが以前と同じぐらい復興して経済的にも軌道に乗ったら、その時、現プラント最高評議会議長は、大戦の責任をとって辞任することになっている。そのすぐ後釜ということにはならないが、その段階で、ラクスも最高評議会委員の地位に就くことは決まっている。それから徐々に、周囲を固めて議長に選出されることは想定済みだ。だから、プラントに活動の拠点は移すことになる。そうなると、地球には、何かの会議やセレモニー的な行事でしか下りてくることはできなくなる。もちろん、キラたちも、その段階でプラントへ移動することになるから、『吉祥富貴』は店仕舞いする予定だ。時間的には十年はかからない。刹那たちが、今の連邦を打ち破れば、そこから地球は再編成される。その後のことだ。
「・・・そうですね。ママは一緒には来てくださいませんものね。」
 ラクスとしては、一緒にプラントへ来て、自分を支えて欲しいところだが、そうはいかない。現時点でのニールは、宇宙へ移動するなど危険極まりない行為だし、すっかり寺の女房に収まっているから、坊主を棄ててくれるとは思えないからだ。
「少し時間はかかるけどね。それまでに、何か状況が変ることがあれば、その時でもいい。慌てなくても、あの時計は壊れることもないでしょ? 」
「ええ、それは大丈夫です。」
「じゃあ、そういうことにしておこう。それから、ママの誕生日は、予定通りに行かないみたいだよ? 」
 キラはアスランから聞いて、それも告げる。どうやら、本宅で過ごしてもらうことになりそうだ。
「何かありましたか? 」
「うん、寒波が来るんだって。それも台風並のやつ。だから、ドクターが明日には、ママをこっちに移動させるって言ってる。」
 ニールの体調は、天候による気圧の変化で決まる。台風並みの寒波なんてものは、確実に動けなくなるので、ドクターが早めに処置することにした。おやまあ、と、ラクスも苦笑する。
「それはいけませんね。では、こちらでお過ごしいただきます。」
「刹那とティエリアはついてくると思う。僕らは、お寺に戻ってからプレゼントを渡すことにするよ。」
 誕生日当日は、おそらくダウンしているので、大袈裟に騒いでも意味が無いし、店もイベントで忙しいから後日に、改めて祝いの席を用意することにした。どうせ、子猫たちは、親猫の誕生日が終わったら出かけてしまうから、落ち込むだろう時期を、それでカバーするということにしたのだ。
「私も、そのほうが嬉しいです。」
「ラクスのオフに合わせるから、一緒に騒ごう? 」
「ええ、喜んで。」
 三月三日、歌姫様はオーヴでの講演とミニコンサートの予定があった。だから、店のイベントにも参加できないし、親猫のお祝いにも参加できなかったのだが、そういうことなら参加できる。講演は、オーヴ本国からの依頼だったから断れなかったのだ。そこで、カガリと平和に対するパネルディスカッションをすることになっていて、カガリの予定が先に決まっていたからの事だ。そうでないなら、この講演は断っている。



 以前、アスランから聞いた花屋にティエリアは出向いていた。届けてもらうことも可能だから、そうすればいい、と、アスランに提案されたからだ。届け先は、本宅に、とも言われている。天候の加減で、親猫が本宅へ移動することになると事前に申し渡された。天気予報を確認して、ティエリアも納得した。とんでもない寒波が当日にやってくるとなれば、親猫は起きられないからだ。
「普通の低気圧ぐらいなら寺で休んでてもらえばいいんだが、ちょっと強烈な低気圧だから、大事を取る。そのつもりでいてくれ。」
 ティエリアも台風並みと言われれば納得だ。漢方薬治療で、かなり持ち直しているが、台風クラスになると、親猫は動けないどころか頭痛が酷くて、寝返りばかりうっているという事態になる。

・・・・できれば、他のものも贈りたいんだが・・・あれでは、とてもではないが受け取ってもらえないんだろうな・・・・・


 他にも何かと考えていたのだが、歌姫様と親猫の壮絶な言い争いに、紫子猫も退いた。あんなふうに叱られたら、凹むどころではない。これから、しばらくは顔も見られないのだから、そんな怒鳴り声を最後に聞きたくは無い。そうなると当初の予定通り花とカードということにするしかない。
「すまないが、大きな花束を三つ作ってもらいたい。」
 花屋で注文を出す。以前はバラの花束を用意したが、今回は違うものにしようと思っていた。どうせなら、部屋中に、いい香りのするものがいい。寝込んでいる時なら、そういう心が癒されるものが必要だ。以前の時も、親猫は喜んでいたから、以前のより大きなものを用意する。
「どんな用途のものでしょうか? 」
「病人の気分を和らげるものを。部屋は、この店ぐらいある。」
「季節のものがよろしいですか? 」
「ああ、そうしてくれ。」
 では、と、店員はティエリアの要望に叶うようなものを選んでくれた。そして色合いはティエリアが希望を告げて、それに見合う組み合わせにしてもらった。届けてもらう先のメモを渡して代金を支払う。こんな感じになります、と、おおよその花や枝を組み合わせたものを見せてもらって満足はした。ひとつはピンク色の花がついた枝が主になっていて、ひとつは、オレンジ色、残りは薄い紫を基調としているものにしてもらった。

・・・・来年は、おまえに荷物持ちをさせてやるからな・・・・

 オレンジの花を目にして、内心で呟く。来年は、きっと傍に、バカがいる。ただし、花束を贈れる時間があるかどうかはわからない。たぶん、その次の年か、その次ぐらいには、ふたりで探すことかできるだろう。その時には、何か他のものも用意しようと思う。生きていればできることだ。きっと生き残り、世界の紛争を鎮めて、親猫の許へ帰る。叶わないかもしれないが、それぐらいの夢は紫子猫も見ることができる。




 寺では、寺の女房がせっせと立ち働いている。台所の荷物置き場と化している食卓の椅子に座り込んで、亭主は、それを観察している。誰もいないので、のんびりとしたものだ。
「おい、おでんは大根を多めにいれろ。」
「はいはい、わかってます。・・・なんか食べたいものはありますか? 」
「ハンペンは焼くから残しとけ。」
「しょうがは冷凍庫のここにありますから。これを割ってください。」
作品名:こらぼでほすと ケーキ6 作家名:篠義