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こらぼでほすと ケーキ7

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刹那は、整備の手伝いを終えて本宅へ戻って来た。こちらに、親猫が居ると言われているので、いつもの部屋に赴いた。そちらにはティエリアもいて、各人勝手なことをしている。ティエリアは携帯端末で何かを調べているし、ニールは雑誌を読んでいた。いや、黒子猫は親猫に近寄って、読んでいるフリだと見抜いた。親猫の纏う空気が、どんよりしていて、どこかしら辛そうだ。
「おかえり、低気圧が大きいから、こっちに避難したんだ。」
「・・・・どこか苦しいのか? ニール。」
「ん? まだ、大したことはないぞ。それより、次の目的地の選定をするんなら、ここのマザーで情報を拾えるんだが、どうする? 」
 いつも通りに微笑みかけている親猫に、黒子猫は、眉間に皺を寄せる。無理している空気は解る。相変わらず、自分の親猫は平気で嘘をつく。
「ティエリア、ドクターを呼べ。ニールはダウン寸前だ。」
 そう言われて、紫子猫は、はっとして顔を上げる。紫子猫には、いつも通りなのだが、黒子猫が言うなら、どこか具合は悪いのだろう。こういう部分は、紫子猫にはわからない。内線でドクターを即座に呼び出して、紫子猫もソファに座っている親猫に近寄る。首筋に手を当てるが、熱はない。
「だから、まだ大丈夫だって。」
「刹那、どこが悪いんだ? 」
 親猫の取り成す言葉はスルーして、紫子猫は黒子猫に尋ねる。親猫はいつも通りに微笑んでいて、どこといって変化は見当たらない。
「どこかはわからないが、辛そうだ。無理しているのは解る。・・・ニール、あんたが俺のことを理解しているように、俺にもあんたのことは解るんだ。無理しなくていい。何度、嘘をつくな、と、俺に言わせるんだ?」
 フシャアーと威嚇するように怒鳴って黒子猫は親猫を睨む。不調ぐらい素直に吐け、と、さらに怒鳴ったら苦笑された。
「いや、ちょっと頭が重いなあーってぐらいなんだ。大したことは・・・」
「重いんじゃなくて痛いの間違いだろ? ティエリア、頭痛が酷いらしい。」
 となりにいる紫子猫に告げて、親猫の手から雑誌を取上げる。読んでいるわけではないのは目の動きで判明している。何度も騙されて黒子猫も学習した。大袈裟に言えとは言わないが、ちゃんと現状ぐらい告げてくれ、とは言いたい。
 そこへドクターがやってきた。ちゃんと看護士が車椅子も運んで来た。ドクターのほうも、そろそろまずいだろうと思っていたらしい。
「ニールくん、そろそろ医療ポッドに入ろうか? 今のうちに避難したほうが後が楽だ。」
「そうですね。刹那、ちゃんと手伝いには行けよ? ティエリア、気をつけて。」
 ぽふぽふと子猫たちの頭を軽く叩くと、親猫は立ち上がる。ぐらりと揺れるので、看護士が、そのまま車椅子に座らせる。もう少し挨拶らしいことは言いたいのだが、頭痛が酷くて言葉にならなかった。こんなふうに別れるのは寂しいな、と、思っていたら、子猫たちがついてきた。
「ニール、あなたがポッドから出てくるまでは滞在する。」
「俺も、あんたが目を覚ますまでは出かけない。」
「え? そうなのか? 」
 当たり前だろう、と、子猫たちは憤慨する。こんな状態の親猫を放置して行くなんて、とてもではないが気分的に無理だ。しばらくは逢えないのだから、ちゃんと挨拶して行きたい。
「二日ぐらいで出て来られるはずだ、ニールくん。それぐらい待っててもらえばいい。」
 予定では、この低気圧が通過する二日後には気圧も安定するから、ポッドから出す予定だ。ちょうど、ひな祭りの日になる。
 子猫たちの前で、処置されて親猫はポッドに収容された。この中なら、気圧変化で崩れるニールの体調を常時、監視して治療してくれるので安全だ。それに、眠っていることになるから、当人も辛いことはない。



 医療ポッドが閉じられると、子猫たちは、しばらく、それを眺めていた。それから、ぽっかりと空いた空白の時間について考える。二日間の時間、ぼんやりと過ごしている場合ではない。
「刹那、次の目的地は選定したのか? 」
「いや、まだだ。」
「では、データを集めて選定をやろう。」
「それは、俺がするべきことだ。おまえはおまえの仕事をしろ。」
「だが、きみは日中はラボで整備の手伝いがある。その時間に、俺がデータ収集をしておけば効率的ではないか? 」
 親猫が命じた通り、刹那はラボでの整備の手伝いをしなければならない。フリーダムの整備を手伝いながら、その機能やシステムを学んでいる。万が一、出先でフリーダムに不具合が生じた場合、自力で特区まで戻って来るためには多少の整備もできなくてはならないからだ。戻る度に、それらを整備責任者のマードックから教えられている。それにフリーダムを無償で借りているのだから、その分は働いて少しでも返しておくべきだと親猫にも命じられている。だから、次の目的地を選ぶのは、その空き時間ということになるから、ティエリアの提案は有り難い。
「だが、おまえの利益にはならないぞ? 」
「そうでもない。きみの行き先のデータを調べるのは、俺にとっても有効だ。少しでも地球のデータは掌握しておきたいからな。」
「なるほど、それなら北米のデータを収集して欲しい。ユニオン本国と、その周辺国が未到達だ。」
 南米、北極、南極、欧州、アフリカ大陸、人革連本国と周辺国は回ってきた。細かいところは行けていないが、大まかには把握したつもりだ。最後に残っているのが、おそらく最大の歪みを生じさせているだろうユニオン本国だった。アローズの本拠地でもあり、ここだけは近付くにも慎重にならざるを得ない。一度、歌姫の護衛ということで生身で潜入はしているが、北米大陸全土は廻っていなかったのだ。
「フリーダムで行けるのか? 」
「わからない。生身で基地には侵入したが、それだけだ。だから、データが欲しい。」
 もちろん、ティエリアも、そこが一番の難関だろうとは思う。レーダーやら哨戒機の数も生半可ではないと予想できるからだ。
「そういうことなら、キラにラボの設備を使わせてくれるように頼んでみるか。たぶん、こちらにはデータが収集されているはずだ。」
 『吉祥富貴』のマザーは、ヴェーダより劣るが、それでも容量は半端なものではない。そちらに続々と蓄積されているだろうデータを使わせてもらえば
侵入経路や防御の手薄な場所もわかるはずだ。組織はヴェーダの一部しか掌握していないから、データを検索するにも制限がある。『吉祥富貴』のマザーには制限はないはずだ。
「使わせてくれるか疑問だな。アレルヤのことがあるから、俺もニールもラボのマザーにはアクセス制限がかけられている。」
「それは俺も同様だ。もし使わせてくれないら、キラにデータだけ抽出してもらえばいい。そこからは俺が解析して考える。」
「了解した。キラは店にいるはずだ。今から行こう。」
 膳は急げとばかりに刹那は医療ポッドに背を向ける。ずっと見ていたって親猫は回復するわけではない。とりあえず、やることをやってから親猫の傍に居座ろうと歩き出す。ティエリアのほうも、そっと医療ポッドを撫でて、踵を返す。



作品名:こらぼでほすと ケーキ7 作家名:篠義