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愛を騙る

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「僕が陽毬になるから、」

滅茶苦茶にしていいよ。
堪え切れない欲望も、届かない想いも、陽毬の代わりに全部受け止めるから。

何時の間にか首に腕を回していた晶馬が、瞳を閉じて唇を俺のそれにぶつけた。
不慣れで、不器用で、苦いキス。初めての感触に、俺は酔ってしまいそうになる。
いっその事、もう溺れてしまえばいいのだろうか。もう、全てが分からない。
俺は理性を繋ぎ止めるように瞳を開けたまま、ぼんやりと晶馬の震える睫毛を見詰めていた。

必死に取り繕う晶馬の唇が滑稽に思えて、俺は悲しくなった。
今の晶馬はまるで自分の映し鏡のようだったから。
愛する人を繋ぎとめる術を知らなくて、誤った選択しか出来ない暗愚な生き物。
だとするならば、俺は応える事で晶馬を繋ぎとめる事が出来るのだろうか。

ゆっくりと瞼を下ろして、最後の砦を失う。もう後には引けない。
遠慮がちに跨る身体に手を添えて強引に引き寄せる。
そうする事で、中途半端に垂れた白い布が縺れて解けていく。
線の細い身体は、目を瞑れば女なのではないかと錯覚させられる程で。
本当に陽毬をこの手に抱いている様な感覚に、自分は心底最低な人間だと思った。

堰を切った様に晶馬の、柔らかいとは言い難い、それでいて心地良い唇を堪能する。
苦しそうに合間に零れる甘い吐息に脳が侵される。

「晶、馬」

目を見て、名を呼ぶ。
晶馬は瞳を丸くして、それから嬉しそうに口元を緩めた。

触れるだけの、拙い口付。
そして、そのまま晶馬をまるで壊れ物を扱う様に押し遣る。

「冠葉、僕は冠葉の為に、生きたい」

その言葉を合図に、晶馬に齧り付く。
震える身体は、恐怖からか、それとも狂喜からか、晶馬の奥底までは到底分かりっこなかった。


(陽毬、ひまり、陽毬、)

愛してる、陽毬。
晶馬の唇に愛を載せた分だけ、陽毬の名を呼ぶ。
これが己を騙す事が出来る最後の方法だった。
作品名:愛を騙る 作家名:arit