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こらぼでほすと ケーキ8

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二日三日の店でのイベントは盛況だった。三日は朝から降雪していたが、キャンセルは一切なく、ちゃんとお抱え運転手による送り迎えをされて、お客様は安全に遊んでいかれた。子猫たちのウエルカムドリンク配達も、かなり受けがよくて、かわいい、かわいいと評判だった。来年は無理だよなあーと、紅は内心で、それを呟きつつ見守っていた。最近、紅にも固定客がついたから、こちらも忙しい。バタバタと重い衣装で、お客様の許へ走ることはなっていた。

 ラボでの情報探索も終わり、ティエリアとキラでユニオン全土の情報は整理された。これを元にしてユニオンへの上陸を刹那が打ち合わせる。
「北米北部は手薄だから、そちらから侵入が安全だね。夜間に低地移動をするなら隠蔽皮膜で発見もされないから、そこいらは考慮してね? 刹那。」
「こちらは、北米にある基地とレーダーサイトの情報だ。フリーダムにデータを入れて、経路は計算できるようにしてある。」
 さすが、キラとティエリアにかかれば、二日もあれば完璧な情報が用意された。これで、ユニオンへの侵入はできる。お客様が少なくなった時間に、ようやく、事務室で刹那もデータを受け取った。そろそろ深夜枠の時間だ。これ以降、来訪されるお客様はないから、子猫たちは衣装を脱いだ。キラは最後のお客様の送り出しまでは、そのままだから衣装のままで打ち合わせをしている。
「刹那、いつ出るの? 」
「データを俺が確認して行き先の細かな選定が出来たら出る。」
 まあ、最初の侵入経路は確定しているから、そこに到達するまでにデータの確認をすればいいから、今夜にでも出かけられる算段だが、黒子猫は、二日ばかりは親猫のところに居るつもりだ。ポッドから出たら、親猫に顔を見せてプレゼントを渡すつもりだった。
「ティエリアは? 」
「俺は、明日の深夜便で軌道エレベーターに移動する。」
 対して、ティエリアのほうは時間がなくなった。明日、一日だけ親猫と顔を合わせて、そのまま組織へ戻る。エクシアの太陽炉の取り外しとかいう用件があれば滞在は延ばせるが、何も持ち帰らないとなると、期日は延ばせない。
「じゃあ、今夜から明日の深夜までは、僕らはママには近寄らない。それでいい? 」
「ああ、それで頼む。」
 『吉祥富貴』の年少組が、いつもなら親猫の誕生日に、いろいろとお祝いをするのだが、今年は時期を遅らせるということになっている。なんせ、そのママが医療ポッドにいるからだ。今夜、それは開く予定なのだが、まだ、ドクターからは連絡がない。すっかりと降雪は終わって、夜空には星が瞬いているのに、まだ、連絡がないので、少し気にしていた。
「おい、子猫ども、ママニャン、ポッドから出てきたぞ。迎えが来るから、おまえらは、それで本宅へ移動しろ。」
 ハイネが、事務室に、そう告げに来た。ハイネの携帯端末のほうへ連絡が入ったらしい。そそくさと子猫たちは移動の準備を始める。
「ティエリア、花はニールの部屋に配達されているぞ。・・・キラ、おひいさまが、ひとりお帰りだ。」
 アスランが、その情報は知らせてくれた。まだお客様たちがいらっしゃるから、キラも、「バイバイ。」 と、店表へ急ぐ。ナンバーワンホストが最後に送ることになっているので、アスランは呼び出しに来たらしい。




 街はすっかりと雪景色で、道路も、そろそろ凍結しそうだったが、本宅からやってきたクルマは、そこいらも考えられているのか滑ることもなく、スムーズに走る。結局、ティエリアはアイルランドのお菓子と花とカードを用意しただけだ。刹那の手伝いをしていたから、外出する暇もなかった。だが、刹那だって外出していたとは思えないのに、用意は完了していると言った。一体、何を用意したんだろうと思っていた。
 本宅へクルマが辿り着くと、ドクターが待ち構えていて、現在の状況の説明をされた。ニールの部屋は、いつもの地下の隔離病室で、そこに子猫たちが眠る用のベッドも運び込んであるとのことだ。
「まだ、起きてすぐだから、騒がないで一緒に寝なさい。何かあるなら、明日に。」
 ドクターからの注意事項に頷いて、二匹はてってかと地下へ走る。生体認証のかかっているエレベーターに飛び乗る。ティエリアのプレゼントは、すでに、その部屋に置いてある。だが、刹那は何も荷物は置かなかったはずだ。
「刹那、きみのプレゼントは? 」
「ここにある。とりあえず、渡して祝いの言葉ぐらいは送ろう。それでいいか? 」
「ああ、それでいい。」
 ここに、と、刹那が叩いたのはパンツのポケットだ。小さなものであるらしい。それならいいんだ、と、ティエリアも、そのことはスルーすることにした。どちらも選んだものがあるなら、それで十分だ。すでに時刻は、真夜中で、日付変更線を、あと少しで越える時間になっている。


 部屋に入ったら、親猫はのんびりとお茶を飲んでいた。ふたりに目を留めて、おかえり、と、手を挙げる。
「ただいまです、ニール。」
「ただいま。」
「おかえり、店のほうを手伝ってたんだって? お疲れさん。ベッドは運んでくれてるから、風呂入って寝られる。腹は減ってないのか? 」
 いつものように親猫は、そう尋ねてくれる。やはり早めに避難したから体調は安定しているらしい。顔色も、それほど悪くはない。
「あんたは? 」
「俺は、さっき食った。これが食後のお茶だ。おまえさんたちも呑むか? 」
 ずずっと啜っているのはミルクティーのようだ。それならいいだろうと、ティエリアは部屋の片隅に置いていた荷物を運んで来た。花束のほうは、すでに花瓶に活けられているので、説明だけで済む。
「ニール、誕生日おめでとう。次回までに希望するものを考えておいてください。今年はフェルトと俺とアレハレからのカード、そしてお菓子、花瓶に活けてある花が俺たちからの贈り物です。」
 お菓子とカードを差し出したら、親猫は嬉しそうに手を差し出す。カードを開いて、クスッと微笑んだ。フェルトが選んだ意匠柄のカードは可愛くて、いかにも女の子が用意したものだった。
「ありがとう、ティエリア。花はドクターから聞いたよ。なんかたくさん用意してくれたんだな? いい匂いで癒される。」
 病室に大きな花瓶が三個配置されている。ひとつずつが、各人の色で選ばれていて、香りもいいものだった。ただし、かなり大きなもので、ニールは恐縮した気分になった。ティエリアは自分の誕生日を言わないから、こちらから準備することができないからだ。今年は、たまたまニールの誕生日のプレゼントを用意するのだと息巻いていたから、ついでにティエリアのものも用意できたが、今までできていない。それが残念だと思っていた。
「よかった。次は必ず、あなたの希望するものを用意する。」
「いや、希望するものなんてない。それより、おまえさんの誕生日を吐け。」
「それは、あのバカたちが戻ったら教える。俺のはいいんだ。」
「だから、一方通行じゃ意味がねぇーって言っただろ? 速やかに吐け。」
「あなたは、俺にブーツを買ってくれましたね? それで相互通行になっているはずだ。」
作品名:こらぼでほすと ケーキ8 作家名:篠義