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ラヴ 永遠の恋人

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 いつもより幾分遅めの夕食を摂らされたアムロは、シャアに手を引かれて庭に出た。
そこには、厚手の毛布の上にアルミの補温シートが引かれ、フリース素材のクッションにひざ掛け、毛皮のコートが置かれていた。

「あのさ・・・」
「ん?」
「これ・・・何?」
「何って、鑑賞に必要なグッズだろう?」
「鑑賞??」
「そう」
「何の?」
「何のって・・・・・・・・・・。アムロ・・・知らないのか?」
「何を?」

上目遣いで見上げてくる瞳は、ある意味シャアにとっては凶悪だ。
問答無用で準備してあるシートに、本来の目的とは違う用途に使用すべく押し倒したい心境にさせるのだ。
シャアは大きく数回深呼吸をして湧き上がってきた欲情を鎮める努力をした後、アムロの質問に答えた。

「今夜は皆既月蝕なのだ。以前のものは月が昇る時にはほとんど欠けてしまっていて、最初から最後までを鑑賞出来なかったようだ。だが、今回は始まりから終わりまでを、3時間強で鑑賞できる。ただ、月が中天にかかる頃からだから寝転がって鑑賞するのが一番楽なのだ。それ故この様に準備を整えた」
「・・・あ〜〜っ、そう・・・なんだ」

滔々と語るシャアに、アムロは些か引き気味になった。

 幽霊屋敷で長々と眠りについていたシャアは、目覚めるなりあらゆる情報を最速で収集しインプットをすると、アムロの身の回りの面倒の全てを一手に担いだした。
食事に掃除・洗濯に仕事のスケジュールと割り振り。
アムロが快適に、かつ健康に過ごせるように甲斐甲斐しく働く姿に、先輩のカイ等は、「嫁に貰ってやれば?」と冷やかし半分本音半分で言ってくる程だ。
今回のような季節毎のイベントも嬉々として準備し、アムロに体験させる。時にはララァやブライト、カイに後輩の浦木などまで巻き込んで・・・。
正直、インドア派なアムロにはこの様な事に興味はない。だが、楽しそうに準備をしているシャアを見ると、制止するのも可哀相な心境になるので放置しているのが本音だ。
しかし、今回はそれが裏目に出たと言えるかもしれない。
今夜は溜撮りしていた番組を見て(ロボコンや宇宙ステーションでの実験etc.)過ごそうと考えていた。それが全てお流れだ。

“ま、いっか〜。宇宙の神秘のひとつだもんな。これも”

アムロは溜息をひとつ吐くと、シャアの手が誘導するに従ってシートへと腰を下ろした。
そして月に目をやる。

煌々と輝く月の光は、いつもより強く、目に痛い位に感じた。

「皆既月蝕の時の月は、他のときの満月より燦然と輝くそうだが、本当だな。まるでアムロのようだ」

吐息混じりに告げられて、アムロは隣に陣取ったシャアを見上げる。

「俺?」
「そう。・・・・・・白く目蓋を射るほどの光を放つ姿が、アムロの魂の色に似ている。心を鷲掴みにされるようだ」

シャアはそう言うと、アムロの身体をひょいっと抱き上げて己の足の間に挟み込み、背中を胸に預けさせた。

「ちょっ!!」
「こうすれば寒くないだろう?アムロは寒いのが苦手だから・・・。ああ、そろそろ月がかけ始める時間だな」

取らされた格好は気恥ずかしいものだが、全身がぬくもりに包まれているのは大層心地よい。
アムロはそのまま月蝕を鑑賞し続けた。
作品名:ラヴ 永遠の恋人 作家名:まお