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プロローグ -永遠の子供達-

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電源スイッチが切られ、赤色半導体レーザーが途切れた。
ディスクがシュルシュルと音を立てて回転速度を落としていく。
マザーボードの電子回路が一斉に停止する。
バッテリーバックアップされるその一瞬の世界。

「大人になれないのは、少し寂しいかな。」
と言った僕に。
「俺達は永遠の中にいるんだ。」
と恭介が言った。
これから綴られる全ては、そんな一瞬の永遠の出来事。
幾億の物語の中の、いつだったかのできごと。



突き抜けるような快晴の空、恭介が運転する白いバン。
謙吾と真人は調子にのって、車の上に移動していた。
後部座席に6人の少女たち。その笑い声はすずらんの音色。
併せ持つ儚さも忘れさせて僕の全身を包み込む。
隣の恭介は微笑みだけを浮かべて、初めて向かう景色の向こうを眺めていた。
遠くで歌が聞こえた。
おしゃべりに興じる女の子には届いていないだろう。
僕が何度も繰り返した、最後に訪れる永遠のために乗り越えてきた、10人の物語の終わりの歌。
おそらく外の2人と、恭介はそれに耳を傾けていたんだと思う。
そう思いたい気分なんだ。

「海だ!」
鈴が叫んだ。
同時に皆の視線が窓の外へ向く。
関東には到底あり得ない、白い砂浜が広がる。目が覚めるようなアクアブルーに、キラキラと陽の光が反射して眩しい。
真人の歓喜の雄叫びが聞こえたので、ボンネットの上の二人もこの景色に目を向けているだろう事が想像できた。
まったく人の気配がしない。
怖いような気もする。そんな美しさだった。

瞬間僕に予感が走った。
この世界で僕は主人公だったが、全知全能の神ではなかった。だけどこういった現象は現実世界でもあるんじゃないだろうか。
虫の知らせ。嫌な予感。

「まえっ!!!前前!!!トンネルっ!!!!!」
僕の叫び声に全員が前方を注視した。
窓の外に気をとられてるうちに迫っていたトンネルは、2.4Mと表示されてある。車高が1.3Mを超えるライトバンは地上からはさらに高さがあった。身長が180cmを超える謙吾と真人が、まさか立っているとは思えないがそれでも危険を伴う高さだ。
外は疾風と轟音だろうが、走行車も他にないので、窓の隙間から僕の声が届いたのだろう。
「ぐぎゃああああああ!!!!!」
「ぬおおおおおおおお!!!!!」
同時に謙吾と真人の叫び声がした。
この距離ではスピードを落としても間に合わないし、間に合うようにブレーキを踏めば2人を振り落としてしまう。
ブンと気圧の変わる音。その一寸前にボンという飛び退く音がした。どうにか二人はバンから飛び降りることに成功したようだった。
「ふ、ああ・・・・・、肝冷やしたよぉ〜。」
後部座席の小毬が後部の窓を振り返り、府抜けた声をあげた。
確認のために僕も身を乗り出して振り返ると、「ぬおおおおおおおお!!!」とか「どるああああああ!!!!」とか雄叫びをあげながら、二人の屈強な筋肉がバンを追いかけていた。
「なんだろう、二人に追われると逃げたくなるこの焦燥感・・・。」
僕が冗談まじりの感想をこぼすや否や、後部座席から「まったくだな。」「やはは、逃げちゃおうよ。」「お二人とも顔怖いですぅ。」と少女たちが口々。
あ、まずい。と思った瞬間には既に。
「おっ逃げるか理樹!?」
隣の恭介が面白いことを見つけた子供のように、瞳を輝かせ僕に同意を求めていた。
「ちょっと待って!僕が企てたみたいな言い方しないでよ!」
言うが早いか、恭介がアクセルを踏み込んでいた。


見渡す限り青い海。
白い砂浜に水着姿の少女たち。
葉留佳、小毬、クドによって強制的に手を繋がれた、鈴と美魚と唯湖の6人の少女たちが海に向かって一列に並ぶ。
「みんなでせーので飛び込むぞー!」
キャーーーーーーー!という甲高い奇声を上げて、初夏の海へと全員で駆け出す姿を、僕と恭介は見送っていた。途中から浜辺まで全力疾走させられ、体力を消耗しきった謙吾と真人を尻目に。

「見ろ!女子たちのあの爽やかな姿を。見てるこちらまで壮快にさせる、まさに青春の1ページのようじゃないか!」
恭介がいつもの調子で熱を込めて語り、一寸おいて自らの横に目を向けた。
「それに比べてお前らはなんだ!?暑苦しいことこの上ない!敢えて言おう!俺の半径3M以内に近寄るな!」
「敢えてという言葉が不相応だよ恭介。」
汗だくの謙吾と真人は、着ていた衣類をぐっしょりと湿らせ砂浜に仰向けと、うつ伏せに突っ伏していた。ぜぇぜぇ、はぁはぁと息を切らせ、髪を濡らしながら頭から汗を流す。おかげで全身砂にまみれて。
「もぅ。恭介がこんなになるまで走らせたんでしょ。」
僕は車に乗っていた人間として、申し訳なさもあり、二人に缶のスポーツドリンクを差し出した。隣に寄るとむあっという熱気を感じる。潰れた二人の横に缶ジュースを立てた。
「ぅああ〜〜、サンキューな、理樹。」
真人が重たい体を持ち上げながら、水滴に包まれた缶に手をのばす。
「ふふふふふふ・・・・ふはははははははは!!!!」
「謙吾が壊れた!!」
隣で突然笑い出した謙吾に、僕は反射的に叫んでいた。
「壊れてなどいないぞ理樹!むしろ正気に戻ったのだ!さあお前ら!」
さっきまで潰れていた謙吾が、バッと砂を弾きながら立ち上がった。
「遊ぶぞ!!!!!」
汗と砂を飛ばしながら謙吾が右手を振り上げた。
それは恭介が馬鹿なミッションを命じる時によくやる素振りだった。
僕の後ろで恭介がふっと笑う気配を感じた。
隣の真人がにやっと笑って立ち上がった。
「よっしゃああ!!!恭介っなんかねぇかっ!!!?」
「なんかねぇかっていきなり言われてもな。」
2人のテンションと裏腹に、恭介がしれっと答える。
「こおゆーのはおめぇの役割だろーがっ!!!俺は今猛烈に滾ってるんだあああ!!!」
「真人!!お前もかっ!!真人おおおおおっ!!」
「わっ!恭介どうしよう!!2人がものすごく暑苦しい!!」
「ぬおおおおおおおおお!!!!」
「うおおおおおおおおお!!!!」
「海!?海を見たせいでテンション上がっちゃったの!??」
「るおおおおおおおおおおお!!!!」
「恭介まで!!!?」
妙なハイテンションはいつの間にか伝染して、腹の底から勇ましく叫ぶ競技であるかの様に3人は叫び出した。それがいつの間にか「ウー!ウー!」というかけ声を上げながら、ボディクラップをして僕の周りを周り始めるものだから、ある種恐怖体験に近い。
『ガンバッテ!!ガンバッテ!!ウー!!!』
ニュージーランドのラグビー選手が踊るハカの真似をしながら、3人が僕の周りをぐるぐると移動する。
「怖い怖い怖い!!!」
自分より長身の男3人に囲まれハカを踊られるという経験は、僕の心に小さなトラウマとなった。
「馬鹿どもやめろーーーーーー!!!!!」
鈴の飛び蹴りが(主に真人に)炸裂し、妙な遊びは強制的に終息を遂げた。
「弱い者いじめは『めっ』っだ!」
久々に決め文句を言えて満足気な鈴が微笑ましかったので、僕もなんとか気持ちを戻すことができた。


日が沈んでゆく。
遊び疲れた鈴が、バンの後部座席を倒して眠っている。
隣で美魚が分厚い本を読んでいた。時々鈴が体を冷やさないように、タオルの位置を直している。