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こらぼでほすと ケーキ11

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のんびりと景色を楽しみながら食事する。騒音というものがないから、鳥の鳴き声が唯一の音だ。たっぷりと作ったはずのお重の中身は、食べ盛りのふたりが粗方を片付けた。トダカは、こっそりとウイスキーの入った小振りの水筒を持参していて、ちびちびと飲みながら、おかずを摘んでいる。
「やっぱり、このおにぎりはおいしい。」
 ぱくぱくと、色とりどりのおにぎりを頬張って、レイは楽しそうだ。こういうことが、レイにはなかった。普通の生活がなかったのだから、仕方がないが、それでもニールは切ない気分になる。
「こんなことぐらいなら、いくらでもできるからな、レイ。」
「ぐらいじゃありません。俺は、腹が破裂しても食べ続けたいです。」
「バカ、また作ればいいんだよ。」
「でも、ねーさんのおにぎりって美味いと思うぜ、俺も。うちの母親と同じぐらい美味い。」
 こちらも、ばくばくとおかずを消費中のシンも、ご機嫌でエビフライにかじりついている。
「家庭料理って外では食べられないからね。」
「そうなんだよな。ザフトに入ってからは、こういうのなかった。たまに懐かしくなるんだよ、父さん。」
「くくくく・・・私も、そう思ったから料理を始めたのさ。食べたいなら作るしかないんだ。」
「でも、トダカさん、若い頃はモテたんじゃないんですか? 今だって親衛隊がいるんだから。」
 トダカは渋い男前だ。おそらく若い頃は、いろんなアプローチがあっただろうと想像できる。
「それがねぇ、娘さん。若い頃は仕事が楽しくて、そういうのは無視してたんだ。ウヅミ様も仕事熱心な方だったし、期待にも応えたかった。・・・・で、気付いたら、艦隊指令なんて拝命して一年の半分以上は海の上、宇宙の上さ。」
 もちろん遊んではいたんだけどねーと、トダカは苦笑する。仕事一筋すぎて婚期も婚活もなかったのだそうだ。おやまあ、と、ニールは大笑いだ。
「だから、シンを保護した時は、どうしたもんかと悩んだよ。私は家庭的なことは何一つわからないし、シンのために何をしてやればいいのかも皆目だった。」
「俺も、ショックでおかしかったもんな。」
 両親と妹を一度に亡くしたシンは、そのショックでしばらくは、ぼんやりして時々泣くを繰り返していた。そんな状態だから、トダカも困った。保護したものの、自分たちの犠牲になったシンを、どうにか立ち直らせてやりたった。
「どちらにせよ、オーヴ本国を戦場にした段階で、被害は考えていたんだがね。」
 その後、オーヴ本国が連邦から攻撃されて、マスドライバーが破壊されウヅミが、その責任から殉死した。キラたちを宇宙へ逃がした段階で、連邦はオーヴへの攻撃は諦めたが、その後が大変だった。シンは、しばらく医療施設に預けたのも、そのためだ。本当のところ、トダカはウヅミと共に死ぬつもりだったのだが、それは許されなくて事後処理に働くことになった。残されてしまったら、やることは山ほどある。部下を叱咤して、残ったウヅミーズラブのメンバーと力を合わせて働いた。それしかできることはなかった。時々、シンの様子を見舞って、落ち着いたところで、どうしたいのか、尋ねた。
「まさか、ザフトへ行くと言うとは思わなかったけど。」
「まあなあ、あの時、復讐のことしか頭になかったんだよな。」
 ザフトに入りたい、と、シンは落ち着いてから、そう言い出した。少しでも前を向いて進めるなら、と、トダカは、その手続きをした。その時に、保護者が不在では何かと不自由だろうと、養子縁組はしたのだ。トダカにしてみれば、被害を蒙ったシンに少しでも何かあれば、と、思ったらしい。
 二度目の大戦の後、シンが地球に下りてトダカの許へ挨拶に出向いたら、まだ怪我で入院していた。生きているのも不思議なほどの怪我だった。ジェットストリームなメンバーに救助されたから生きているが、普通は確実に死んでいただろう状態だ。
 シンは、まだ起きられもしないトダカに、「無事でよかった。」 と、喜ばれて嬉しくて泣いた。自分には、もう自分のことを心配してくれる相手なんてものはいないと思っていたからだ。ザフトは辞職して、トダカの看病に勤しんでいたところへ死んだと思っていたレイが尋ねてきてくれた。ようやく、それで次のことに思い至った。キラが、『吉祥富貴』を立ち上げたのも、その頃だ。もし、よければ手伝いをしてくれないか、と、誘われて動き出した。そんな風に繋がって、今は家族だ。そう思うと、いろんなことがあったな、と、苦笑する。
「父さんが生きててくれてよかったって思ってるよ。」
「私も、そうだよ。まさか息子ができるとは思わなかった。レイもだよ? 」
「よく言うよ。父さん、絶対に拾うクセがあるんだ。レイとねーさんだって、ちゃっかり家族に加えてるしさ。」
「だって、うちの娘さん、心配なんだよ。目を離すといろいろとやってくれるからね。それなら、家族にしておくのが安全だ。」
「そうだよな、ねーさん、独りにすると、いろいろとやるもんな。」
「なんもしてねぇーよっっ。」
「嘘はいけないな? 娘さん。きみ、今まで、どれだけやらかしてるか説明しようか? 」
 シンたちは知らないこともあるが、トダカは、ここに居ついてからのニールの行状は全て把握している。それを知っているから、娘さんと呼んで身内にしてしまったのだ。
「トダカさん、シン、俺のママを苛めないでください。ママは無自覚なんです。」
 で、知ってか知らずか、レイがトドメを刺す。うっとニールは言葉に詰まってレイを抱き締める。おまえが一番ひどいっっ、と、嘆きつつ、ぎゅうぎゅうとレイを軽く締め上げる。また、レイは、それが嬉しいので満開の笑顔だ。
「大丈夫ですよ、ママ。俺が、ちゃんと見ていますから。フェルトとティエリアから頼まれてます。」
「はあ? 」
「ふたりとも、ママの健康管理はきちんとしてくれ、と、俺たちに頼みました。みんなで頑張ります。」
「俺も頼まれたぜ? ねーさん。しばらく、プラントに行くけど帰ったら監視強化するからな。覚悟しとけ。」
 普段は同居している悟空がメインで管理するのだが、合間合間に、シンとレイも顔を出して世話してもらうつもりだ。子猫が不在になれば、どうしたって、ニールは落ち込む。そこいらは年少組で誤魔化してもらう方向だ。二の句のつげないニールに、トダカは爆笑している。
「おっおまえらな。」
「まあまあ、娘さん、暇にするよりは、そのほうがいい。」
 離れても思い遣れる相手があるということが、心を穏やかにする。どこかで按じてくれている相手があると思えば、生きていようと努力もする。そういう繋がりができたのは、ここにいる人間には何よりのことだ。
「食べたら迷路に行く? 」
「そうだな、腹ごなしには、あれがいいか。ママ、俺と組みましょう。すぐに脱出できます。シンは迷うんです。」
「シン、それなら私が組んでやろう。伊達に艦隊指令はしていなからね。」
「俺だって、レーダーがあれば迷わないんだよ。」
「使うな。意味がない。」