こらぼでほすと ケーキ11
こそこそとハイネも動いているが、大掛かりに物資の移動をさせるのは今回が初めてのことだ。物資をあちこちに保留しておくのも、組織が使えるようにするためもあるから、連邦側に嗅ぎつけられないために少数で動くことにした。それぐらい、ザフトレッドのふたりなら、どうにかなると虎は算段をしている。
「ザフトレッドの実力を試すには好都合だ。あいつらも、やる気だし。」
「わかりました。追悼イベントが終わったら、ひとまず、私も休みますので、イザークとディアッカはお返しいたしますわ。そこから、五月までは動きませんので。」
政治色の濃いイベントや会議への出席は無くした。コンサートや福祉活動ぐらいなら、歌姫様のスケジュールも過密ではない。それに、シンとレイが抜けた穴を埋めるに、イザークたちを護衛から外す。シンとレイは梅雨時分まで宇宙に上がりっぱなしになるから、そのためだ。
「いいのか? オーナー。」
「特区内の移動でしたら問題はありません。もし、護衛が不安な場合は、私のスタッフで対応いたします。」
歌姫様個人のスタッフもいる。世界を動き回るスケジュールだと、プラント高官の息子たちの護衛は必要だったが、特区内なら問題はない。ここにいるエージェントの人員や配置、情報はキラに筒抜けだからだ。秋から歌姫様はプラントへ行く。あちらでもコンサートや福祉活動がメインだが、プラント市民に歌姫様を印象付けるためでもある。少しずつ、プラントでの露出も考えているし、その移動でエターナルを地上から宇宙へ移動させて組織の動きを援護するつもりもある。アローズの動きは酷くなってきた。秋には組織は再始動するだろう。だからこその歌姫様の移動だ。
「どうせ、キラはSフリーダムで行ったり来たりするつもりだろう。店は、さすがに休業せざるをおえないだろう。」
「八戒さんたちがやるつもりでしたら、そちらはお任せいたしますわ。たぶん、お客様も少ないと思いますし。」
「まあ、八戒の施術目当ての客は、キラがいなくても問題はないだろう。」
「刹那が宇宙へ上がりましたら、最終打ち合わせをさせていただきます。夏ぐらいですかしら。」
「そうなるだろう。これが最後とは思えないが、まあ、無事に乗り越したいとは思っている。オーナーも気をつけてくれ。」
地球が落ち着いたら、今度はプラントだ。まだ途中。組織の再始動が終わってから先がある。こんなところで歌姫様は失えない。
「承知しております。虎さんは、宴会には参加されませんの? 」
「途中参加させてもらう。どうも、俺は、ああいうイベントは苦手でな。」
年少組が企画するもので、虎はニール誕生日イベントは苦手だ。見ているのが切なくなるのだ。だから、そのイベント本体が終わってから、宴会に参加の方向だ。
「アイシャさんは? 」
「あいつは最初から参加する。今は、ドックで整備の手伝いをしているから時間になったら連絡してやってくれ。ダコスタ、おまえも行って来い。」
レーダーに何か反応があれば、担当各人の携帯端末が鳴り響く。だから、留守にしても問題はないのだが、ぎりぎりまで虎は、ここに居座るつもりだ。こんな時に限って、何かあるのが世の習いだという理由で。
作品名:こらぼでほすと ケーキ11 作家名:篠義