past 前編
パン―――
エドワードは瞬時に手を合わせ、地面に両手をつける。
すると地面は二人を炎からギリギリのところで守った。
襲い掛かる炎の外では複数の足音が遠ざかるのが聞こえてくる。
どうやらこの隙に裏に回りこんで来る気らしい。
「エルリック、逃げるのだ。」
「でも、少佐が!!」
「ここへ行け。」
「少佐っ!!!!!」
「必ず生きるのだ。」
「狙われてるのは俺なんだっ!!!!!」
「だから逃げるのだっ!!!!」
「・・・っ・・!!」
アームストロングはおもいっきり地面を殴りつける。
大きな穴が開き、アームストロングはエドワードをその穴へ放り込んだ。
「・・・っ・・少佐ぁぁぁぁ!!!!!」
その穴は地下道へと繋がっていた。
そしてアームストロングはすぐにその穴を塞ぐ。
エドワードの無事を祈り、
アームストロングは立ち上がった。
あのような錬金法は見たことがない。
やはりあの話は真実・・・
無事に生き延びるのだエドワード・エルリック―――
地下へと落ちたエドワードは痛む足を引きずりながら歩き続けた。
アームストロングの行動を無駄にしないために、教えられた場所に向かった。
アームストロングに教えられた場所は、裏通りにある小さな美容室だった。
周りを警戒しながらその場所に辿りつき、ドアを開ける。
いらっしゃいませと声がかかったが、エドワードの意識は朦朧としていた。
血を流しすぎたのだ。
「・・・しょ・・う佐が・・・・たす・け・・・て―――
「・・・・っ!!!!??」
エドワードの意識は完全に途絶えた。
あの場に残ったアームストロングはロイと対峙していた。
エドワードの出血はかなりのものだった。
おそらくは歩いてる道に点々と血が滴り落ちているだろう。
アームストロングがこの場を離れてしまえば簡単に追いつかれてしまう。
エドワードを守るため、アームストロングは攻撃をしかけられるもその場を決して動かなかった。
「一体どういうつもりだアームストロング少佐。」
「彼はやっておりません。」
「何を馬鹿なことを言ってる。」
「話を聞いてからでも――
「だからお前は甘いんだ。」
「・・・・・・・。」
「良い機会だ。辞めてしまえ。」
「・・・なっ・・!!」
「大佐、それはあまりに・・・・」
「・・彼は、存知てましたぞ、マスタング大佐が心優しい人であるということを。」
「私と奴は面識など無い。」
「あるのです。我輩も皆、あるのですよ。
大佐はこの国を救おうとしている。
中尉も厳しそうに見えるけどとっても優しい。
少尉は兄貴みたいで、ブレダ少尉、ファルマン准尉、フュリー曹長、ブラックハヤテ号、
大佐の仲間は皆、本当に優しい人達ばかりなんだ。・・・・そう言っておりました。
面識も無く、何の関係も無い者が言える言葉でしょうか。」
「・・・そんなもの、誰でも言える口からデマカセだ。」
「軍人に対して『優しい』などと言うでしょうか。」
「・・・・・もういい。今日は退く。」
「感謝いたします。」
「処分は追って通達する。覚悟しておけ。」
ロイは部下達に指示を出し、その場を後にする。
アームストロングはその姿が見えなくなるまで敬礼をし続けた。
リザは何か物言いたげな顔をしていたが、ロイの後ろを着いていった。