past 前編
第四章
ピンポーン―――
そしてまたこの家のチャイムが鳴った。
とても嫌な予感がした。
もう夜も遅い、グレイシアは内鍵を外さずにドアを少し開ける。
「こんばんはグレイシア、私だ。」
「・・・ロ・・イさんっ」
「すまないが、開けてもらえないか。」
「えっえぇ、待って、」
そして一度ドアを閉める。
エドワードとアームストロングに目で合図を送る。
今すぐに逃げるようにと。
アームストロングとエドワードにもロイの声はしっかりと聞こえたので、急いで逃げる準備をした。
「エルリック、この場はなんとかしよう。おぬしは裏から逃げるのだ。」
「でもっ・・」
「なに、心配は無用だ。」
「・・・・分かった。」
エドワードが裏口へ向かったのを確認したグレイシアは内鍵を外す。
ガチャリと音がした途端、
ドアが思い切り開かれる。
「キャッ・・・!!!」
驚いたグレイシアが小さい悲鳴をあげる。
だが、ロイはそんなことお構いなしという様子だった。
「・・・・アームストロング少佐、ここで何をしている。」
「・・少々乱暴が過ぎるのではありませんか。」
「何をしていると聞いているのだ。」
「お話をしていただけでございます。」
なんとか誤魔化せないものか、と考えていたアームストングだったが、
ロイはここに誰が居たのか知っている様子だった。
「三つ・・・コップが用意されてるみたいだが、あと一人は何処へ行った。」
「「・・・・っ!!」」
「エドワード・エルリックは何処へ行ったんだっっっ!!!!!!!!!」
「・・・・・・・ロイさん、」
パーンッ―――
ロイが怒鳴り声をあげた瞬間、裏口の方から銃声が上がった。
「フッかかったか。」
ロイはその音を聞き、すぐに踵を返す。
「まさかエドワード君っっ・・・!!」
「我輩が行きます!!」
アームストロングは裏口へ向かい銃声のした方へと向かった。
そして辿り着いた場所ではエドワードが肩と足から血を流して片膝をついていた。
その視線の先にはリザが居た。
そしてリザの持つ拳銃は真っ直ぐにエドワードを見据えていた。
アームストロングは思い切り腕を振り上げ地面にその拳を叩きつける。
すると地面は大きく盛り上がっていきリザとエドワードとの間に大きな壁を作った。
「少佐っ!!!?」
「無事か、」
「肩は傷が開いただけ、でも足をやられちまって・・・ハハッさすが中尉だよな。」
「・・・・・うむ。」
アームストロングがエドワードの無事を確認すると、壁の向こうから声がかかった。
「アームストロング少佐、一体どういうおつもりですか。」
「話を聞いてくれぬか!!」
「・・少――
リザの問いかけにアームストロングが返事をする。
リザもその返事に答えようとするが、それはロイによって遮られた。
「・・・・ホークアイ中尉、下がっていろ。」
ロイの声が聞こえた。
するとその瞬間、パチンという音が響き渡った。
そして大きな壁を乗り越えて炎が二人に目掛けて襲い掛かってきた。
「・・・なんと・っ!!!!!?」