【FF7】seed of heart【クラエア】
泣いてなんかいないさ。
「戦いが終わるまで、ずっと息つけなかったもんねぇ。
唱えてくれたホーリーを解き放つのに必死で、メテオを防ぐのに必死で、そしてセフィロスを倒す事に必死で。
エアリスのために、愛した星を守るために。
口では、頭では分かってても、本当は認めたくないんでしょう?
クラウド、わたしも同じだよ」
「・・・っ」
「でも、乗り越えなきゃ。
今さらだけど、わたしだって死んだって信じたくなかった。
今でも時々、ひょっとしたら・・・って思う事あるもん。
ううん、エアリスは死んでなんかいない。
わたし達の心の中に、こんなに残ってる。
これって、エアリスが、いるって事だよね?
心の中で、生き続けてる、わたし達と一緒にいるって事だよね?」
ティファの言葉は、まるで魔法のようだった。
凍てついた心が、春風によって溶かされていく。
そんな感じだった。
「・・・俺・・・俺・・・本当にエアリスが好きで・・・」
「うん・・・」
「エアリスの死に顔が穏やかだった理由は理解できても・・・
気持ちに整理をつけることが出来なくて・・・」
「分かってる、分かってるよ」
俺の顔が濡れたのは何年ぶりだろう。
人肌を暖かいと感じるのは、何年ぶりだろう。
「ティファ・・・ごめんな・・・」
「ばか・・・なんで謝るのよ・・・」
なんだか、胸のつかえがすうっと取れた気がした。
―――ねぇクラウド
?!
慌てて当たりを見まわす。
突然の行動にびっくりしたのか、ティファの腕が肩から離れた。
―――はじめはね、そっくりだったから気になった
―――全然別人なんだけど、そっくり。歩きかた、手の動かし方・・・
これは・・・観覧車でのエアリスの言葉・・・?
―――あなたの中に、彼を見ていた・・・・・・
エアリス! エアリス!!!
心の中で問いかける。
―――でも、ちがうの。今は違う・・・・・・
その瞬間。
俺の中に、彼女の、エアリスの気持ちが入ってくるのを感じた。
気のせいなんかじゃない。本当だ。
バカだな・・・俺・・・
エアリスは、とっくの昔に気持ちを伝えてくれていたのに・・・
どうして今になって分かるんだろう。
「クラウド・・・どうしたの?」
「今、エアリスの声が聞こえたんだ」
「えっ?!」
勢い良く、俺は立ちあがった。
ティファの腕も引っ張り、立たせてやる。
俺達が忘れない限り、エアリスはずっと生きつづける。
忘れるもんか。絶対忘れない。
こんな単純の事に、俺は今気がついた。
エアリスの死から三年・・・
少し遅いかもしれないが、遅すぎたなんて事は無い。きっと無い。
「待ってよぉ~!」
子供の声がして、俺達はいっせいに振り向いた。
見ると、ちょうど二人の子供が教会に走りこんでくる所だった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「あれぇ? お兄ちゃんとお姉ちゃんだあれ?」
二人は、手にスコップと種をいくつか持っていた。
「今からここにお花植えるんだよ!」
「ほら、今も結構たくさんあるでしょ? これ、全部あたし達が植えたんだよ!」
「お花でもっといっぱいにするんだぁ!」
「いつもは、ピンクのお姉ちゃんもいたりするんだけど・・・今日はいないんだね」
その瞬間。
俺とティファは顔を見合わせた。
そしてどちらからともなく、俺達は笑い出した。
過去三年間、笑えなかった分思いきり笑った。
「なんで笑ってるのぉ?」
二人があどけない顔で、俺達を見上げる。
「嬉しいんだ。嬉しくてたまらないんだ」
この教会にも、エアリスは生きていた。
きっと他にも、探せばいくらでも彼女の生きていた証はあるんだろう。
いや、今も生きていると言った方がいいかもしれないな?
「行こうか、ティファ。きっと皆待ちくたびれているぜ」
「だね!!!」
俺は、ゆっくりと大地を踏み締めた。
隣を見る。
ティファがいる。
もちろん、エアリスは俺の中でかけがえの無い存在だ。
だけどきっと、この先長い人生を歩くとき、隣にはティファがいるんだろう。
そうなって欲しいと、素直に思える。
もう、後ろめたい気持ちは無い。
教会を出て、一度だけ俺はふりかえった。
子供達の笑い声が聞こえてくる。
また来年来る時には、もっと花でいっぱいになっているだろう。
今度は俺も、花でも植えてみようか・・・
そう考えるコトは、とても気持ちのよい事だった。
五番街から出る時、最後に一言、聞こえた。
「この花、『エアリス』って言うんだねぇ!」
作品名:【FF7】seed of heart【クラエア】 作家名:里菜