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Final Fantasy 6 ~すべてが始まる前~

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「今こそ、わがガストラ帝国が世界を支配する時!」
 彼の声に反応するかのように、兵士達は雄たけびをあげた。
 あちこちから、「帝国万歳」の声があがる。
 たった今少女に惨殺された兵士達を哀れむ者は誰もいない。
 たとえ戦いのさなかにおいて一時は協力し合った者でさえも。酒場で飲み交わした者でさえも。
 それでも死を悲しまないという事実に、セリスは改めて頭を棍棒で殴られたかのようなショックを覚えた。
 それはレオにしても同じである。
 セリスとは違い、感情を露にこそしなかったが、芽を出していた帝国への不信感はつぼみをつけた。
 ガストラやケフカだけでなく、兵士もこんなものなのかと、セリスは思い知った。
 これが帝国。 


その晩、ベクタ内のひときわ立派な部屋で、セリスは息をひそめていた。
 華美な装飾をされた部屋の家具たちが、そこがガストラの寝室だということを物語る。
 窓が無いためか、部屋には一筋の光さえも無い。
 それでも目はだいぶ慣れ、自分の手の微かな輪郭くらいは見ることが出来た。
 そしてもちろん、その手に握られている剣も。
 彼女の耳に、この部屋へと向かってくる足音が聞こえた。
 セリスはつばを飲み込み、普段は信じてもいない神に願った。
 ドアが開くと共に、セリスは思い切り開いた者に向かって切りかかる。
 小さくうめき声がした瞬間、彼女の顔はこわばった。扉から漏れる明かりにまぶしそうに目を細めながら、セリスは軽く舌打ちをする。
「ヒッヒッヒ……ひっかかったな」
「ケフカ……」
 彼の腕に刺さった剣を抜き、セリスは身構えた。
「皇帝はもちろん予測済みって事!」
 血があふれる腕を押さえながらもケフカも戦闘体制に入る。
「その片腕は使えないも同然! 今のお前だとわたしの勝利だぞ!」
 お互いに魔法を放ちながら、セリスは不敵な笑みを浮かべた。
「それがそうでもないんですねぇ~ヒッヒッヒ」
 不利な状況であるというのに、全く物怖じしない彼を見て、セリスは最悪の状況を思い浮かべた。
 その瞬間、背後からの殺気をかわしすんでの所でよけるも、ケフカによって放たれた魔法が彼女の背中に直撃する。
「さすがセリス。死角からの攻撃もかわすか」
 そこには、彼女を明らかに敵とみなしたガストラがいた。
「それでも、わしがこの部屋に潜んでいることに気づかぬとは、まだまだじゃな」
 セリスは背中をかばいながらも戦うが、所詮一対二である。
 体力も底をつき、じわじわと攻め立てられてゆく。いくら常勝将軍といえども、二人に打ち勝つ術は無い。
 そこへ騒ぎを聞きつけたレオが駆け込んできた時には、すでにセリスの姿は無かった。

 後日、広間には再び数多の兵士が詰め寄せた。
 皇帝を殺そうとしたセリスがどうなるのか見たいがためである。
 かつて自分の上司であった将軍を。

 さるぐつわを口にされ、縄で縛り付けられたセリスが登場すると場内は一気に熱気が高まった。
 彼女に続いてガストラが出てくると、次第に話し声は小さくなる。
 さらにその後ろに、いやに楽しそうなケフカと無表情のレオが続いた。

「ではこれより判決を言い渡す!」
 ガストラがそう言った途端、兵士達は「死刑! 死刑!」と口々に叫び始めた。
 そんな彼等をセリスは凛とした眼差しで眺めた。自分の支配下にあった者達が、今自分を殺すことを望んでいるのはひどく滑稽に思えた。シドの顔を捜したが、見当たらない。
 最後に会いたかったと思う反面、この場にいないことを嬉しく思った。自分の死を望んでいないという表明に繋がるからだ。
 一瞬広間が静まり返った後、ガストラは満面の笑みでセリスに死刑を言い渡した。
 分かっていたことだ。彼にはむかって生きた者はいない。うなだれることも無く、セリスは前を見据えた。
 それよりも死刑決行までの後三日、何を考えて過ごせばいいのか分からなかった。

 兵士に連れられてセリスが退場する時、振り返った彼女とレオの目線がぶつかった。ほんの数秒。レオは駆け寄りたい衝動に駆られるのを必死で抑える。
 セリスは自分に死を望んでいない。自分とは違い、生きてくれることを望んでいる。
 その事が手に取るように痛いほどレオは分かった。
 俺だってお前の死なんか望んじゃいないのに、と心の中で呟く。
 浴びせられる罵倒の中、セリスはレオの視界から消えた。
 この時ほど、レオが己の無力さを呪った事はない。
 遊びたい盛りに戦闘の技術を教え込まれ、魔法の力を挿入され、エリートとしての道を歩む傍らで彼女は何が幸せだっただろう。
 恋も知らず、遊ぶことも知らず、このままひっそりと朽ち果てる命を思うと、自然とレオの目から涙が溢れた。
 ケフカ達にばれないように、そっと袖で目頭を押さえる。彼女のためにも、生きて帝国を見届けよう。
 そう、レオは固く決心した。


 それから僅か明朝に、一人の少女によって人々の生活は大きく変わることとなる。
 生まれながらに魔導の力を持つ少女。彼女の名を、ティナ・ブランフォードと言う。