バツイチ子持ちを落とす100の方法
「ほんっと、サイテー!! セクハラおせっかいオヤジ」
罵詈雑言を吐くカリーナにバーナビーは笑って言った。
「あの人は、おせっかいが趣味みたいな人ですからね。しょうがないです」
「あんただって前はウザイおじさんだって嫌ってたじゃない」
「もう慣れましたから。それに・・・いろいろ話してるうちに、どうしてあんなにお節介焼になったのかわかったから」
そう言ったバーナビーは笑っていたけれど、言葉の調子からその理由はたぶん、あまり楽しいものではないとわかる。私にだって、そのくらいはわかる。
だから、訊くのは止めておいた。
トレーニングを早めに切り上げて、今度はヒーローバーに向かう。今日は弾き語りの仕事のある日だ。
外に出ると、ちらちらと雪が降り始めていた。手袋を探したが見当たらなかった。
たしかにバッグに入れて家を出たはずなのに・・・学校にでも忘れてきたのかもしれない。
氷の使い手でも体はただの人間と同じだ。指先が徐々に血の気を失い、冷たく痛くなってくる。これからピアノを弾かなければならないのに最悪・・・。
「おい」
声をかけられて振り向くと、虎徹が手袋を差し出していた。
「トレーニングセンターに忘れてた。これからバイトだろ? て、冷やしたら困るだろーが」
「・・・ありがと」
珍しく素直だな、と虎徹は笑った。渡された手袋をはめると、冷えた指先がほんのりと残る虎徹の体温を感じて、手よりも胸の奥が喜んでいるみたいだ。
また明日も、手袋を忘れて帰ろうと、思った・・・・・・。
アイツが見つけやすいところはどこだろう・・・・・・?
END
作品名:バツイチ子持ちを落とす100の方法 作家名:みのり