先手必勝
恋人が対人恐怖症だと知ったのは初めて想いを伝えあったその日だった
耳元でそっと囁くその甘い声に痺れそうになりながらも、それだけはちゃんと聞いていた
「昔はここまで酷くなかったんですけど・・・引きこもりを止めてから悪化する一方でして、」
そう言って自嘲気味に微笑んだ顔も覚えている
どうせアルの奴が無理やり引っ張り出したから、というぐらいは予測できた
そしたらそれまで対等に貿易してたヤツとも不平等な条約を結ばされて(その時はたしかに俺も酷い事をした)
まあ、悪化もするだろう
しかし、それならば菊が心を開く相手は俺のみということになる
俺だけの、俺の物だ。
心の底の暗い独占欲がぐるぐると渦を巻いて立ち上ってくる
そうしたら口は勝手に言葉を紡いでいた
「菊、俺たちが付き合ってることは秘密にしよう」
「何故?」
「そっちのほうが都合がいいからだ」
「・・・貴方がそう仰るのなら」
こうやって薔薇の下の関係は始まった