永遠の…
その気になれば、永遠を生きられる、上級悪魔が……。あれには悲しいというよりも、驚かされた」
結局原因不明のまま、妻の死後ニヶ月ほどで、ベルゼブブ家先代当主は息を引き取った。
「べーやんは、心底さくに惚れとったからなあ……。一時たりとも、さくと離れたくなかったんやろう」
アザゼルは驚いた様子もなく、墓に向かって手を合わせている。
「べーやんジュニア。ワシな、最近、長生きすりゃええってもんじゃないなあと思うようになったんよ。
さくの生き方見とるとな、特に……色々考えさせられたわ」
「…………。」
「そんでな、お前のお父ちゃんの死に様も、悪いもんとは思わんでやって。
なんか、ああ、べーやんだったらそうやろうなあ、って納得してもうたもん、ワシ」
父と親友だったという悪魔のしみじみとした口ぶりに、青年は苦笑を漏らす。
――確かに。
両親は、本当に仲のよい夫婦だったのだ。
「ワシな、死後の世界とか、全然信じとらんねん。けどな、なんか、お前のおとんとおかんは、死んだあともずーっと一緒におってな、あの世っちゅーとこで、ラブラブと幸せに暮らしとるような、そんな気がするんよ」
ふと風が吹き、二人が供えた香の煙を、空高く運んでいった。
「恋とか愛とか、続かんもんだと思うとったけど……。あるんやね」
――永遠の恋。
ここにくるまでは、複雑な感情があった。
母のことが大切なのは分かるが、当主としての座を投げ出し、あっさりと自分たちを置いて、逝ってしまった父は、あまりにも無責任であり、男として弱すぎるのではないか、と。
だが、今やそんな想いはすっかりと消え失せ、ただ――青年は初めて、両親を羨ましいと思ったのだった。
END