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英国紳士の誤算

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フランス主催でおこなわれた会議は、珍しく順調に議題が進んで無事閉会した。
 今日の仕事はこれで終了だ。机の上の書類を軽くまとめ、俺は座ったまま、大きく伸びをひとつした。
 ふう、と息をついて、ちらりと、同じように伸びをしている、円卓の向かい側の席に座っているアメリカを見る。
 ……さっき、今日の仕事は終わったと言ったが、実は、まだ重要なやつがひとつ残っていた。……さあ、いけ。いくんだ、俺。
 アメリカを夕飯に誘うんだ!
 時間も小腹が空いてくる頃合いで、ちょうどいい感じだ。この日の為に一週間前から、特製ビーフシチューも煮込んでおいた。アメリカが明日から休暇に入るのは確認済みだし、それにあわせて、俺も上司から休みを無理言ってもぎ取った。
 もう、何回も練習しただろう?
 『このあと、暇なら夕飯食いに、うちに来ないか』だ。
 それで、メシを食った後は……
 ジャケットのポケットに手を突っ込み、小瓶の存在を確かめる。
 ふ、ふふ、ふふふ。
 三日三晩かけて生成した、俺んちの魔術の叡知の結晶。
 『お酒も呑んでないのに変だな、なんだか体が火照ってしょうがないんだ……的な感じになる薬』だ!
 これを使って、そ、そのまま朝まで……
 ふっふふふっふふふふふっふふふっふふふふ。
 俺の隣に座っていたイタリアが、何かに怯えたような顔をして、あわてて席を離れていった。どうしたんだろう? おかしなヤツだ。
 まあ、いい。とにかく、アメリカが帰ってしまう前に誘うんだ。
 イスから立ち上がってアメリカを見ると、俺より先に近づいていく人影がいるじゃないか!
「よう、アメぇっ!?」
 アメリカに近づこうとしたフランスにラリアットをかまし、そのまま廊下まで引きずっていく。
「え、ちょ、イギリスっ!?」
 うるさいので、アームロックでだまらせる。動かなくなったヒゲを放置して、ドアからアメリカの様子をうかがう。
 のんびり、アクビをしていた。よし、気づかれてないみたいだ。
 改めて、身だしなみを整える。さて――
「やあ、アメリカくん。君は今日も元気だったね。今度、ぼくにも少しわけくれないかな」
「ロシア」
 ロシアああぁあっ!
 てめえ、アメリカに話しかけてんじゃねえ!
「あれー? アメリカくん。眼鏡にまつ毛がついてるよ」
 そう言って、やつは、座っているアメリカの肩に手をおき、顔を寄せて覆い被さった。
 なっ!
 ろ、ロシア、そ、その体勢は、き、ききき、きぃぃぃっ!
 思わず懐に入れた右手を左手でとめる。
 待て、俺。落ち着け、俺。あれはそう見えるだけだ。ドラマとかでもよくある、どっきりかん違いってやつだ。断じてキスなんかではない!
 第一、この位置から撃ったらアメリカにも当たる。
 大きく息を吸い込んで、呼吸を整える。現に、ロシアが離れた後のアメリカの様子は、いつもと変わらないじゃないか! ……変わらないよな?
「それじゃあまたね、アメリカくん」
 マフラーをゆらしながら去っていくロシアの背中を睨み付ける。とりあえず、ヤツには、次に会ったとき鉛ダマを二、三発食らわせることに決定して、俺は今度こそアメリカの元へ――
「おいおい、イギリス。なんなんだよ、さっきの。ひどくないか? おにいさん、軽く天国の門くぐりか、けえっ!?」
 復活してきたヒゲはもう一度廊下に強制送還だ。いいからその門くぐってこい。当分帰ってくるな。
 ふう、やれやれ邪魔者は排除した。
 これでようやく、落ち着いてアメリカを誘える。そう思って会議室に戻った俺は、がく然とする。さっきまで座っていた席にアメリカがいない。
 え、あ、なに? 帰っちまったのか!?
 あわてて、会議室内を見回すとその姿を見つけることができた。ああ、良かった。まだ、いるじゃないか。二人も……

 ――アメリカが二人いる!?

 会議室の夕日がやさしく差し込む窓辺付近で、アメリカが楽しそうに、アメリカと話をしている。
 おもわず両手で目をこすり、しぱしぱと瞬きをする。
 いや! 違う、違う。あれは……ええと……
 そうそう! カナダだ! 一週間前の英連邦の会議で会ったばかりじゃないか。カナダだ、カナダ。アメリカによく似た、あいつの兄弟、隣の国。

 ……どっちがアメリカだ?

 いやいやいや、あり得ないだろ、俺。まさか、わからないなんてことは。よく見ろよ、そして感じろ。反応するのはどっちだ!?
 ……よし、右。右のほうがアメリカだ。より、ラブリーだし、俺のセンサーが反応している!
「じゃあね、アメリカ。あんまり、はめを外し過ぎるなよ」
 そうこうしている間にカナダがアメリカから離れていった。
 ほ、カナダは、左だった。間違っていなかった。
 今度こそ!
「アメリ――」
「やあ、日本」
 アメリカは俺のことに気付きもせず、通りかかった日本に話しかけていた。しかも、
「このあとひまかい? よかったら一緒にご飯食べにいこうよ」
 とか言ってやがる。
 なんてこった! ラスボスはおまえか日本!?
 日本相手に手荒な真似はできないし、どうする、俺。
 ……とりあえず念を送ろう。頼む、断れ。断ってくれ!
 空気は吸うもんじゃなくて、読むもんだろ、日本!
 その想いが通じたのか、日本がこっちを向いた。俺と目が合うと、一瞬ひくっと、口元を引きつらせたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「アメリカさん、すみません。お誘いは大変うれしいのですが、私このあと用事があるんです」
「そっか、残念だぞ」
「また今度さそってくださいね。……それでは、失礼します」
 よっしゃあぁあ!
 俺の念はばっちり日本に届いたらしい。アメリカに別れを告げて、こちらに歩いてくる。
「イギリスさん、お疲れ様です。お先に失礼します」
 ぺこっと頭を下げる、日本独特の挨拶をした。
「ああ、日本もお疲れ、気をつけてな」
 上機嫌でこたえる。
「はい、それでは」
 すれ違いざまに、にっこり笑い「頑張ってくださいね」と付け加えて、日本は帰っていった。
 ありがとう。ありがとう、日本! やっぱり持つべきものは友達だよな!
 日本にはあとで、スコーンでも焼いて贈ろう。
 さて、ほとんどの国も帰ったし、今度こそ、アメリカを誘う!
 ……もう一度復習しておこう。
 『このあと暇なら、うちに夕メシ食いに来ないか。お前のためにビーフシチューを作ったんだ』
 よし。大丈夫だ。言うんだ。頑張れ俺。日本も応援してくれている。
 ずかずかと大股でアメリカに近づき、
「よ、よう。アメリカ」
 声をかけた。
「なんだい? イギリス」
 よし、言うぞ。
「このあと暇か? ビーフシチューを作りすぎて余ってんだ。ど、どうしてもお前が食いたいっていうなら、食わせてやるからうちに来いよ!」
 なんか練習と違うが、まあ、だいたい同じだよな。
 さて、アメリカの反応は……
「君の料理は、不味いからいらないよ」
 ぐっ、どんまい俺。負けるな俺。諦めるんじゃない俺!
 大丈夫、この反応は予想済みだ。次の手だって考えてある。
「じゃあ、アメリ――」
「せっかくフランスにいるんだから、美味しいフランス料理を食べたいと思わないかい?」
「ふぇ?」
作品名:英国紳士の誤算 作家名:チダ。