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背徳と情欲の箱

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 鉄格子の十五センチほどの隙間から、素早く伸びてきたアーサーの右腕がアルフレッドの制服の胸倉をつかみ、反応する暇を与えず強引にその体を引き寄せた。
「ぐっ……」
 胸をしたたかに鉄棒にぶつけ、痛みにうめき声を上げる。反動で制帽が外れ、アルフレッドの金髪がわずかな光を集めてゆれた。
「何をするんだ! カークラ……んぐむぅ!?」
 アーサーを睨みつけ、声を荒げたアルフレッドの言葉は、しかし途中でさえぎられてしまう。
 アーサーが自分の唇でアルフレッドの口を塞いでしまったからだ。さらに、胸倉をつかんだまま、逃げられないように左腕が腰に回される。
 捕らえた獲物をむさぼりつくそうとする、激しい噛み付くようなキスだった。
 口内をアーサーの舌に蹂躙され、息が上手く吸えない。
 アルフレッドの手から懐中電灯が放され、床に落ちて明かりが消える。非常灯のうすい緑色の光だけが、この場の光源になった。
「ん……! んんーっ! んーっっ!!」
 アーサーの左手が、スラックスの上からアルフレッドの尻を、するりとなでる。
「んあ……っ!?」
 底知れぬ恐怖を感じて、どうにかアーサーから体を引き離そうとするが、キスのせいで腕に力が入らない上に、鉄格子が邪魔で上手くいかない。
 長すぎるキスからようやく解放されたのは、アルフレッドが酸欠で気を失う寸前だった。
 同時にアーサーの腕も離れたので、急いで逃げようとするが、足がふらついて尻餅をついてしまう。
 それでもどうにか後ずさりして距離をとり、濡れた口元を袖でぐいっと乱暴にぬぐうと、アルフレッドは新鮮な空気を、思う存分肺に送り込んだ。
「どうだ、俺のキスは? 最高に感じるだろう?」
 キスの余韻を楽しむかのように、アーサーは唇からこぼれた混ざり合う二人の唾液を舌でぺろりと舐めとり、息の上がっているアルフレッドを見下ろして、どこか得意げに言った。
「思ったとおり、お前なかなか美味かったぜ? アルフレッド」
 ご馳走様と呟いて、アーサーがニヤリと笑う。
 それを見て、羞恥と怒りがない交ぜになったような感情が湧き起こり、かああっと、アルフレッドの頭に血が登っていく。
「か、看守に危害を加えるなんてっ! 懲罰ものなんだぞ!」
「ああん? そんなの……」
 ニヤニヤとたちの悪い笑みを浮かべていたアーサーが、眉をしかめて、怪訝そうな表情になる。いったん言葉を切って胸の前で両手を組むと、くいっとあごでアルフレッドを指した。
「お前が黙っていれば済むことじゃねえか。……なあ、アルフレッド?」
 アーサーはアルフレッドに不正を働けといっているのだ。まるでそれが当然だとばかりに。
「そんな要求、のめる訳ないだろう!」
「ふうん、じゃあお前は、馬鹿正直に上のぼんくらに報告するんだな? 俺にキスされて、感じまくって気持ちよくなって、足腰立たなくなりました――って」
「なっ……!? なに言って――」
「事実だよな」
 否定したいのにそれが出来なくて、二の句が継げずに固まってしまう。
「なんなら俺が噂を広めてもいいぜ」
「やめろっ!」
 余裕のない叫び声を上げるアルフレッドを満足そうに見つめるアーサーを見て、先程とは逆に顔から血の気が引いていった。
「やめて……くれ……」
「じゃあ、仲良くしようぜ、俺の可愛い看守様?」
「あ……」
 アーサーの言葉に、酷いめまいを感じた。耳鳴りがして、頭がガンガンする。
 力なく座り込み、アルフレッドは歪む視界でただ呆然と、目の前の愉快そうに笑う男を見上げていた。


 END
作品名:背徳と情欲の箱 作家名:チダ。