幸せになろうよ
カンラカンラララーン。商店街いっぱいに、ベルの派手な音が鳴り響く。
「おめでとうございまーす! 特賞、レジャーランドペア入場券とリゾートホテルスイートルームペア宿泊券大当たりー!」
周りから拍手と喝采が送られる。その中心にいた風丸は、苦い顔をして祝福を受けていた。
「特賞ってすげーじゃん! お前、数年分の運使い果たしたんじゃね?」
買い物から帰った風丸を迎えたのは綱海だった。築三十年以上のアパートの一室に二人は一緒に暮らしていた。
「どうせ当たるなら、一等の炊飯器が欲しかったよ。最近調子悪いし」
「えー、炊飯器じゃ面白くねぇだろー。こっちのが全然いいって!」
風丸が冷蔵庫に買ってきた物を片づける横で、綱海は金封を持ってはしゃいでいた。
「で、いつ行く?」
「え、行くの?」
「え!? 行かねぇの!?」
風丸の言葉に、綱海は信じられないものを見ていると言わんばかりの視線を送った。
「いや、換金したらちょっとしたお金になるだろそれ」
「えー、なんだよそれー。せっかくだから行こうぜ! ほら、来月ならちょうど『付きあって十年目記念日』だろ? 記念日だしいいじゃん。オレ、ホテルに予約取るわ」
風丸の返事も聞かずに、綱海はリビングへいそいそとスキップして行った。
(十年、か……)
風丸は冷蔵庫の扉を閉めると、壁にかけられたカレンダーを一枚めくった。そこにあるひとつの日付は、カラーペンで「十年目記念日」と綱海らしい大らかな字が書かれ、ハートで囲まれていた。
ちくり。その文字を見て、風丸は体のどこかに細いちいさな針が刺さったような感覚を覚えた。しかしそれには気づかないふりをして、カレンダーを元に戻した。
「おめでとうございまーす! 特賞、レジャーランドペア入場券とリゾートホテルスイートルームペア宿泊券大当たりー!」
周りから拍手と喝采が送られる。その中心にいた風丸は、苦い顔をして祝福を受けていた。
「特賞ってすげーじゃん! お前、数年分の運使い果たしたんじゃね?」
買い物から帰った風丸を迎えたのは綱海だった。築三十年以上のアパートの一室に二人は一緒に暮らしていた。
「どうせ当たるなら、一等の炊飯器が欲しかったよ。最近調子悪いし」
「えー、炊飯器じゃ面白くねぇだろー。こっちのが全然いいって!」
風丸が冷蔵庫に買ってきた物を片づける横で、綱海は金封を持ってはしゃいでいた。
「で、いつ行く?」
「え、行くの?」
「え!? 行かねぇの!?」
風丸の言葉に、綱海は信じられないものを見ていると言わんばかりの視線を送った。
「いや、換金したらちょっとしたお金になるだろそれ」
「えー、なんだよそれー。せっかくだから行こうぜ! ほら、来月ならちょうど『付きあって十年目記念日』だろ? 記念日だしいいじゃん。オレ、ホテルに予約取るわ」
風丸の返事も聞かずに、綱海はリビングへいそいそとスキップして行った。
(十年、か……)
風丸は冷蔵庫の扉を閉めると、壁にかけられたカレンダーを一枚めくった。そこにあるひとつの日付は、カラーペンで「十年目記念日」と綱海らしい大らかな字が書かれ、ハートで囲まれていた。
ちくり。その文字を見て、風丸は体のどこかに細いちいさな針が刺さったような感覚を覚えた。しかしそれには気づかないふりをして、カレンダーを元に戻した。