幸せになろうよ
その晩、二人はおおきなベッドの上でぴったりと寄り添うあうように眠りについた。つながれた手の風丸の指には、青い宝石が静かに輝いていて、リビングのガラステーブルにある婚姻届の「夫になる人」の欄には、綱海の名前の下に風丸の名前が無理やり書かれていた。
風丸は夢を見た。綱海がちいさな子どもの手を引いてる夢だった。その子どもは綱海と同じ髪の色をしていた。
後ろ姿だったが、ふたりの背中からは幸せそうな空気が微笑ましいほどに伝わってきた。
ふたりがこちらを振り向く。子どもの顔を見て、風丸は驚いた。子どもの瞳は自分のそれと同じ色で、面影も自分を彷彿させた。
ふたりがよく似た笑顔を浮かべ、手を振って風丸を呼んだ。
風丸はあふれそうになる涙をこらえて、ふたりのもとへ駆け寄った。子どもの日に焼けたちいさな手を握ると、子どもは笑みをさらに深くした。
そして、三人で並んで陽のあたる道を歩きだした。
(夢だから、いいよな)
夢のなかでくらいなら、こんな幸せを手にいれてもいいだろう。
夢なのだから。