夏だ!水着だ!プールへ行こう!!
日本の夏はすごしにくい!!
1.ことのはじまり
日差しが照りつける八月。イギリスさんが久しぶりに我が家へ遊びに来てくれました。
「その、なんだ、会議では何回か顔合わせてるが、こうして二人で過ごすのは久しぶりだな。いつ振りだ?」
「そうですね……七夕のお祭りの時以来ではないでしょうか」
「そうか、もう約一か月もたってるのか。にしても、やっぱこっちの夏はあっちぃなぁ」
「確かに今日は一段と暑いですね……」
「だよなー。しかも……なんてゆーか、こっちはじとっとしているからさらに悪いと言うか……」
「恐れ入ります、すみません」
そう、湿気の多いここ日本の夏は他国に比べ過ごしにくい、ほんと過ごしにくい!!
「え、あ、いや、お、お前が悪いわけじゃ――」
慌てるイギリス。
それを見た日本さんは……
「(今日は少しだけ意地悪をしてみましょうか)」
と妙なことを思ってしまったのである。
「では、汗を流せるよう湯殿の準備をしてまいりますね」
日本は出来るだけ暗い顔を装いその場を離れた。
「え、あ、ちょに、にほ……」
後を追いたいが追えないイギリス。追って何を言おうと言うのだ?
「はぁああああああああああああああああ」
イギリスが大きなため息をつき、浮かせた腰を下ろす。
「ぬあっ!?」
落ち込んだイギリスは背中に威力の小さい攻撃を受けた。
「眉毛のばかやろおおおおお」
振り返ったイギリスの目に入ってきたのは着物をきた小さな女の子であった。彼女は日本の家に住み着いてる座敷童。
イギリスが日本と出会う前から日本と共にいた。かつては日本も彼女の姿が見えており、共に四季を楽しみながら暮らしたと言う。しかし、今、日本に彼女の姿は見えない。彼女と過ごした日々の記憶もついには消えてしまった。彼女はそれでもまだ日本と共にいる「日本に幸せを」その願いの為に。現在では彼女の姿が見えるのは、今彼女の目の前にいるイギリスただ一国家(ひとり)だけである。
彼女の説明はこれぐらいにしておき、話しを戻そう。
「な、なんなんだよ!!ばかぁ」
「眉毛のばか!!!」
「ばかだけじゃわかんねーだろ!バカ!!」
あなたがそれを言いますか、イギリスさん。
「うぅ……日本さんをいじめるなああああああああ」
「い、いじめてなんか……ねぇ……ょ」
少しは罪悪感を感じているのか段々を声が小さくなる。さらに追い打ちをかけるわらしちゃん。
「日本さんはね!!眉毛としばらく会えなかったからすっごく寂しそうだったんだよ!!会議で会えても仕事ばっかしてんだろ!!だから今日のことすっごく楽しみにしてたのに!!ばかぁ!!」
思いがけない日本の様子に顔を赤らめるイギリス。
「な、なんだよ。それ……(かわいすぎるじゃねぇかコンチキショー)」
あまりの衝撃的なわらしの告げ口に若干イタリア男になってしまった。
「そうか……そうか……」
そして何かを思案し始めた。
「??」
わらしはきょとんとした顔をイギリスに向ける。その時、日本が戻ってきた。
「湯殿の準備が終わりましたよ―……ってイギリスさん?」
日本が見たのは、顎に手を当て何かを必死に考えているイギリスの姿であった。
「(あの様子だと私が戻ってきたことにも気づいてませんね。あら、どうしてでしょう?なんだがイラっとしましたね)」
そう思った日本はイギリスに気付かれないよう静かに彼の横にしゃがみこむと頬に軽く口づけた。その時わらしは両手で目を覆っていた。(しかし、指の隙間からばっちし見ていた)
「なっ!?」
考え事に夢中だったイギリスはすぐさま現実へと引き戻された。
「に、に、ににに日本!? い、いつ戻ってきたんだ? てか、きききき」
イギリスは必死になりすぎて慌てまくり、噛みまくりである。
「先程ですよ」
日本は自分でも頬が赤くなるのを感じながら、素知らぬ顔で答えた。
「それより、何を考えていたんです?」
先程感じた些細ないらつきはイギリスの真っ赤な顔と慌てた様子を見たら消えていた。
「(これは……そうゆうことでしたか……こんな想いは久しぶりですね)」
そう思った日本は自然と微笑んでいた。それを見たイギリスは何やら胸のあたりに温かいものを感じ落ち着きを取り戻していた。
「ああ、ここしばらく二人で一緒にいることなんてなかっただろ?だから、何かをしたいと思ったんだ。そういえば、日本の夏はどう過ごしてるんだ?その、カップルってやつらは……」
「あら、それはデートのお誘いだと受け取っていいのでしょうか?」
日本はイギリスに詰め寄り目を輝かせて逆に問うた。
「(ち、ちかいんだよ、ばかぁ!!)そ、そうだよ!!」
再び紅くなるイギリス。はっと我に返った日本はすぐさま元の位置に戻る。
「こほん……。えっと、日本での夏の過ごし方、ですか……そうですね……みなさん色々なさっているようですが、メジャーなのはプールに行くことでしょうか」
「ほう、プールか……」
「ええ、日本には一種のテーマパークの様なプールの施設があるのです。一日中遊んでも飽き足りないようなところが」
「そうか、それは面白そうだな!」
さっきまでのテンションが嘘のように二人の間に沈黙が流れる。
さきに口を開いたのはイギリスであった。
「今年の夏は地球温暖化の性もあって一段と暑いし……来週あたり一緒に、そのプールのテーマパークってやつに行ってみないか?」
さすが英国紳士、真剣なまなざしで(ただし頬は紅いまま)日本の手を取り言った。
「ええ、もちろん」
日本は笑顔全開で即答していた。
その二人の様子を見たわらしちゃんは幸せそうな優しい笑顔を浮かべ二人を見た後、静かにその部屋を後にした。
こうして、来週イギリスと日本は二人でプールに行くことになったのだった。
作品名:夏だ!水着だ!プールへ行こう!! 作家名:夢見☆空