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クリスマス・イヴ【臨帝】

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臨也は白い息を吐き出しながら曇った空を見上げる。
星も見えない空。
冷え込んでいるが雪は降りそうにない。
中途半端だ。
携帯電話を取り出して覚悟を決める。

「もしもし~? 帝人君? 俺だよ」
『俺俺、おれだよおれ。俺だよ母ちゃん』
「誰だよ。ごめん、俺は折原臨也だよ」

まさか「俺おれ」と返されるとは思わなかった。
帝人はいつも予想外だ。

『すみません。懐かしい詐欺の方かと。急ぎの用事ですか?』
「急ぎじゃないけど、今日クリスマスでしょ」
『電話切っていいですか?』
「なんで?!」
『特に用がないのに電話なんて……無意味ですよね?』
「手厳しすぎてビックリするよ。いやー、さ……ケーキ食べる?」
『正臣と園原さんと三人でケーキバイキングに行きました』
「うわっ」

思わず頭を抱える。
人生は上手く行かないことばかりだ。

『都会ってスゴいですね』
「そーですねー」

思いっきり上の空の相槌を打つ臨也に構うことなく「で、何の話ですか?」と帝人は切り出した。

「四千円のケーキがいま二千円に下がってるんだよ」
『食べたいんですか?』
「いや、今の時間分かってる? 夜の十時だよ」
『そんな時間に電話をかけて来てケーキの値下がり報告ですか。お疲れ様です』
「四千円が二千円のはホテルのケーキなんだよ」
『売れ残りってかわいそうですね。ちゃんと食べてあげてくださいね』
「俺は……ケーキとか食べる気分じゃないんだ」
『そうですか』

会話が終わった。
マズイ。
なんとか帝人に食いついてもらおうと臨也も必死だ。

「でもさ、四千円が半額だよ!」

スーパーの売り文句に習って安さをアピールしてお得感を出してみる。

『四千円のものが二千円で売ってるならそりゃあ半額ですね」
「二人だったら千円ずつだよ』
『食べたくない物に払うお金などありません」

バッサリ切り捨てられる。

「俺が二千円払うよ。きっと明日も食べれるからさ」
『ケーキ食べたいんですか?』
「食べたくないけどそんな値下がったりするケーキ気になるじゃないか。普通はブランドイメージがあるから値下げしないんだよ」
『捨てるよりは安く提供した方がいいじゃないですか』
「そうかなぁ」
『で、食べたいんですか? ケーキ』

早く会話を終わらせるために結論を急いでいるのか、希望を持ってもいいのか。
帝人の声からはどうにも判断が出来ない。

「帝人君と食べたいなぁって……思って電話したんだ……けど……らんちばいきんぐ……そっか……」

がちゃ

開けられた玄関に臨也は電話を切る。
バレているとは思っていた。
アパートの壁は薄い。

「メリークリスマス」
「いぶ~」

笑って答えると帝人は溜め息を吐いた。

「よく寒い中で立っていられますね。鍛えてるんですか?」
「帝人君の部屋の明かりは暖かいよ」
「訳の分からないことを……」

中に入れてもらいながら臨也は息の白さが外と同じ部屋に感心する。

「部屋の中も外も暖かさ変わらないね」
「喧嘩売ってるんですか。コートを脱いで僕に下さいよ」

袖を引っ張られるが臨也は部屋の中を仰ぎ見る。
自分の傑作に満足していた。

「クリスマスプレゼントはこの部屋の中の飾りだよ!」
「散らかさないで下さい」
「明日までキラキライルミネーション」
「電気代かかるじゃないですか」
「ちゃんと電池だから俺持ちだよ」

電極が賑やかな部屋の中で帝人は半眼になっていた。

「はあ……はい、二千円」
「いらないって……どうしてもっていうなら千円でいいから」
「それ四千円で買ったんでしょ」
「…………」
「朝に買って僕がいなかったから持ってうろうろして夜になって見たら値下がってたの発見してベンチでぼうっとしてたら静雄さん

に見つかって追いかけられながら、まだ池袋にいたりする馬鹿な情報屋さんは今日一日高校生三人に尾行されてたのに全然気付いて

ないんですね」
「…………」
「ランチバイキングはこのホテルのです。料理しか食べてないのでケーキの味は知りませんから楽しみです」
「……だから帝人君が見当たらなかったんだ。尾行は気付いてたけどそれ所じゃなかったんだ」

臨也は座りこむ。
フードを被って目をそらしてみる。

「今日はスパイごっこを楽しみました。良いクリスマスプレゼントでした」
「お粗末様でした?」

不思議な感じだった。
全部負けてしまったようだ。

「ずっと連絡とってた人って誰ですか?」
「仕事先の相手」
「へえ?」
「本当! 本当!! 俺は帝人君一筋だって言ってるじゃないか」
「ケーキ食べましょうか」
「無視?」

当たり前に用意されていたアルコール入りのシャンパンは自分用だろうからグラスを持って来てよかったと臨也は思った。
冷蔵庫いらずの部屋の温度に公園で見ている夢を疑うところだ。




翌日のクリスマスの朝


こっそり用意したプレゼントはあっさりと突っ返された。

「すみません。僕は臨也さんを尾行して一日を無駄にさせるような悪い子なので靴下の中に入ってる物は貰えません」
「見もしないで!!」
「正方形の箱とか空けたくないですね」
「輝いてるよ」
「臨也さんの給料の三ヵ月分ってスゴい金額なんじゃないですか?」
「一定じゃないんだけど平均すると――」
「言わないで下さい!! 働くのが馬鹿馬鹿しくなるッ」
「俺の稼ぎは帝人君の物だよ。だって夫婦って、そういう」
「受けとってませんから! 認めてませんから!!」

頑なな帝人に押しても引いてもダメそうなので今日は諦めることにする。



後日

「もしもしー狩沢相談事務所ですか?」
『そんな事務所を構えた覚えはないけど、なーに? イザイザ。みかプーがどうしたの』

電話に出た狩沢絵理華は突然の電話にもあっさり対応してくれる。
臨也が電話をかけた理由など分かっているのだ。

「半分成功、半分失敗みたいな……帝人君、喜んでたけど」

クリスマス大作戦はどうしてか空回った。

『ツンデレってそういうものよー。イザイザが最初にやろうとしてたケーキに指輪を入れてのパイ投げならぬケーキ投げ! やんな

くて良かったわ。アレはだめよー?』
「口の中に指輪が入って来たらドキッと」
『ペッと吐くかゴクッと飲んじゃうかなー』
「まあ、服が汚れると帝人君、怒るよね」

さすがに告白の席でわざと怒らせたくはない。

『クリーニング代出してあげつつ裸のみかプーに自分のコートを』
「そういえば脱ぎたてのコート欲しいって言われたな」
『それは『抱いて』っていう確かなシグナル!!』
「マジで!! 俺流しちゃったよぉおお。もったいなッ」
『信号無視したらそりゃあ厳重注意どころか罰金免停仕方ないでしょ』
「どうしよう。年明けにお年玉あげようかな」
『ここはおみくじに細工じゃない?』
「大急ぎで準備する!!」

礼を言って電話を切る。

「おみくじに細工……縁結びの相手は全部俺? 運命の相手俺。待ち人俺。縁談俺。引っ越し先俺」

やる気が出来てきた。
来年は明るい。




「じゃあね~」

電話を切って狩沢は後ろを振り向く。

「狩沢さん、臨也さんに変な入れ知恵するの止めてくださいよ」
「ありゃバレた」
作品名:クリスマス・イヴ【臨帝】 作家名:浬@