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そんな感じ?

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「男が男に対して 『可愛い』 って思うとか、普通はありえないですよね」
「―――え?」
雑誌に目を落としたまま顔も上げずにいう少年は、目下のところ臨也にとって 『恋人』 という位置にいる。疑問の形をとって投げられた会話に、臨也は仕事の手を止めてソファに座る少年に目を向けた。
真面目で素直で、そのくせ時々思考を明後日に飛ばしてしまう彼の悪癖を、今のところ臨也は気に入っている。たまにおかしなところに着地するから非常に手を焼かされもして、それがまた楽しい。
つまり、お気に入りだ。ベタ惚れと取られても否定するつもりもない。
「帝人くんは可愛いよ? …って、俺なんども言ってるよね?」
「ええ。だから、嫌がらせだと思ってました」
「ちょっ、なにそれ!? それはちょっと酷くない!?」
「だって、男子高校生に可愛いなんて形容詞、普通は使わないじゃないですか。そんなの、嫌味以外のなにものでもないでしょう?」
そんなことを言われたって、頬を膨らませ上目遣いににらんでくる顔はどう見ても 『可愛い』 としか表現のしようがない。恋人の欲目を引いても、例えばセルティに見せたとしても同じ感想を抱くと思うが、言えば拗ねてしまうのがわかっているから臨也は肩を竦めるに留めた。
「俺視点だと、帝人くんはすごく可愛いよ」
「…それは年の差のせいじゃですよ」
「世間一般では、俺だってまだ若造扱いされる年なんだけどね」
「でも、僕は臨也さんを可愛いと思ったことは一度もないです」
「そりゃまあ…」
「あ。でも、静雄さんは時々可愛いです」
周囲から怖がられ距離を取られている静雄が、例えばアイスクリーム片手に嬉しそうな雰囲気を漂わせていると、なんだかほっこりするのだ。可愛いと表現してしまうのはどうかと思うけれど、すごく和んで気が抜ける。
…などと嬉しそうに笑みを浮かべて言われれば、当然、臨也が気分を害しないはずもない。帝人の口から天敵の名が出るだけでムカつくというのに、これはワザとかはたまた無意識かと、時々悩まされるのが癪だ。
「帝人くんて、大概趣味悪いよね」
「そんなの、臨也さんを選んだ時点で最悪極まりないじゃないですか」
「ちょ、否定はしないけどそこまで言う!? 仮にも俺、恋人だよね?」
「ペットかパシリに格下げ希望でしたら、敢えて止めはしませんけど」
「帝人くん、帝人くーん」
気を許した相手にほど毒舌になると知っているから、臨也は帝人とこうして言葉を投げ合う行為をそれなりに楽しんでいる。着地点の見えない会話も嫌いじゃないが、正直なところ、静雄と並べて比較されるのは面白くなかった。
「シズちゃんは可愛くて、なのに俺はパシリなんだ?」
だから不機嫌に吐き出せば、帝人ははなぜかそわそわと視線をさまよわせた。唇をぎゅっとすぼめ言うか言うまいか迷っている、そんな仕草が子供じみていて可愛らしい。
可愛いっていうのはこういうことだよなと、その先を待ってじっと帝人を見つめると、ほんのりと頬を染めてぷいとそっぽを向いた。
「そんなこと言ってません」
「じゃあ、いったい俺にどうしろって言うのさ」
「だって、…だって」
ダメだ。これはもう、仕事どころじゃない。
パソコンの電源を落とすと、臨也は席を立ってソファへと腰をおろした。返事を促すようにすぐそばに座って、けれど一切身体には触れない。膝の上で組んだ自分の手をじっと見つめて無言でいれば、諦めたように息を吐き出すのが聞こえた。
「僕だって、可愛い臨也さんが見たいんです…」
「……………は?」
「だから、僕も可愛い臨也さんを見てみたいんです!」
「「も」って、いったい誰が俺のことを 『可愛い』 だなんて言い腐りやがったのさ!」
「新羅さん」
予想の斜め後ろを行く名前に、一瞬頭が真っ白になった。なるほど、新羅がよけいなことをなにか吹き込みやがったのか。
「……わかった。待ってて。運び屋にチクッた上で、ちょっとあいつ殺してくる」
「殺!? あの、いえ、待ってください! そうじゃなくて、あの、新羅さんが言ってたのをセルティさんから聞いたっていうか、」
「なにやってんだよあの馬鹿夫婦!」
正確には、新羅が「まああの悪党だって、アレで可愛いところが全くないわけじゃないと思うよ、多分」と帝人のことを心配するセルティを慰めて、それをセルティが 『臨也にも可愛い一面はあるらしいぞ?』 と帝人に告げたのだ。
そうして帝人は、それを付き合いの長さによる親愛の表れだととった。帝人自身は10年来の付き合いである正臣を可愛いと思ったことはないが、まあそれに近い感情というか、『馬鹿な子ほど可愛い』 的なことなら思ったことがないでもない。
だから新羅の言う 『可愛い一面』 が、相手に気を許して、許しているからこそ見せる甘えた一面なのだろうと、そんなふうに捉えた。年下の恋人には甘えられないが同世代の友人にはそういう面も見せるんだ…、と密かに落ち込んだりもしたのだが、もちろん臨也はそんなことなどこれっぽっちも知りはしない。
額面どおり捉えて、はた迷惑な馬鹿ップルがなにか吹き込んだのだろうと、そう考えた。まあ、あながち間違ってはいない。
「で? 帝人くんは、俺にどうして欲しいのさ」
「どうって言うか…」
「可愛いかどうかなんて、しょせんは個人の主観だろ。俺が帝人くんに対して可愛いと感じる行為が、そのまま逆転できるとは限らないじゃない」
「はあ…」
「恋人同士で可愛いプレイとなると、女装か猫耳、あとは裸エプロンってのが王道コースだと思うけどね。まさかそれを俺に、―――ってちょっとマジやめようねそのキラキラした目? 冗談だからね。やれとか言わないよね? やれとか言わないよね!?」
「女装とエプロンは辞退しますけど、猫耳は見てみたいです…」
牽制のつもりで墓穴を掘った。というか、よもやそこに食いつくとは思わなかったというのが正直なところだ。
だって普通ありえないだろ。20歳過ぎた男に猫耳とか、そんなの寒すぎるだろ!!
「いやいやいやいや、ないからね。やらないからね、帝人くん」
「でも、」
「寒いから。キモいから。やったら絶対ドン引きするから!」
「恋人同士なら王道なんでしょう?」
「俺今24歳だよ!?」
「世間一般では、まだ若造扱いされる年なんですよね」
「……………百歩譲って女装でどう?」
「臨也さんの女装は、多分シャレにならないと思うんで」
「だからって耳とか、」
「見るのは僕だけですよ?」
 
 
 
 
作品名:そんな感じ? 作家名:坊。