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そんな感じ?

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「……」
にこにこにこにこ。そんな擬音が聞こえてきそうなくらい眩しい笑顔を見せる、容赦ない恋人が怖い。言い逃れる術がないわけじゃないけれど、それを貸しだと言い放てるだろう程度には、帝人は決して甘くはない。
借りを作るか、恥をかくか。ああもう面倒な子だよと思うけれど、それが決して嫌ではない。考えてみれば大したものだ。この、折原臨也にそう思わせるのだから。
「携帯出して」
「え?」
「きっかり5分。撮影は禁止。笑うのも引くのもダメ。そう思ったとしても見て見ぬフリをすること」
「―――はい!」
証拠さえ残さなければ、恥なんて忘れてしまえば済むことだ。
…そう思うことにして、臨也は帝人の携帯を手にいったん自室へと引っ込んだ。機会があったら帝人に着けてやろうと取り寄せてあった耳を取り出して、重々しくため息を吐き出す。オーダーメイドの猫耳は帝人の髪に合わせた黒、作りは本物そっくりで、その辺の玩具とは比較にもならない。
よもやこれを自分に着ける羽目になろうとは思いもしなかったが、猫耳臨也を披露した後は帝人に取り付けて写メる気満々だ。その程度の役得がなければやっていられない。
専用のクリップで位置を確認しながら頭に取り付け、鏡に映る自分の姿に臨也はげんなりと肩を落とした。こんな行き当たりばったりではなく時間があれば、顔にも特殊メイクを施してミュージカルや映画のように装うことも出来たのに、素の顔に耳がついてるだけの姿は本当に情けない。
やっぱりやめようかと思うが、ここでやめると帝人の視線が怖い。残念ですと笑って済ませてくれればまだしも、そうですかやるって言ったくせに止めるんですかと冷たい目で見られるのは真っ平だ。軽く扉を叩いて帝人の注意を促し、なるようになれ、と仕事場へと踏み込んだ。
「ああもうこれでいいんだろ! どうだよ、俺の猫耳姿は!!」
ソファに座ったままの帝人の前に立つが、その反応は予想したものと少し違った。笑うのをこらえるか青ざめてドン引きするか、そのどちらかだと思っていたのに、帝人はぽかんと臨也を見上げている。
「え? ちょ、帝人くん?」
「……」
「おーい?」
「……」
「どうした、…ニャン?」
「……」
ぺちぺちと頬を叩くと、その目が大きく見開かれて瞬きを繰り返した。と、耳どころか首や鎖骨まで真っ赤に染めて、帝人がわたわたとうつむく。
どう見ても照れているようにしか見えない。が、なぜこの反応なのかがわからない。気持ち悪いなら青ざめるだろうし、可愛いと思ったのならそういうだろう。というか、そもそものリクエストは 『可愛い猫耳』 だったはずだし。
「えーと、…その反応わけわかんないんだけど?」
「だってずるいです…」
無理矢理顔を上げさせれば、これ以上もなく顔を赤くした恋人が泣きそうに目を潤ませている。
「猫耳なのにカッコイイとか、…臨也さんばっかり、ずるいです…」
「へ?」
自分の姿ならさっき見た。我ながらかなり情けない姿だったはずで、なのにカッコイイってなんなんだ。
「ないないない。そんなはずないから!」
「そんなことないですよ。その、似合ってますし」
「恋人の欲目はありがたいけど、無理だって。いい歳して猫耳とか、ホントカッコ悪いから!」
「猫っていうよりは大型の、…ヒョウとか、そんな感じですけど。セクシーっていうか、その、……」
「……」
「……」
なんだろう、これは。褒められてるんだろうか。褒められてるんだろうか!?
つられて顔が熱くなって、それを見た帝人の顔がまだ赤くなるのかというくらい真っ赤に染まる。それがまた恥ずかしくて、ここに鏡があれば、きっと臨也の顔も負けず劣らず真っ赤になっているのだろうなと思った。そのくらい顔が熱い。
「…え、と。じゃあ、俺、耳はずしてくる…」
「あ、は、はい。その、…いってらっしゃい…」
表情を取り繕うことさえ出来ずに、自室に逃げ込んで扉を閉める。背を預けたままその場に沈み込んで、臨也は、このあとどう出て行こうかと1人頭を抱えた。
 
 
 
作品名:そんな感じ? 作家名:坊。