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聖なる夜はあなたと2人で

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広いリビングを半分に仕切るように置かれたソファに腰をおろして、静雄はにぎやかな雰囲気を壊さないよう1人離れた場所でセルティが持ってきてくれた肉に齧りついていた。
向こうに設けられたテーブルの周りでは、既に食事を終えたワゴン組の4人と帝人が楽しそうにケーキを切り分けている。
狩沢や遊馬崎にいじられ、門田に助けられて胸を撫で下ろし、セルティに抱きつかれてはわたわと慌てている帝人は、大人ばかりに囲まれている状況でもなんだかんだと楽しそうだ。
静雄としてはため息の十や二十は吐き出したいのが本音だったが、同時にこれで良かったんだろうとも思ってもいた。
玉砕覚悟で告白して、なぜかすんなり受け入れてくれた帝人と付き合うことになったのはまだ残暑も厳しい頃。少しずつ、気温が下がるとともに2人の距離も近づいて、手を繋いだり抱きしめたり、額にキスをするくらいまではなんとかこぎつけた。
が、それ以上先となると、静雄にはどうしてもあと一歩が踏み切れない。相手はまだ高校生だから、傷つけたくないから。そんなふうにいい訳をして、けれど本当はただ帝人に拒まれることが怖くて目をそらしている。
折りしも世間はクリスマス一色。おまけに今年は3連休。
ここでもう少し踏み込んでみたいとそう思いつつ、静雄は結局クリスマスの予定を帝人に聞くことが出来なかった。連休に入っても、イヴになっても切り出せず、最後の1日になってもう無理だろうと諦めて。―――いたら、仕事中にばったり帝人に出くわした。
手にはプレゼントらしい小さな袋を抱えている。そうかプレゼントを用意していれば渡すという口実で会えたのかと、今更ながら気づいた。そう今更だ。クリスマスだというのに、静雄は恋人になにも用意していない。
これじゃ誘うわけにもいかねぇよな。
仕事が終わったらすぐプレゼントを買いに行って、それを手渡そう。
…そう思ったが、いきなり訪ねていいものか、それとも今の内に夜の予定を聞いておいた方がいいのか、その判断に迷った。今聞いて断られたら、きっとプレゼントすら渡すことが出来ずに今年が終わってしまう気がする。
どうするか悩んでいると、帝人の方から誘いが来た。曰く、「クリスマスなのに予定もなくて、1人じゃ淋しいので一緒にご飯食べませんか?」だ。
一も二もなく同意して夕方に改めて待ち合わせて、さあどこへ行こうかと歩き出すとしたところでセルティにばったり会って、クリスマスパーティーに誘われてしまった。『しまった』と言うのは失礼かもしれないが断りきれずに招かれて、―――そして今に到る。
2人きりのクリスマスは泡となって消えたが、帝人が楽しそうにしているならそれでいい。それでも一応恋人同士なのだから、パーティーが終わったら送っていって、そこでプレゼントを渡そう。
…と思っていたら、突然プレゼント交換の開始が告げられた。とはいえ、急遽参加することになった静雄と帝人は、当然そんなものなど用意していない。
「あの、…僕、なにも持ってなくて」
『急に誘ったんだ、必要ないさ。帝人は新羅の分を貰えばいい』
「そんなのダメですよ! 僕抜きで交換してください」
『いや、私は帝人にプレゼントしたいんだ』
「あ、じゃあ私もみかプーにあげる~」
「じゃあ俺も」
「こいつらにやっても仕方ねぇしな。これもやるよ」
「気に入ったら言ってくれ。瑠璃ちゃんのCDなら、いくらでも無料で焼いてやる」
「セルティのは別に用意してあるし、…まあいちばん年少ってことで、はい」
「ちょ、ダメですダメです! ていうかこれもう交換じゃないですよね!?」
参加者全員からプレゼントを渡されて慌ててぶんぶんと首を振る帝人に、静雄はなんとか落胆を押し隠した。
仕事中に会った時、帝人は確かに小さな袋を抱えていた。が、夕方に待ち合わせた時には確かになにも持ってはいなかった。あるいは鞄に入れてるのかと思っていたのだが、家に置いてきたのだとすれば、…つまりあれは、静雄に渡す為の物ではなかったということだ。
「…こんなんしかねぇけど、構わないか?」
ポケットに入れてあった小さな包みを取り出す。帝人に渡すつもりだったプレゼントだ。
帝人の持っていたものが静雄宛てではないのなら、これを渡すのは却って気を使わせてしまうだろう。だったら、彼らに乗じて渡してしまった方がいい。
静雄がそれを手の上に落とすと、帝人は一瞬泣きそうな顔を見せた。が、そうと気づく前に門田たちの方に向き直ってしまった。ありがとうございます、と1人1人に丁寧に礼を言って、ケーキをちまちまと口に運ぶ顔はもういつもの帝人だ。
切り分けられたケーキは綺麗になくなっていて、静雄はセルティが出してきたもう1個のホールを適当に切って自分の皿に盛った。残りは新羅が門田たちのテーブルへと移動させて、あっという間に2つ目のホールも空になる。
楽しそうな彼らを見ないよう、静雄はなんとなくもやもやしたものをケーキと一緒に飲み込んだ。そうして新羅の話を無視しつつ、セルティに相槌を打って適当に飲んでいると、なにかがどん、と飛びつく衝撃があった。顔だけで振りかえれば、真っ赤な顔をした帝人が背中にしがみついている。
「しずおさんなんて、もう、きらいですぅー」
「―――誰だ、こいつに酒飲ませたのは!!」
眠そうに瞬く瞳は心なしか潤んでいる。出来るだけそっと引き倒すと、まったく力の入っていない身体は簡単に静雄の腕に納まった。眼をこすりながらも嬉しそうに笑って、猫のように静雄の胸にすり寄ってくる。
「ちゃんとお酒だって言ってあったのに、目を盗んで飲んじゃったみたいなのよ」
「こいつがンな真似する訳ねぇだろ」
「いや、取り上げようとしたら一気に煽っちまって」
門田が申し訳なさそうに見せたのは、度数7度のカクテル缶だ。それ以外にも、どうやら彼らが空けた覚えのない缶が2本あるという。
 
 
 
 
作品名:聖なる夜はあなたと2人で 作家名:坊。