Distance × Friends
今日は日曜日。いつも通りの朝が来て、いつも通り太陽が手兵船から、性懲りもなくやってくる。俺はいつも通りコーヒーを入れて、遅い朝食を食べる。瞬きをして、スケジュールを確認する。スケジュール帳には何の文字も書かれていない。大体スケジュール帳に何にも書いていないなんていうのはおかしいように思われるが、しかしこれが現実だ。会社では別のスケジュールを作っていて、こちらはプライベート用である。プレイステーション3をつける。あきてWiiをつけ、また飽きて、Xbox360をつける。結局飽きて、外食しに外へ繰り出してみる。定期券圏内の駅のビルに入り、安いランチを食べる。今日はナポリタンが安いのか。そんなら食ってみるか。まあまあの味だな。本屋によって、CDショップによって、洋服屋で来季のカジュアル服を確認し、持っていた金で買える分は買って置いておく。電車に乗って、帰り、誰もいない部屋に「ただいま」という。電話がかかってきて、会社の人間に、来週の予定が変わったということを言われる。それを仕事用のスケジュール帳にメモをして、それから冷蔵庫に入っている野菜を使って簡単な夕飯を作る。
テレビをつけると恋愛ドラマをやっていた。B級アイドルがB級アイドルに告白をして、そしてハッピーエンド。余りに淡々と事が運ぶ。その先は何も語られない。告白してそれがオッケーならハッピーエンドなのだ。…ふざけているというか。実際恋愛というものはそのあとが重要なのだ。オッケーだとかそんなことでピンク色のシーンに持ち込んで行ってしまうドラマはただ夢を見せる、というか、アイドルをかわいく見せて売るための媒介というか。砂糖をそのまま食うわけにはいかないから、砂糖の味を得るためにかりん糖やケーキを作るようなものだ。そんなことがこの社会ではあまりに多すぎる。「この参考書はいいんですよ」って言ったって売れないから、他の参考書に差をつけるために問題集だの疑問解決本だの暗記帳だの、参考書傍用ノートだとか、ひどい場合には参考書の参考書らしきものがあるくらいだ。そんなもの、本当にすごい参考書なら全部一冊で済むはずではないか。量売ることが目標なのか。
恋愛、か。ふと隣を見る。誰もいない。いるはずもない。もしいるように見えたら、俺は霊視ができるのか、頭のねじが数本とれたか、何処かで違法薬物を飲まされたか、のどれかだろう。ここにはだれも、誰もいない。冷蔵庫を開ける。「…馬鹿だなあ」また買ってきてしまった。自分が好きじゃない桃味の焼酎。自分が好きなのはパイナップルやライムの味だというのに。勿論その味もあるが、貧乏性の俺は買ってしまったからには、と桃味を飲み下す。…やっぱり好きになれない。香りはいいのに味は余ったら過ぎてもう何だこれは。
彼女は、今どうしているだろうか。そこそこのプロポーションだったし、それなりの男に嫁いでいるんではないか。それか、いまでも働いているか。どっちみちもうここにはいない、だろう。メールもしばらくはやり取りしていたが、俺が返信しなくなってからうやむやになった。もう何年だろう。つい昨日のような気もしながら、しかしそれは3年前なのだ。
あの日はすべてがスロー再生された。俺が言った一言が彼女の心のダムを決壊させた。それが一番だった。それ以外に正しいルートはなかった。彼女に言う言葉は、彼女にとっていて番耐えがたいことだったし、俺なんかはもっと耐えがたくて、現にその翌日会社だというのに、熱があることにして休んだくらいだ。でもそれが一番筋が通っていて、お互いに損をしないやり方だった。妄想するしかないって、その気持ちが俺にとっては嫌だった。針よりも太く、鉛よりもひどい苦しみが一度に心臓に当たる。彼女が崩れ落ちながら、疑問を呈する。そうするしかないの?そうするしかないんだ。何でそんなことがいえるの?仕方がないんだ、これは運命だから。運命なんてふざけないでよ。じゃあこの運命を壊すことができるというのかい。できるかもしれないじゃない。そんなことができるならやっているさ。本当にやれることをすべてやったの?すべてやったさ、もちろん、だけれどこのままでいることはできない。
そうやって2,3時間、いや5,6時間やり取りを交わしただろうか、その間ずっとあいつは泣き続けた。この気持ちをどうしても受け入れてもらえない。圧迫された、俺はこうだ。蓋のある箱を用意して、この中に猫を一匹入れる。箱の中には猫の他に、放射性物質のラジウムを一定量と、ガイガーカウンターを1台、青酸ガスの発生装置を1台入れておく。もし、箱の中にあるラジウムがアルファ粒子を出すと、これをガイガーカウンターが感知して、その先についた青酸ガスの発生装置が作動し、青酸ガスを吸った猫は死ぬ。しかし、ラジウムからアルファ粒子が出なければ、青酸ガスの発生装置は作動せず、猫は生き残る。一定時間経過後、果たして猫は生きているか死んでいるか。俺が猫だ。彼女の中で俺は死んだのか生きているのか、それがよくわからないが俺は死んだ方に賭けた。
ずっと言葉を交わして、彼女はあきらめたように俺に抱きついてキスをして、それから荷物をまとめてこの部屋を出ていく。それでも彼女は振りかえろうとした。振り向かないで歩きだすんだ。それしかもうないんだ。間違ったことを言っているか?だって俺に未練なんか残したまま誰が幸せになれるんだ。何もないさ、この場所には。お前はただ、鎖を打ち破って俺の心の奴隷だった時代から解放されたのだ。何故素直に喜べない?何故俺から解放されないことを望む。お前はもうここから出て行っていいんだ。俺の狭い部屋、俺と密着したこの世界から出ていけばいい。
俺は本当ならこれはしたくなかった。しかしこうするしかない。そうでなくてはお前は幸せになれないんだ。だけどこれを言うには相当の勇気が必要だった。ずっと何も言えず、ただ俺は苦しいと思うこの気持ちを隠し通すばかりだった。なんだというのだ。もうこれで終わりにしてしまおう。この海へ飛び込んでいくがいい。俺の壊れたアナログ時計の中から出ていけば、デジタル時代の大波に飛び込めば、最初は反発するだろうが、お前のような頭がいいやつならここから出ていくことができるさ。あいつは走って終電に乗り込んだ。そしてあいつは実家に戻った。
テレビをつけると恋愛ドラマをやっていた。B級アイドルがB級アイドルに告白をして、そしてハッピーエンド。余りに淡々と事が運ぶ。その先は何も語られない。告白してそれがオッケーならハッピーエンドなのだ。…ふざけているというか。実際恋愛というものはそのあとが重要なのだ。オッケーだとかそんなことでピンク色のシーンに持ち込んで行ってしまうドラマはただ夢を見せる、というか、アイドルをかわいく見せて売るための媒介というか。砂糖をそのまま食うわけにはいかないから、砂糖の味を得るためにかりん糖やケーキを作るようなものだ。そんなことがこの社会ではあまりに多すぎる。「この参考書はいいんですよ」って言ったって売れないから、他の参考書に差をつけるために問題集だの疑問解決本だの暗記帳だの、参考書傍用ノートだとか、ひどい場合には参考書の参考書らしきものがあるくらいだ。そんなもの、本当にすごい参考書なら全部一冊で済むはずではないか。量売ることが目標なのか。
恋愛、か。ふと隣を見る。誰もいない。いるはずもない。もしいるように見えたら、俺は霊視ができるのか、頭のねじが数本とれたか、何処かで違法薬物を飲まされたか、のどれかだろう。ここにはだれも、誰もいない。冷蔵庫を開ける。「…馬鹿だなあ」また買ってきてしまった。自分が好きじゃない桃味の焼酎。自分が好きなのはパイナップルやライムの味だというのに。勿論その味もあるが、貧乏性の俺は買ってしまったからには、と桃味を飲み下す。…やっぱり好きになれない。香りはいいのに味は余ったら過ぎてもう何だこれは。
彼女は、今どうしているだろうか。そこそこのプロポーションだったし、それなりの男に嫁いでいるんではないか。それか、いまでも働いているか。どっちみちもうここにはいない、だろう。メールもしばらくはやり取りしていたが、俺が返信しなくなってからうやむやになった。もう何年だろう。つい昨日のような気もしながら、しかしそれは3年前なのだ。
あの日はすべてがスロー再生された。俺が言った一言が彼女の心のダムを決壊させた。それが一番だった。それ以外に正しいルートはなかった。彼女に言う言葉は、彼女にとっていて番耐えがたいことだったし、俺なんかはもっと耐えがたくて、現にその翌日会社だというのに、熱があることにして休んだくらいだ。でもそれが一番筋が通っていて、お互いに損をしないやり方だった。妄想するしかないって、その気持ちが俺にとっては嫌だった。針よりも太く、鉛よりもひどい苦しみが一度に心臓に当たる。彼女が崩れ落ちながら、疑問を呈する。そうするしかないの?そうするしかないんだ。何でそんなことがいえるの?仕方がないんだ、これは運命だから。運命なんてふざけないでよ。じゃあこの運命を壊すことができるというのかい。できるかもしれないじゃない。そんなことができるならやっているさ。本当にやれることをすべてやったの?すべてやったさ、もちろん、だけれどこのままでいることはできない。
そうやって2,3時間、いや5,6時間やり取りを交わしただろうか、その間ずっとあいつは泣き続けた。この気持ちをどうしても受け入れてもらえない。圧迫された、俺はこうだ。蓋のある箱を用意して、この中に猫を一匹入れる。箱の中には猫の他に、放射性物質のラジウムを一定量と、ガイガーカウンターを1台、青酸ガスの発生装置を1台入れておく。もし、箱の中にあるラジウムがアルファ粒子を出すと、これをガイガーカウンターが感知して、その先についた青酸ガスの発生装置が作動し、青酸ガスを吸った猫は死ぬ。しかし、ラジウムからアルファ粒子が出なければ、青酸ガスの発生装置は作動せず、猫は生き残る。一定時間経過後、果たして猫は生きているか死んでいるか。俺が猫だ。彼女の中で俺は死んだのか生きているのか、それがよくわからないが俺は死んだ方に賭けた。
ずっと言葉を交わして、彼女はあきらめたように俺に抱きついてキスをして、それから荷物をまとめてこの部屋を出ていく。それでも彼女は振りかえろうとした。振り向かないで歩きだすんだ。それしかもうないんだ。間違ったことを言っているか?だって俺に未練なんか残したまま誰が幸せになれるんだ。何もないさ、この場所には。お前はただ、鎖を打ち破って俺の心の奴隷だった時代から解放されたのだ。何故素直に喜べない?何故俺から解放されないことを望む。お前はもうここから出て行っていいんだ。俺の狭い部屋、俺と密着したこの世界から出ていけばいい。
俺は本当ならこれはしたくなかった。しかしこうするしかない。そうでなくてはお前は幸せになれないんだ。だけどこれを言うには相当の勇気が必要だった。ずっと何も言えず、ただ俺は苦しいと思うこの気持ちを隠し通すばかりだった。なんだというのだ。もうこれで終わりにしてしまおう。この海へ飛び込んでいくがいい。俺の壊れたアナログ時計の中から出ていけば、デジタル時代の大波に飛び込めば、最初は反発するだろうが、お前のような頭がいいやつならここから出ていくことができるさ。あいつは走って終電に乗り込んだ。そしてあいつは実家に戻った。
作品名:Distance × Friends 作家名:フレンドボーイ42