クリスマス連続短編集
「とまぁ、そういうわけであの子たちの目の前で一芝居打ってきたの。正直な思いを多少無理矢理にでも引き出せば、仲直りも早いでしょ」
「その辺は聞いたから知ってる」
そう言ったアイスくんだけど、その顔は納得していない。じっと考え込んでから、彼は一つの質問を投げかけた。
「それで良かったの？」
「何が？」
「ロシアは、悪役のままでいいの？」
「僕？ 僕は昔からそういう性格だったから。今さらいい子ぶったって仕方ないかな、って」
アイスくんは下唇を強く噛んだ。爆発しそうな感情を抑えているのだろうか。
「でも！ でも、僕は納得できない」
「自分の恋人が悪い人だったらいや？」
「違う。ロシアが誤解されてるのが嫌なんだ。こんなにいい人なのに……」
「違うよ。僕は本当にいい子じゃなかった。力を使うことでしか、僕は周りとつながれなかったんだ。それを変えてくれたのが君なんだよ、アイスランド」
「でも……！」
「僕のかわいい天使さん。君さえいてくれれば、僕は満足だから。そういうことでいいでしょ？」
僕の大きな手の中にすっぽり入ってしまうアイスくんをぎゅっと優しく抱きしめる。
あ、こうしてるとアイスくんってまるで――
「お人形みたい♪」
「……あったかい」
ふふと笑っていると、そうつぶやくのが聞こえた。それから少し間を置いて、またアイスくんの唇が動く。
「何か、すっごく安心する……」
そして、すぅすぅという小さな寝息が聞こえ始めた。
「うふふ、寝顔もかわいいなぁ」
僕の家に着くまで、あとほんの少し。
ちょっとだけ遠回りしてくれないかな、と思った。
作品名：クリスマス連続短編集 作家名：風歌