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僕たちの師匠

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今日も追っ掛け行ってるって、ほんとなの!?という少女の言葉に、アッシュは思わずスープを吹き出した。
ごほごほ、とアッシュが咽ていると、ディストはようやく、数列離れた席に座るアッシュに気がついた。
「おや。丁度良いところに丁度良い人がいましたよ。彼に聞いてみてはどうですか。なんたって彼は、あのヴァン総長の愛弟子ですからね」
「え〜。あの人怖そうだから、やだぁ〜」
悪気があるのか無いのか、少女はそう言うと、ディストの影に隠れた。
アッシュはスプーンを置くと、がたん、と音を立てて立ち上がった。
足音も荒く、少女の前に立つ。
「おい、お前――」
「え」
アッシュの醸し出す剣呑な空気に、何かやばい、と少女の顔に焦りの色が浮かぶ。
しかし。
「――今の話は、本当か?」
「へ?」
「今の話は、本当か、と聞いている!」
アッシュの問い掛けに、少女は困った様に言葉を返した。
「ほんとかどうか、わかんないから私も聞いてるんだけどー・・・・」
それは騎士団中で噂されていることらしい。
みんなが知っていること。
そう言われて、アッシュは大きな衝撃を受けた。

――知らなかった・・・・!!

自分だけが、知らなかった。
改めて、ヴァンのことを何も知らない、と知らされたようなものだ。
アッシュは、がっくりと肩を落とした。
「――他には、無いのか?」
「総長の噂?」
「ああ・・・・」
「そうだねぇ〜」
このとき、アッシュは全く気づいていなかった。
「えっとね〜」
少女の顔に、にやり、と笑みが浮かんでいることに――。





「う、嘘だ!」
「嘘じゃねぇ!」
ルークの動揺を、アッシュは一言で切り捨てた。
「ヴァンの野郎はな!猫舌で!酒乱で!腰痛持ちで!毎日お灸を据えないと、足腰立たねぇんだよ!」
「師匠がそんなもぐさ臭いわけないだろう!」
「うるせぇ!――それだけじゃねぇぞ。あいつはな、夜な夜なドレスを着て、ワルツに合わせて踊ってるんだ・・・・!」
「嘘だーーーーーーっ!!!」
ルークは耳を塞いで叫んだ。
「師匠に着られるドレスなんて、あるわけねぇよ!!」
嘘だ嘘だ、と喚くルークを、アッシュは鼻で笑った。
「信じたくなくとも、それがヴァンって男なんだ!!」
分かったか、屑!というアッシュを、少し離れた場所から、複数の目が見つめていた。
「嘘よ・・・・兄さんが、そんな――・・・・」
ティアがふらり、とよろめく。
「アニス、本当ですか?」
本当ならば、自分達の戦う相手は、大した変態だ。
「うーん・・・・そういう噂は、あるにはありましたけどー・・・・」
ジェイドに問われ、アニスは腕組みをして唸った。
「ほとんどが捏造ですよ。捏造というよりは、みんなが調子に乗って噂から噂をどんどん作っていっちゃった、って感じかな。みんな好き勝手に想像して、遊んでたんです」
「なるほど。――で、アニスも好き勝手想像していた口ですか?」
ジェイドがにやり、と笑うと、アニスもにやり、と口の端を歪めて返した。
「最初はちゃんと、人から聞いた噂を確かめてたんですけどー」
口に手を当てて、うふふ、と笑う。
「途中で、なんかやけに必死こいた人に付き纏われちゃってー。ヴァン総長の噂を知りたい、って言うからですね、面白いから、色々でっち上げて吹き込んであげちゃました☆」
アニスは、きゃはっと笑った。
「その人、その時に真剣に信じ込んじゃってたんですけどー、今は・・・どうなんでしょうねぇ・・・・」
アニスは、遠くに見えるアッシュに目を向けた。
ルークとアッシュは、未だに言い争いを続けている。
「ヴァンはな、スイカ並のグラビアアイドルの追っ掛けやってんだ!」
「そんな――!わざわざ追っ掛けなくても、メロンなら傍にいただろうに・・・・師匠っ!!」
ジェイドは、そんな二人のやり取りを見つめながら、
「――きっと、まだ信じていますよ、その人」
と、肩を竦めて首を振るのだった。
作品名:僕たちの師匠 作家名:Miro