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臨帝静学園天国【冬コミ新刊サンプル】

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★★★ 第1接近遭遇 ★★★



 雲一つない澄み渡る青空の中、一人の少年が片手にゴミ箱を持って歩いていた。
 えっと、この裏庭をつっきった奥だったっけ?
 少年の名は竜ヶ峰帝人。幼馴染の誘いに乗って埼玉の片田舎から池袋に上京し、つい先日、ここ来良学園の入学式を迎えたばかりのピカッピカの新1年生である。そんなピカッピカな少年が汚いゴミ箱片手にさ迷い歩くのは単純明快な理由で、入学早々掃除当番に当たってしまった帝人が、自らゴミ捨てに立候補したからだ。なので、帝人の目指す先はゴミ焼却炉であるのだが、担任教師の説明が適当だったせいなのか、今一つ場所が掴めない。帝人が探り探り裏庭を歩いていると、前方から話し声が聞こえてきた。
 あ、人がいる。良かった。先輩だったら、場所分かるよね。
 帝人が声をかけようと思ったその時、耳に飛び込んで来たのは。
「……なところが好きなのっ、だから、ね、お願いっ! 私とつき合ってっ!!」
 帝人にとって衝撃的な言葉であった。
 ぇえええっ!? な、何、こ、告り現場!?
 思わず、帝人は近くの樹の影に身を潜めてしまう。
 うわっ、うわ、どうしよう!? って、どうしようも何もないよね、引き返そう!
 帝人ができるだけ音を立てずに身を翻そうとした時、場にそぐわない甲高い笑い声が響き渡った。
 え、何事!? と帝人が身体を竦ませていると、「冗~談は、君の顔だけにしてくれない」という信じられない言葉が耳に入ってきた。な、なんだろ。空耳かな? 帝人は固唾を呑んで聞き入ってしまう。
「なんで俺が君なんかとつきあわなきゃいけないのさ。君が俺に釣り合うとでも思ってるわけ? だいたいさっきから聞いてりゃ、愚昧極まりないことばっかり言っちゃってさぁ、馬鹿丸出しだよね、恥ずかしくないの?」
「なんでそんなこと言うのっ、ひどい。私はただ」
「俺が頭が良くて将来有望だから、お金を持っててお財布にちょうどいいから、かっこいいから横にいれば自慢になるから、好きなんだよね。つきあいたいんだよね? 打算的な子も嫌いじゃないけど、あからさますぎるのは食傷しちゃうなぁ。もうちょっと上手く隠してくれなくちゃ」
「そんなっ、私そんなこと言ってないっ!! そんなつもりない! 純粋に貴方のことが好きなのよっ」
「そうかなぁ。とてもそうは思えないんだけどねぇ」
「好き、好きなのっ!! どうしてそんなこと言うの。ひどい、ひどいよ」
 すでに涙声になっている女生徒の声に帝人はだんだん居たたまれなくなってくる。修羅場だ。このまま立ち聞きするのはマズイと、理性では素早く立ち去らなくてはと思うのに、好奇心旺盛な感情がついつい最後まで聞きたがって足が動こうとしない。
「ひどいよ~、俺は。そんなことも知らないで君は俺に告ってきたわけ? それこそまさに、君が俺の姿形しか見てなかった証拠だってもんじゃないの? そんな子に好きだって言われても迷惑でしかないね」
「わ、私の気持が迷惑だって言うのっ」
「迷惑だね」
 うわっ、バッサリ言ったーっ! ホントに迷惑そうだ。なんか凄い。人の好意をこうまでバッサリ切り捨てられるとは。
「それともなに、好きだって言われて俺がありがたがるとでも思ってたわけ? 馬鹿じゃないの。そんなわけないじゃん。どこをどうしたらそんなおめでたい発想になるのかなぁ。君みたいな子に好かれたって嬉しくもなんともないんだよ。わかったらさっさと俺の前から消えてくれないかな。もうウンザリなんだけど」
 ひどっ。何もそこまで言わなくたって。ほら、やっぱり。
 帝人の予想通り女生徒は号泣し始めて。
 え、「うるさいな」って、そんな追い打ちかけるようなこと言わなくても。あ、とうとう彼女泣きながら逃げ出しちゃったよ。って、危なかった。
 身を潜めていた木の横を女子生徒が走り去っていったので、帝人は、ばれなくてよかったと冷や汗をかく。あとは男子生徒の方も帝人に気づかず退場してくれればと、息を潜めてじっと待っていると。

「誰かなぁ。そこに隠れてるのは。分かってるんだよ。さっさと出てきなよ」