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 アザディスタン王国を内乱の拡大から救ったあと、刹那はずっと一人の男のことが気になって仕方がなかった。
 典型的な欧米人という顔立ちに金色の髪。白い肌と緑色の瞳を持ち、獣のように鋭い洞察力で刹那の嘘を見破った、あの男。
 こっそりとヴェーダにアクセスして、引き出せるだけの情報も入手した。
 名前はグラハム・エーカー。階級は中尉。年齢は二十七歳。ユニオン軍に所属し、生まれも育ちもアメリカ合衆国のアメリカ人。MSWAD本部に勤務する、どうやらエリートのようだった。
 何故、気になるのかといえば、一つは借りがあるからだ。アザディスタンの内乱を最小限で防げたのも、彼がリークしてくれた情報があったからこそである。もっともそれは、刹那だから導けた程度の小さな情報だったけれど、逆にその狭さが幸いしてピンポイントで答えに直結できたのだ。
 あの段階で教えてもらえて本当によかった。少しでも遅かったら、手遅れになっていたかもしれない。
 彼のことが気になるのは、その借りがあるからだと、刹那は思っていた。
 時が過ぎ行くにつれて頭の中を占める割合が大きくなっていくのも、借りを返すことができない身分を気に病んでいるからだと思っていた。
 だから、あんなことを言われて、つい意識しすぎてしまったのだろう。あるいはパニックになったというべきか。
 今、刹那の目の前には、グラハム・エーカーがいた。
 それも、バスローブを一枚羽織っただけの姿で、ベッドの上にぐったりと横になっているのだ。
 さぁ、好きなようにしてくださいと言わんばかりの無防備な状態で横たわる身体の足元にいた刹那は、しかし、ベッドの上で思わず正座したまま、この状況をどうしようかと悩んでいた。
作品名:Private 作家名:ハルコ