二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

爺の我侭

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
「俺たち、つきあってるよな!?」
「え?」
「え!?」

そんなこんなで、年下の彼氏ができました。




飼い猫のたまを膝に乗せて縁側で寛いでおりましたところ、遠くから、どどどど、という地鳴りが聞こえて参りました。いえ、地鳴りかと思ったものは違いまして、ドップラー効果を効かせながら突撃してくるアルフレッドさんの足音でした。
「ぎぃ~ぐぅ~っ!!!」
縁側におりますことが察知されていたものか、門に回らず生垣を飛び越え、その勢いのまま抱きついてこられました。ちなみに、たまはとっくに避難済みです。
それにしても、せっかくの可愛いお顔が涙と鼻水でべたべたです。
「はいはい今日はどうなさいました」
「俺、俺、菊に愛されてないんじゃないかってっ~!!!」
ようよう懐から手拭いを出して、顔をぬぐってさしあげます。ついでに、お鼻もチーンと。
「大丈夫、そんなことありませんよ。また、どうしてそんな風に思ったんですか?」
首にかじりつかれたまま、幼子を寝かしつける要領でとん、とん、と背中を叩いてあげましたら、すぐに落ち着いてこられました。
「うん、聞いてくれよ~、アーサーが、お前は菊に愛されてないんじゃないかって言うんだ!!」
「ちょっ、どうしてアーサーさんとそんな話に!」
お付き合いすることになったのは、ほんの数日前ですよ?何を言いふらしてくれてるんですか、この子は!
「こないだの話だって『それは付き合ってるって言わねぇよバカ!』って言われたのがきっかけだったからさ、正式に菊とつきあうことになったんだぞ、って、報告しに行ったんだけど…」

*************************************

「どうせまた、『反対意見は認めないんだぞ☆』なんて言って、無理矢理頷かせたんだろーが?」
カウチに腰掛け、鷹揚に構えたアーサーは、ふん、と鼻を鳴らして言い放った。
頭ごなしに否定され、アルフレッドは大いにむくれた。
「違うよ!ちゃんと、菊が好きだ、付き合ってくれって言ったんだぞ!」
「ほぉう。で、菊は何て?頷いただけとかなんじゃねーの」
「違うね!『私も、お慕いしております』って、顔を赤くして俯いちゃって、すっごく可愛かったんだぞ!」
今度はアーサーが、む、と言葉を呑む。それを見て、いい気味だ、とアルフレッドは溜飲を下げる。
「まったく君はそうやって疑ってばっかり、全く根性ひねまがってるよな!事実なんだから、いい加減素直に認めたらどうなんだい」
「認めるも何も、普段のお前の行いが悪すぎんだよ。我侭言い放題で、いっつも菊に迷惑かけてばっかだろうが。そんなんで信じろって方がおかしいんだよ」
「俺だって、ケーキとかゲームをプレゼントしたり、菊の好きな風呂に一緒に入ったり」
「風呂ぉ!?」
「そうなんだぞ。あと、一緒にディズニーに遊びに行ったり、菊のために色々考えてるんだぞ!」
アルフレッドのその言葉を、アーサーは、はっ、と、まるで、獲物の懇願を一蹴するマフィアのように鼻で笑い飛ばしてみせた。
「菊のために~なんて言って、それ、自分のやりたいこと押し付けてばっかゃねえか。じゃあ、お前は逆に、菊の我侭を叶えてやったことあるのかよ?」
「いや、菊は、何かして欲しいとか言わないから…」
「はっ、そんな一方通行で恋人同士なんてよく言えるぜ!やっぱり、お前の我侭に抵抗すんのが面倒で、嫌々合わせてくれてるんじゃねぇの?そういうのは愛されてるって言わないんだよばーか!」
「そんなことないんだぞ!適当なことばっかり言わないでくれよ!」
その晩、帰宅したアルフレッドは、アーサーのセリフを思い出し、ベッドの上でくやしさに身悶えた。
思い返せば、菊に色々してもらう一方、菊の我侭は聞いてあげたことがない。アーサーの言葉に根拠などない、そう自分に言い聞かせたが、心配にいたたまれず家を飛び出したのだった…

*************************************

「おやおや」
ふふ、と思わず笑い声が漏れてしまいました。
ちなみに彼は話しながら、頭を私の腿に移動されていました。いわゆる膝枕ですね。
「笑い事じゃないんだぞ!」
「ええ、分かっておりますよ、アルフレッドさんがあまりに可愛いのでつい」
「子ども扱いもやめてくれよ…」
こしのある金髪を梳き、頭を撫でながら、言葉を紡ぎます。
「どうも、言葉や態度に出すのが気恥ずかしくて…不安にさせてしまいましたね。すみません。でも、私はね、あなたの笑顔が一番嬉しいんですよ。あなたの我侭だって、まあ叶えてさしあげられなくて本当に困る時もありますけど、叶えてあげられたら、あなたの笑顔が見れるじゃないですか。だから、我侭を言われるのも、嬉しかったりするんですよ。」
「きく…」
アルフレッドさんは今にも泣き出しそうに目を潤ませ、私の手を握りました。涙目で見上げるそのお顔、これが本物の天使って奴ですねー!とうっかりテンションが上がりかねない程の可愛さです。
「じゃあ菊、俺とセックスしてくれよ!!」
「はァ!!?」
うっかり声が裏返りました。
「何か今、聞き間違えたようで…」
「だからセッ」
「うわああ!」
むご。とっさに彼の口を両手で押さえました。
そんな天使のお顔からそんな単語は聞きたくなかったです!
「どどどどうしてまたそんな」
おつきあいすることになった日も、触れるだけのキスまでだったのに。
「だってアーサーが」
「またアーサーさんですか!!」
「うん、聞いてくれよ!ひどいんだ!」
私の手を退かせて、むくりと起き上がり、言い募ります。
「アーサーに男同士のやり方を聞いたら、俺は男には興味ないって」
「ちょっとあなた何てことを人に相談しちゃってるんですか!!?」
次にお会いした時、まともにお顔を見れる気がしません。あああもう、引きこもりたい、鎖国したいです!!
「そんなの嘘なのは知ってるんだ、同盟時代から、菊の事が好きだったのは丸バレだからね!全く、告白もできなかったヘタレの癖に、偉そうなんだよ全く!」
「いやいや、そういう意味で好きだったとかありえませんから。色々と便宜を図って下さいましたけど、いいお友達だったんですよ」
でも、もしそれが本当だとしたら、片思いの相手と恋人になったあなたが相談しに行くとか、すごいAKYです。
「菊は鈍いにも程があるんだぞ!まあとにかく、キスだってしたんだぞ、って言ったら、キスなんて挨拶レベルだ、恋人だって言い張るならセックスぐらいしてから言えって」
本当に、何から何まで筒抜けのようで…。ぐったりしてきました。

作品名:爺の我侭 作家名:雨蛙屋