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爺の我侭

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女性との経験は数あれど、男性に思いを寄せた経験はなかったアルフレッドは、アーサーに助けを求めた。
「だって、やり方が分からないんだよ。どうすればいいのか教えてくれよ」
海を挟んだ腐れ縁に〈エロ大使〉と評されるアーサーなら絶対知っている、そう考えてのことだ。
「俺は男には興味ないからな!」
どっかりと足を広げて座ったアーサーは、自慢気にふんぞり返った。いばるところじゃないだろう、とアルフレッドはあきれて肩を落とした。
「ふむ、だが、やることは女と一緒だからな」
「全然違うだろ!」
「ばーか、女だって、使う所はひとつじゃないだろ」
そう言われたアルフレッドはその言葉の意味が理解できず、口を尖らせ首を傾げた。
「ま、なんだったら、なじみの店に連れてってやらんでもない。一から教えてやる。そうだな、二人で行けば二穴だってできるし、丁度いい。よし、早速手配しよう」
「Noぉお!!!」
いそいそと立ち上がるアーサー。じんわりと理解の追いついたアルフレッドは、うっかり情景を想像し、身震いした。ぶわっと全身が粟立つ。
「君は本っっ当に、気持ち悪いな!!!変態なのは知ってたけど、俺もここまでとは知らなかったよ!!変態が感染ったら大変だからね、俺は帰るよ!!」

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……いやはやどこからつっこんでいいのやら。
それにしても弟をセックスの場に誘うだなんて。私はずっと、弟として気にかかるんだとばかり思っていたんですが、アーサーさん、そういう意味でアルフレッドさんのことが好きだったんですね…。ほらやっぱり、私のことが好きだったなんて、ありえないじゃないですか。
今度、弟さんを奪ってしまって申し訳ありません、って、謝りに言った方がいいでしょうか。
そんなげんなりしている私を気にせず、アルフレッドさんの話は続きます。
「でもアーサーのおかげで、なんとなくだけど、どうすればいいのかは分かった。でも、なんとなくじゃあヒーローの俺にもきっと無理だ。俺の知ってる限り、アーサーがダメなら、次は同じエロ大国のフランシスだろうと思って」
「ちょっと!フランシスさんにまで!?」
「そうだよ。菊とセックスしたいからやり方を教えてくれって」
「ああぁ…」
もう、何だかどうでも良くなってきました…

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アーサーの家を逃げ出したアルフレッドは、海を渡り、フランシスの邸宅を訪れた。そして、アーサーにしたものを同じ質問を投げかけた。
「へ~え、それをお兄さんに聞いちゃうんだ」
勿体ぶったフランシスの表現に、アルフレッドは神経を逆撫でされ、不機嫌さを隠さず言葉を返した。
「ああ。エロい事なら、むしろアーサーよりフランシスの方が詳しいだろ」
「そこは、愛の営みって言ってくれよな。まっ、お前の見立ては間違ってない。愛に関してはお兄さんエキスパートだからね!」
「はいはい」
「んーでも、そういうことなら菊ちゃんも相当詳しいはずなんだけどね~」
「えっ」
菊はアルフレッドの知る限り、彼のキス一つで赤面するほど晩生だった。アルフレッドは想像もしなかった評価に驚愕し、動きが止まる。どういうことだ?
「でも、男として、恋人に任せっきりなのは嫌だってー気持ちはよぉーく分かる。ちゃんと自分でキモチよくしてあげたいよな~。ん~、アルもオトナになったねぇ。」
フランシスは、鼻歌が出そうな程上機嫌になり、歌うように言う。
くねくねとした仕草で顔を覗き込まれたアルフレッドは、は、と我に返り、いらいらと続きを促した。
「いいから、具体的にどうすればいいのか、教えてくれよ」
「まあ焦らない。そうだなー、じゃあ、先にバスルームに行って待ってな。準備してくから」

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「それは危ない!!」
思わず飛び上がってしまいました。
それ、私の天使がおいしく頂かれちゃうじゃないですか!ま、まさかそのまま…
「でも、これはおかしいって気が付いてさ。あいつが引っ込んだ隙に帰ってきたんだ」
「よかった…」
はああ、爺の心臓に悪いです。
「もう、そういうことは、他人に聞いたり、言いふらしたりしないでください」
「でも、」
膝立ちで、彼の頭を抱きしめました。
「大事なことは、二人だけの秘密にしたいんです。…爺の我侭、聞いてはいただけませんか?」
作品名:爺の我侭 作家名:雨蛙屋