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葎@ついったー
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die vier Jahreszeite 011

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011



...in Abstanden


すやすや,ぐっすり,俺はまだそのとき気持ちえー夢ん中やった。
ロヴィが抱え込む俺の腕を跳ね除けてベッドから出て行くんはわかったけど,トイレでも行くんやろ,とそのままにした。
前にそれ邪魔してエライ目に合うたことあるしな。
…アレは酷かった。思い出しても,イロイロと酷かった。

うとうとしながらため息漏らして,ぽっかり空いてしまった腕の中を惜しむように代わりに枕を抱き込む。
そのまますうっと眠りに落ちていって,しばらくの後。

〜〜〜〜〜ッ!!
ヤラレタ。
呼吸が止まった。
ほんまに何がしたいんコイツは!!!
と瞼の端からじんわり涙が滲む目で,痛む腹を押さえながら目を開けると,そこにはどこか怒ったような,いやちゃうな。
得意げって方が近いわ。
そんな顔で俺のことを見下ろすロヴィーノがおった。

「…何すんねん。息止まるかと思ったわ…」

瀕死の俺を見下ろして(態勢で云うとアレや。馬乗りってやつ)ロヴィーノは「さっさと起きろばかやろー!」とそのままの姿勢でまたぴょんぴょん跳ねよった。

「痛い痛い痛いって止めぇやほんとに!」
「起きろって云ってるだろー!」
「せやから何なん?まだ早いやろ。もう腹へったんか?」

細っこい腰を両手でガッと掴んで,とりあえずぴょんぴょんだけは止めさせる。
するとロヴィは,腰を掴む俺の手を,両手でばちん,と叩いて「雪だ!」と叫ぶように云った。

「…ゆき?」

ふん!と鼻息も荒いロヴィーノの顔を涙目で見上げる俺。
雪…ああ確かに昨日降っとったけど,……積もったんか。
そこまできてようやく頭ン中にまで血が巡り出したのか俺はロヴィーノが興奮する理由に辿り着いた。

雪が降った→積もった→雪だるま作れ!
そういうことらしい。
……別にええけどな。でもどうせやったらもうちょっとお手柔らかに,かわいく起こして欲しいんやけど。

「早く起きろよー!」
「…わかった。お前の気持ちはよーわかった。けどな?腹の上でジャンプするのは止め?前にも約束やって云うたよな?」
「知るかばーか」
「…ロヴィ?」

ぷい,と背けられる顔。
お前なぁ,いくら俺がお前にべったべたに甘いからって,そんな態度がいつまでも通ると思ったらあかんで?
俺は半分毛布に顔を埋めたまんま,胸ん中だけでため息を吐いた。
そしてそのまま――。

「やめろ!やめろよ!苦しい!あほー!アントーニョのあほー!」

ぎゃいぎゃい喚くロヴィーノを今まで被ってた毛布ですっぽり包んでそのまま押さえつける。
ナマイキ云うてもまだまだちっさいロヴィのこと。こんなん朝飯前や。

「俺はもーっと苦しかったんやで?腹が潰れるかと思ったし,息も止まった。なぁロヴィ,反省したか?」
「しるかーーーー!」

知るか,なのか,するか,なのか。
とにかく反省はしてへんらしい。
ああそ。
そっちがその気やったら泣いても知らんで?
ドエスな俺の登場や。

口の端っこでニヤとするなり,俺は毛布の間から左手を差し込んで,右手と身体全体でロヴィのちっこい身体を押さえ込んだまま触るそこかしこを擽り倒した。
毛布の中で絶叫。
苦しげにぎゃあぎゃあ喚く声。

「反省した?」
「し・ね・え!」
「…ほんまに意地っぱりやんなあ」

こちょこちょこちょこちょ。
毛布の下で暴れる身体。跳ね上げられた足が脇腹を蹴りつける。

「ロヴィ,降参は?」

返事はない。
ぽかすかと蹴りつける足がその答えってことらしい。
けどな?伊達に短いつきあいやない。
苦笑しながら押さえ込んでいた右腕を解いて毛布を剥ぐと,案の定じっと睨み上げてくる涙目とぶつかった。

「泣くんやったらとっとと降参しい」
「るっせえ」
「……ほんまに意地っ張りやんなあ」

云いながらひっくひっくと嗚咽を漏らす身体をぎゅ,と抱え込む。
暴れたせいで汗ばんで,額に張り付いてもーた前髪をやさしく剥がして,露になったでこにちゅ,と唇を押し当てる。

「馬鹿。馬鹿アントーニョ。お前なんかベッドから落ちて頭打て」
「……それどんな呪いや」

嗚咽に震える背中をぽんぽん,と叩いてやりながら,俺はカーテンの向こう,明るくなり始めた窓の方を見た。

「雪,積もったって?」

こく,と頷くロヴィ。

「ほな起きて,雪だるま作ろうか」

もう一度こくり。

「なぁロヴィ。反省した?」

こく,と頷きかけてぶんぶんと横に振られる小さな頭。
……ああそうかい。
がっくり項垂れながらも,宝石みたいなきれいな目玉に涙浮いとるの見てもーたらもうこれ以上のことはする気になれん。
結局いつもと同じ。俺の負けやんなあ。

あーだこーだ言い合いながらベッドから出て,服を着替える。
洗面所で顔を洗って,ロヴィに真っ赤なダッフルコートを着せてやり,その上にマフラをぐるぐる巻きつける。

「…くるしいぞばかやろー」
「我慢しい。寒いよりマシやろ?」

うう,と唸りながらも大人しくなったロヴィの頭をぽん,と撫で,自分も上着を着込む。
首に引っ掛けたマフラをぐるりと後ろに回してぎゅ,と結び,これで準備オッケー。
玄関から自分の靴とロヴィのスノー・ブーツを持ってきて庭に面した窓を開け放った。

「…なぁロヴィ?」
「なんだよ」
「確かに積もっとるけど,これやとちょおっと足りんと思うで?」

見渡す庭には確かに雪が積もっていた。
せやけどこれどう見たって積雪二センチから三センチってところやろ。
庭云うてもうちのはそないに広くないし,ロヴィが夢見る等身大雪だるま(ちなみに俺サイズらしい。戦え云われた。無理云うな)はどう考えても無理そうやった。

「…足りない」

ぼそ,と呟いたロヴィは,マフラに埋もれて顔は見えんかったけど声が悔しそうに揺れている。
あーわかった。ほんまにわかったからそんな声出さんといて。

「ま,とりあえずは出てみよか」

しょぼんとしてもーたちっさい頭をぽん,と撫で,俺は庭に降り立った。
さく,と音立てて踏みしめた雪はやっぱり三センチがええとこ。
小さい雪玉作って転がそうにも,すぐに庭の土がついてしまう。
しゃーない。こーなったら量より質や。