長男サンジ①
「コック見つけたきた。」
それはこのメリー号のクルーが待ちに待っていたもの。
航海を始めてから今までずっと探してきた。
だが、コイツだ!!という人物にはなかなか出会えなかった。
いくらお宝が手に入ろうが、いくら金が手に入ろうが、
そのほとんどが食費にぶっとんでしまう。
この船には胃袋モンスターが居るからだ。
節約節約の日々、どうにか食費を抑えたいがこの船にはコックが居ない。
簡単な調理をだけで食べれるものを買い込んだりしているとおのずと財布は空っぽに。
料理の腕を磨けば良いのだが、この船は呪われているのか問題ばかり。
身を守る術を覚えていくので精一杯なのだ。
そんな日々にもう限界を感じたナミがとうとうキレた。
今まで、航海士として忙しくしながら食事作りを頑張ってきたのだが、
いくらお金を貯めても、ぶんどっても、貯まらない。
そのことがかなりのストレスだったようだ。
「いい、ルフィ。よく聞きなさい。
コックを探してくるのよ。この船の新しいクルーとして。
それまでアンタの食事(肉)はナシよ!!!!」
ルフィはそれはもう必死に探し回った。
その分問題も多く持って帰ってきた。
それは言うまでもなく道のど真ん中で大声で「コックは居ないかーー!!」と叫べば当然、だ。
海軍からなんとか逃げ切り、ルフィの顔がよく分からないほど腫れ上がった頃。
メリー号に向かって小船が一隻近づいてきた。
「おーーーーーーーい!!」
「なに?」
「なんだ?」
小船に乗った男がこちらに向かって手を振りながら叫んでいる。
見たところ武器のような物は持っていない。
そんなところを確認したウソップがどうする?と聞くよりも前に船長が伸びて飛んでいった。
「あの馬鹿、今度は何よ。」
「俺はもう不安でたまらない。」
「楽しそうだな。」
「うふふ、そうね。」
「・・・・・。」
「てか、アイツそんな食べなくても元気じゃない。」
((((確かに・・・・))))
ルフィは小船に乗った男と何やら話していた。
その男は上に真っ白なシャツを着て下は黒いズボンに黒いエプロンをしていた。
腕にジャケットをひっかけポケットに手を突っ込んでいる。
もう片方の手は煙草を持っていて、白い煙が風に流れている。
肩につくほど金色の髪の毛が顔を隠していて表情は伺えない。
船の隅の方に置かれた白い袋はパンパンに膨れている。
そこからこぼれ落ちたものをウソップがゴーグルで確認すると全部煙草だった。
「・・なんか良い人には見えないんだけど。」
「・・・・・不良か。」
「カッコイイな。」
「「・・・ぇ」」
「・・・・・・。」
「うふふ、楽しくなりそうね。」
それぞれが各々感想を述べていると、話の中心であるルフィが戻ってくる。
その腕に小船に乗っていた男を抱えて。
「コック見つけてきた。」
「よろしくね。」
―――ちょっと待てーーー!!!!!
ナミとウソップの叫びが虚しく響いた。
その男の話によれば、店をクビになってしまい行く場所が無いというのだ。
だからこの船に置いて欲しい、と。
「・・・とりあえずまともなコックさんなのね?」
「そうだよお嬢さんv」
「だっだけど、クビってことはよう・・・」
「だろ?あんまりだよな!!・・・ったく俺店長だっつのに。」
「「「・・・・・・は?」」」
「「店長かスゲェな!!」」
「そう褒めるなって。」
「いやいや、ちょっと待ていっっ!!!!」
ウソップの突っ込みたい部分は色々あった。
まず、ナミとロビンを見すぎた!!
そして女に向けるその笑顔はなんなんだ!!!
てか店長!!!????
それにしたって店長がクビはありえねぇだろ!!!
「・・なんだ?えーーっと長いなぁ・・鼻。」
「ほっほっとけ!!!・・それより、なんで店長がクビになってんだ!!」
「あーーそりゃ、あれだ。
俺は夢があってな、それがこの世界の何処かにある海を見つけることなんだ。
それを見つけて来て下さいって追い出された。」
「・・・・・・そっそうか。」
「良い仲間じゃねーか。」
「・・・だろ?まぁ余計なお世話だけどな。」
そう言って笑う姿はとても不良なんかではなく。
この船にピッタリのコックじゃないかと皆が思った。
「よし、じゃあさっそく飯作ってくれ。」
「「「「・・・・おい!!!」」」」」
こればっかりは全員がツッコミを入れた。
「ルフィ、自己紹介がまだでしょう。」
今の話を聞けば、この船のクルー達はイチコロだった。
全員が『夢』という言葉に弱いのだ。
「私はナミ、この船の航海士よ。よろしくね。」
「俺はウソップだ。この船の裏の船長とは俺様だ。」
「俺はチョッパーだ。医者だぞ。」
「私は考古学者よ、ロビン。よろしくねコックさん。」
「・・・俺はゾロだ。」
「俺はルフィだ!!!!!」
「俺はサンジだ。よろしくな。」