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ろけ☆はん

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第3話


主人公目線で再生されるゲームのムービーと同じように、吉野のカメラもヒロインの顔から胸へと移ってゆく。
ムービーではこの後ヒロインが着ている薄手のガウンの胸のリボンを主人公がほどくのだが、あいにく両手がふさがっている。
連続していたシャッター音が途切れた瞬間、百井の手がガウンのリボンをつまむ。
吉野が驚いてカメラから顔を上げると、百井は頬を紅く染めて目をつぶっていた。
吉野は声をかける代わりに百井の熱演に応えてカメラを構えた。
細かな汗の粒をまぶされた肌は光を反射して一層白さを増している。
その白い肌に包まれたふたつの鞠の頂の先端までをファインダーが捕らえシャッターが押される寸前に、百井の手が吉野のカメラを取り上げた。
物欲しげな百井の視線と、いとおしげな吉野の視線とが絡まる。
間をさえぎるものがなくなった二人は、どちらからともなく求め合い、口唇を重ねあった。
「何も知らなければ何かを欲しいなんて思うこともなかった」
絡んだ舌が離れ、百井が口にしたのは劇中のヒロインの台詞だった。
「一人でできないことがあるって気付いたから、俺を頼ってくれたんだろ」
アパートでひとり、何度もプレイしたゲーム中の主人公の台詞が吉野の口をついて出る。
ただの演技でなく、自分の心情を台詞に乗せた。
「……でも、私を手伝うってことはあなたに無理をさせることになる」
百井はうつむき、吉野の胸を押し返しながら告げる。
「大丈夫だよ。女の子一人守るくらいなら何とかなるって思ってる」
押し返す百井の腕ごと、吉野は抱きしめて台詞を続ける。
「あの……やっぱりわたしじゃ、ン」
百井が台詞を言い終わる前に吉野は唇でふさいだ。
「あの、ごめん、俺もうッ」
「え?え?きゃっいきなりそんな……っ」

吉野は髪を撫でられる感触を覚えながらまどろんでいた。
夢の中で主人公はヒロインと二人、草原で事後の語らいを楽しんだ後、景色を四角く切り取った扉から出て行った。
「吉野さん、吉野さん」
びっくりして吉野がベッドから身体を起こすと部屋は薄暗く、窓の外の林は黒いとばりをまとい始めていた。
ベッドの上には吉野がひとり、百井は既に普段着に着替え終わって廊下から声をかける。
「ライト点けっぱなしでしたね、もうバッテリー切れてますよ」
振り返って玄関ロビーを指差す。
「しまい方が分からなくって片付けてないんです」
「大変だ、は、早くしないと!来る時も結構大変でしたよね」
ズボンを穿きながら慌ててベッドから立ち上がる吉野に、百井は微笑で返す。
「大変なんてそんなことなかったです。お願いしたのは私の方だし、それに暗くなっても吉野さんが一緒なら」

暗い山道を手を取り合って降りた二人は別荘地管理棟で鍵を返した後、停めてあったレンタカーで駅へ向かった。
「さあ、帰ったら早速RAWデータ現像してコスROM用の写真を選びましょう」
吉野はうきうきとハンドルを操る。
「まさか百井さんもそんなにあのゲームが好きだったとは」
「でも難しいですよねえ……いまだにヒロインは攻略できたことないんです」
「え、あの台詞、ヒロイン攻略成功時のやりとりですよね」
「あ……あの台詞は……そ、そう、そうですよね」
吉野が助手席を向くと、百井は顔を真っ赤にしてうつむいて何かぶつぶつ口ごもっていた。
「今、僕も主人公と同じ気持ちです。一人になんてしない、これからは二人で頑張ろう」
吉野はそういいながらシフトノブから手を離して、百井の手を握った。
作品名:ろけ☆はん 作家名:碇シンヂ