ポロメリア
「不安があるならまず俺に言え、いいな?悪いようにはしないから。それともお前は、俺が信用できないのか?」
「まさか!」
力を込めて否定した自信はあったし、実際アメリカは、イギリスは言うとおりにするだろうとよく知っていた。
満足そうにアメリカの右腕をなだめるように叩いたあと、イギリスはようやく料理に手を付けはじめ、アメリカもまた残りの半分を詰め込んだ。
イギリスを信用できないわけがない。彼はきっとアメリカに悪いようにはしない。アメリカに目隠しをした上で、どこまでも先導してくれるに違いない。わかっている。わかっている。わかっている。
しかしアメリカはもう目隠しの隙間から世界を覗いてしまった。窮屈さから解き放たれるためには庇護ごと捨ててしまうしかないから、どんなに不安がってもひとりで進むしかない。
まずい料理を口いっぱいに頬張ってふと気配に顔を上げれば、楽しそうなイギリスの指が口許を掠めて乾いたマッシュポテトを攫い、そのまま彼の口に持っていった。あまりにも自然になされたせいでアメリカはしばしの間何が起こったかも自覚できないで、気づいたときにはこんな仕草すら日常に組み入れてしまった自分を嫌悪した。
夢想するのはひとつ、もしも今口にしたならばイギリスはどんなふうに答えるのだろう。どんなふうにアメリカを守ろうとしてくれるだろう。それともアメリカのほんとうに幻滅するのだろうか。
アメリカには分からない。
離れることだけは分かっていた。