ESCAPE!!
犯行時刻の5秒後
am5:00
いつも通りの平和な日常を迎えようとする町に、
一つの非日常が舞い込む。
「イークー君!!あ・そ・ぼっ!!」
町の隅に小さく位置する家の扉が勢い良く開かれる。
まるでほかの住人のことなど一切気にしないとでもいうような轟音
をたてながら。実際、扉を開いた人物、エントは若干近所からの激しい
クレームと家の住人である燠からの怒声を予想しながらやったことなのだが。
だが、彼の予想は一つ外れることになる。
「・・・・・?あれ?」
いつもの鼓膜の破れるような怒声が、今日は全く聞こえてこなかったのだ。
若干不審に思いつつも、勝手知ったる彼の家に勝手に入り、いまだ起きぬ
彼の兄妹をこれ以上刺激しないように静かに目的の彼の部屋へと向かう。
「燠ー・・・・?」
そっとドアを開け、中を見渡すも目的の彼の姿は見当たらない
(さすがに朝の5時にいないとか・・・ないだろ。)
自発的に動こうとしない彼の性格と今現在の時間帯から考えても
彼がこの部屋にいないのはあり得ない。
なのに、いない。
さすがに不審に思い気のきく妹のおかげで片付いている部屋の中を一通り
探索をしてみる。ベッドの下、クローゼットの影...なんのためにそんな
ところにいるのか何てことは考えず、とりあえず人が入れそうな場所を
探索していた途中_
「・・・ん?」
あまりにも周りの整頓された空気になじみすぎて気付かなかった、ちいさな
ローテーブルの上に几帳面におかれている紙に気づく。
露骨に怪しい紙を「プライバシー」などおかまいなしにめくり
すいすい読み上げていく。
文面が進むにつれ、彼の表情は険しいものになっていくのだけれどそんなこ
とまだ読み始めの彼には分らない。
『TO馬鹿犬猿
とりあえずお前らよりも先回りさせてもらった。頭の悪い(笑)糞猿の
ことだから先手うって朝5時くらいに燠さらわせてもらったから。
まあさすがに自分でもちょっと早いと思ったんだけどな。一応?
とりあえず
燠はもらった。 by如月』
文面を読み終えた彼は即座に壁に掛けてある時計に目を向ける
『am.5:02』
自分が来たのは5時丁度。如月がこの部屋にいたのも5時ちょうど。
その間、玄関からはだれも出ていっていない…
そこまで考えて、窓に目がいく
不自然に半分くらいあいた窓に、だ。
(俺が来たのは5時で、やつがいたのも5時で、紙に書かれた字は最後だけ
すごく荒くて・・・・!!)
窓に飛びつく。勢いよく窓を全開にしてめを、凝らす
「なんだ、もう気づいたの。」
小さな影が発した言葉を、彼の発達した聴覚は聞き逃さなかった。