Ecarlate
「…エカルラートのことは忘れろと、言っただろう。ヒューズも、私も」
「…なんでだよ…」
「…?」
「なんで、オレに隠すんだよ。…わかってる、たとえばあんた達が怪人に関係があるってわかったら、まずいってことくらい。軍はさんざん奴にコケにされたんだもん。…でも、あんた達はなんで、オレがそんなこともわからないって、決め付けるんだよ…」
語尾に怒りがにじむのを確かめ、息を飲むような声が頭上からしてきた。そのことに、いくらかエドワードの溜飲は下がる。
「それは…」
言葉に詰まって、ロイは途方に暮れたような声を出した。
「それは、」
エドワードは大人しい。ロイの腕に、抱かれたままに次の言葉を待っている。視界の先にいたはずのリザがとっくに姿を消していることに、どこまで気付いていただろうか?
「誰だ!」
ふたりとも確かに意識が一瞬他所にずれていた。そうでなければ、こんな風に兵達に発見されることはなかっただろう。だがそれは仮定の話であって、今は何の意味も持たない。
―――結果だけを述べるのであれば、つまり、エドワードとロイの二人は、敷地内を走り回っていた兵達の一部に姿を発見され、逃亡を余儀なくされた、ということである。