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Ecarlate

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「まあそれは認めるが…。だってよ、まさかここまで大事になるとは思わんだろうが…」
 ヒューズが最初にロイにエカルラート復活を持ちかけたのは、マチルダをすぐに救い出す手立てがなかったことと、マチルダの上官には後ろ暗い噂があり、その調査のためにもマチルダが勝手に罰されてしまうと困るから、時間稼ぎでいいから一時的にも彼女を救い出したかったこと、そして彼女の父親が、ヒューズにとっては恩義ある人だったということ…などが原因だった。いくつかの問題点を解決するために、エカルラートは実に便利な存在だったのだ。そして実は、記事にならなかっただけで、軍内部に限定した話に留まっていたが、エカルラートは十四年前以降も現れてはいたのだ。主に、ヒューズの操作によって。つまり民間人にとっては「今更」でも、軍人にとっては「またか」というものであった。そういった手段を真似る輩もいて、…軍で「エカルラート」といえば、都合の悪い人物を神隠しさせることまでを指す言葉になっていたりする。
「…だが、ヒューズ」
「あん?」
「久々に面白かったじゃないか」
 ロイの茶目っ気を大いに含んだ言葉にヒューズは目を瞠り、…それから諦めたように苦笑した。
「ま、…違いない。…おまえんとこもあれじゃないか?お姫様の充分なストレス発散になったんじゃないのか」
「…さぁ。どうだかな」
 ロイは肩をすくめて笑う。
 当時の東方司令部のお姫様は、今では立派な軍人で、ロイも頭が上がらない優秀な人物だが…はて、どうだったのだろうか。とりあえず咎めることなく片棒を担いだから、楽しんでいたことは間違いない。
「…ちなみに、ヒューズ」
「あ?」
「エカルラートの名前だが、…本当は彼女のものなんだろうが、次、一度だけ私に使わせてくれないか」
「は? …別にいいんじゃねぇか、使いたきゃ使えば。第一、俺に断るなよ。俺の名前じゃねんだから」
 そうか、とロイは機嫌よく笑い、ドアへと向かう。ヒューズも雑談の終わりを悟り、腰掛けていた机から立った。
「…で、誰を攫うってんだよ」
 そして何気なく尋ねた彼に、もう随分と付き合いの長い友人は、楽しげに笑ったのである。

「十四年前攫いそびれた相手だよ」


作品名:Ecarlate 作家名:スサ