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ジャイアントほむ~散りゆくは美しきQBの夢

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 来るべき近未来、人類は第三のエネルギー革命、魔法少女システムによってかつてない繁栄を繰り広げていた。だが、三月の放送延期の惨劇から一月の時を経て、見滝原市民と視聴者は再びワルプルギスの夜を迎えようとしていた。その間、人々は動くことはおろか、ネットで10話まで見ることは出来るけれど、続きを見ることもなく、為すすべもなく11、12話の放送を待っていた。

 そんな中、見滝原では地球の未来を吹き飛ばすまどかの魔法少女化を巡り、インキュベーターと、暁美ほむらの暗闘が空を赤く染めていた。
また一方では、ワルプルギスの夜を伴ったキュウべえが、鬱シナリオの真実と共に見滝原に姿を現す。

 が、しかし!!
 
「なんだ? あそこでポッキーをくわえた少女は」

 キュウべえは、目の前に立ちはだかる少女がたった一人で自分とワルプルギスの夜に挑もうとしてることに驚いた。

「さぁ、いくぞ!」

 赤い槍を振り回し、戦闘態勢を整えた佐倉杏が不敵に笑った。

「まてよ、あの胸元のジェムの輝きは? たしかこいつは、幻術の魔法少女、人間爆弾、佐倉杏子!」

「その通り、そしてこれこそ生命と引き替えに放たれる結界内最大の爆発力を持つ、ビッグバンランス!」

「これが噂の禁断の技!」

 杏子は気合を込めて手に握っていたリンゴを握りつぶした。拳から汁が垂れて大地にしみ込む。拳の中に残った搾りかすのリンゴを払いながら、杏子は槍を握り直した。食べ物を粗末にしない杏子がついに禁忌を破ったということは、彼女が決死の覚悟であることを意味していた。リンゴの汁にまみれた手で父の形見をかたどった髪留めをはずし、それに口付けを行った杏子は続けた。
 
「その通り、杏子はそれを打とう。だが諸刃の刃はあたしだけじゃない! 巴マミも鹿目まどかも美樹さやかもみんな自分との戦いだった。だが私は魔法少女として、誰一人救えなかった、そして友として、なにもしてやれなかった。そんな自分に腹が立つ!」

 両手に握り直した槍を振り上げ、土煙をあげて杏子が飛んだ。

 「こいつ、死ぬつもりか!」

 「その通り、キュウべえ! もうこれ以上の犠牲はたくさんだ!」

 「その必要はないわ!」

 突如現れたほむらの中で時が音を立てて止まり、、蹴りをかまして杏子を吹っ飛ばした。杏子の意識が一瞬途切れた。気がつくと、杏子は見滝原市を見渡せる港の倉庫のがれきの中にいた。
 
 「いたた。あいつ、またあの力を使って・・・」
 
そう言いながら杏子は臨界まで高めたジェムの力を徐々に下げた。今はまだこの生命を無駄に散らすわけにはいかない。ジェムを一度臨界まで持っていったため、消耗が激しい。肩で息をつく杏子はしばしの休息をとらざるをえなかった。

「君も僕に逆らうのかい」

「あなたは運がいい。今日は特別でね、もう一人来るのよ」
 
 キュウべえはその少女が青い髪の少女でない事を期待していた。あんな魔力係数の低い少女だと、キュウべえとしても魔女にし甲斐がない。
 
 そのキュウべえの考えを見透かしたのか、ほむらは右手を水平に上げて手を下した。
 
 ほむらとワルプルギスの夜との戦いが今まさに始まった。
 
 
 その頃、キュウべえとほむらが全てを掛けて対峙していたころ、見滝原の体育館でも母と子が対峙していた。

「助けにいかなくっちゃいけない友達がいるの!」
 
「お前がいってなんになる! 警察や消防署に任せろ!」

「今は私に行かせて!」

 階段で腕を捕まれた少女の顔に母の手のひらが踊った。
 
 赤らんだ顔を押さえて、なおも少女は続けた。
 
「ごめん、お母さん。今は私を信じて。どうしてもやらなくっちゃいけないことがあるの。それはどんなことよりも大事なことなの」
 
 沈黙が二人の間に広がった。あたりに強い風にあおられた雨が窓ガラスをたたく音が響く。

 沈黙を破ったのは母の方だった。
 
「誰かにだまされたりしていないな?」 

 隠し事をし続けていた「いい娘」をなおも信じようとする母の意思があった。
 
「うん!」

「下手を打つんじゃないよ! あたしも付いていこうか!」

「ううん、お母さんはタツヤとお父さんを守ってあげて」

「わかった。行ってこい! 友達が待っているんだろ」

 肩をたたいて母は娘を送り出した。

「うん、行ってきます。お母さん」

 その頃、見滝原の気象観測官は悲鳴を上げていた。

「ばかな、スーパーセルさえも超えるサイズだと。どうして水平規模で100kmを超えるサイズの代物が日本で誕生するんだ! これはまさか、伊勢湾台風どころの騒ぎじゃないぞ!」
 
 新人の観測官が悲鳴を上げる。
 
「主任観測官! いったい何が起きるんですか! このままじゃ僕たちも…」
 
「バカ! 俺たちの仕事は気象を予測し、分析、記録を行い、それを人々に伝える仕事だ。それが俺たちの『務め』だ」
 
「で、でも、僕は死にたくありません!」
 
 新人が情けない声をあげた。だがそれは真実の叫びでもあった。
 
「わしだって死にたくはないよ。嫁さんと子どもがいるしな。だからこそ、かっこ悪い事が出来るか。それにな、今は大丈夫だが、最高時速145kmの突風の中、生身で飛び出したらどうなるかわかってるよな? 後は祈るのみだよ」 

 気象観測用コンピューターのモニターだけが、不気味に点滅を繰り返していた。

「うーん、やっぱり君たちの考えは理解できないなぁ。威勢が良かったのは最初だけかい?」

 ほむらがRPG7や迫撃砲をすべて使い果たしても、ワルプルギスの夜にはまるで通じなかった。爆煙の中から無傷のワルプルギスの夜を見たほむらは、力なくひざをついた。

「もう君の顔を見るのも飽きてきたよ。せめて最期くらいぼくたちの役に立ってもらえるかい?」

 ワルプルギスの夜がキュウべえの命令を受け、折れたビルを現出させた。

 キュウべえが手を振りおろすと同時に、折れたビルがほむらに向かって投げつけられた。

 時を止めて受け止めようとしたほむらだったが、もうそれは叶わなかった。

 直撃こそ避けたものの、ビルの破片をまともに体で受け止めたほむらは、右足をがれきに押しつぶされてしまっていた。

「いい格好だよ、暁美ほむら。君には大事な役目を果たしてもらう。君にはエサになったもらおう。そして君を助ける為、まどかに契約してもらおう。これで君の言葉通り、もう一人の魔法少女が来る事になる。これでぼくのノルマも終わるだろう」

 勝利を確信したキュウべえが一方的に告げた。

「あなた達の思い通りにはさせるもんですか!」

 うつ伏せになったほむらが必死に身を起こそうとするが、そのたびに力なく地をなめる。

 「もう君はあきらめる事を学ぶといいよ、そうすると僕のノルマも一つ片付く。願わくばその直前にまどかに来てもらいたいもんだね。ところでもう時間遡行はしないのかい。もっとも遡行した所で君は永遠に同じところをぐるぐると回るどころか、悪化の一途をたどるのみだけどね」

「ずいぶんと話が違うじゃないか、ええ、キュウべえ」

 二人の会話に念話で割り込む者がいた。