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ジャイアントほむ~散りゆくは美しきQBの夢

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「やぁ杏子、まだ生きていたのかい。もうひとりはどうしたんだい。姿を見ないけど。今、どこにいる?」

「さっきの話、続きを聞かせてほしいな。もしかして、私もそうだったのか?」

 キュウべえの問いかけを無視して、杏子が続けた。

「いいだろう、頃合いだからね。君たちの願いを僕は叶えるけど、その願いは必ずしも幸せを意味はしない。むしろほむらや君、さやかのように、自然の摂理を無視した途方もない願いを望めば望めば望むほど、その願いは自然の摂理によって、運命という形で反動を受ける。さしずめ宝くじに当たった人が皆幸せになるかどうかという話がわかりやすいか。だから君たちはほどなくして絶望から魔女になる運命だったのさ。希望を持つ限り救われない。過去の魔法少女たちと同じだよ」
 だが、杏子は絶望的な話を聞かされても、まるで堪えはしなかった。

「だってよ、まどか。じゃぁ行くか」

「ええ、杏子ちゃん。私、ほむらちゃんを助けに行く! 私、たとえそんな運命が待っていたとしても、そんな絶望に立ち向かって見せる!」

 キュウべえは杏子がまどかを連れてこちらに来てくれることに疑問を感じて尋ねた。

「わざわざ契約するために杏子がまどかをつれてこちらに来てくれるのかい。まどかが望めば僕はいつでも姿をあらわすのに。それに君だって僕と一緒に過去の魔法少女を見ただろう」

 まどかが念話でキュウべえの言葉を否定した。

「いいえ、キュウべえ、私は、私は、ほむを助けに行く! 魔法少女ではなく、生身の少女のままで! そう、ほむがほむが、ほむが私を待っているんだぁ!」

 そう叫ぶとまどかはほむらの倒れ伏した場所まで駆け抜けようと大地をけった。

「そうか、君が何を考えているのかさっぱり分からないけど、ならば、手伝って差し上げよう。出でよ、使い魔たちよ!」

 ノリノリで芝居がかった言葉を使うキュウべえであった。

「この使い魔と触手で君をとらえてあげよう。それからゆっくり願いを聞くとしようか」
 まどかの真意を探りかねたキュウべえであったが、それを楽しもうともしていた。サーカスの道化師やゾウなどの使い魔たちがまどかに群がった。

 だが――。
 
 一筋の光がまどかに群がろうとした使い魔たちを切り裂いた。
 
 そこにいたのは剣を握った。美樹さやかだった。その傍らには佐倉杏子もいる。

[http://www.youtube.com/watch?v=EDuSgReRQDo:movie]

「よくぞ耐えたぞ、鹿目まどか! おまえの姿に今は亡き、我らが先達、巴マミの姿を見た! 希望とは、絶望をはかることにこそ、その意味もあれば価値もある!」

 佐倉杏子がまどかを讃えた。佐倉杏子が言うように、希望とは絶望に立ち向かおうとする強い意志でもある。かつて希望から来た魔法の願いから絶望を味わった杏子の言葉だけにその言葉は重かった。

「だから鹿目まどか、ここは我らに任されよ!」

 ふんっ。

 目の前の使い魔を切り伏せたさやかは、空中に魔力で足場を作った。かつては音符型だったその足場は、今はさやか自身のソウルジェムの形へと変わっていた。人は変わる。そしてさやかもわずかながら成長し、変わっていった。
さやかはコンクリ片をまとい付かせながら軽やかに飛び上がり、ジェム型の足場でさやかは一度しゃがみ込む。

 とうっ! 

 裂帛の気合いとともにさやかは勢いよく飛び上がった。一飛びでワルプルギスの夜を見下ろす高さまで飛翔したさやかは、その手に握った剣を片手でやり投げのように後ろ手に溜め、渾身の力を込めて天に放り投げた。

 「蒼勇の刃(ブレイブエッジ(Cふぁっ熊)!」

 剣が消えてから音が聞こえた。音速を超えている証であった。

 その剣が漆黒の空に一度消え、光が煌めいた瞬間、無数の剣が空から降ってきた。その様はまさしく銀の雨と言えた。

 そのすべてがワルプルギスの夜の触手と、その使い魔に突き刺さり彼らの動きを止めた。

 剣が突き刺さった使い魔たちが声にならない悲鳴を上げた。

 その声がかつては人間の少女だったことを知っている皆は、耳をふさぎたくなる気持ちを抑え、歯を食いしばった。

 まどかは走る。使い魔たちの屍の横を。

 さやかがまどかのために使い魔たちを切り捨てて血路を開いていく。

 その様はまさしく地獄絵図といえた。だが、彼女たちは走らなければならない、自分たちの選択のために。
 
 だがいつまでもワルプルギスの夜の触手や使い魔を押さえられはしなかった。
触手を剣で縫い取り、使い魔達の何割かを倒したとはいえ、いずれ再生、復活を遂げる。

 まどかはさやかが作ったそのチャンスを生かし、必死に駆け抜けてほむらの元へと近づく必要がある。

「さやかちゃん・・・、ありがとう、ありがとう!」

 後ろを振り向きながらまどかは礼を述べた。走りながらだから完全には振り向けない。だがまどかにはわかっていた。さやかが振り絞った魔力がどれほどの物か。さやかはまどかの未来を切り開くため、すべてを投げうっている。恐らくはこの戦いが終わったとき、彼女のソウルジェムはその色を黒く染めあげるであろう。だがそれは覚悟の上だった。

「おのれ、こしゃくな。行け、まどかをとらえろ!」

 キュウべえが必死に号令をかけ、使い魔たちを走らせる。その声に応えるように、使い魔たちが体に突き刺さった剣をはねのけながら、まどか達の前に立ちふさがろうとする。

「そうはさせんぞ、インキュベーター! 生命知らずはかかってきやがれ! 見滝原の牧師が娘、佐倉! 杏子がぁ! 今こそまどかを守る盾になろう!!」

 杏子は槍を振るい、ほむらへと向かおうとするまどかの道を切り開いていく。まどかの周囲に群がろうとする使い魔達を手にした槍を回転させながら、切り払っていく。

 いつの間にか、杏子の後ろにさやかが追いついていた。

「今こそ戦え、美樹さやか!」

「応! 勝利の鐘も高らかに!」

 二人の獅子奮迅の働きによって、ほむらへと向かうまどかの道の使い魔はすべて切り払われた。しかし、その頃にはワルプルギスの夜の触手がさやかの放った剣の束縛から自由になっていた。

 使い魔も無限に再生を行うため、まさに今しかチャンスがないと言えた。

 だが一瞬の隙をついて、ワルプルギスの夜の触手が杏子を貫き、まどかの遙か後方へと吹き飛ばした。杏子は声も上げずに触手を食い止めている。

「杏子ちゃん!」

 耐えきれずにまどかが叫んだ。だが、返ってきた答えは――。

「後ろにかまうな、鹿目まどか! あんたが為すのは前進あるのみ! つぁぁっ!」

 杏子は自分のガードも構わず、槍をまどかの前方に投擲し、八節棍に姿を変えた槍が残った触手をすべて絡み尽かせて動きを封じた。杏子は遙か後方に吹き飛ばされてしまったが、杏子の意志のこもった槍は使い魔たちを押さえ込み、その生命を奪おうと使い魔たちを締めあげ続けている。
さやかも杏子の技に続いて触手を切り伏せていく。

 その中をまどかは走り抜ける。

「みんな、ありがとうございます!」