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幼い愛でも愛してる【第2話・3話】

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勇気も無くて
それでもあなたを愛することを
やめられなくて
そんな自分が嫌いになっても
あなたが私だけを見てくれなくても
それでいいのって納得できない
我侭な自己愛

こんな私は
まだまだ幼いよね


朝の空気が、異常に冷たい気がした。
 でもいつもと気温は変わっていない。私の誤解みたい。
 リンちゃんに言われた。告ればって。後押しされるのは嬉しい。頑張ろうって思える。
けど、怖い。怖くて仕方が無い。ルカ姉から拒絶されることが怖い。

いつも私のことを気にかけてくれた。レコーディングの時にアドバイスしてくれたり2人だけで映画を見に行こうって誘ってくれたりしてくれた。いつも大人なルカ姉、優しいルカ姉。

いつの間にか1つずつに惹かれていつの間にか全てに惹かれて愛してる自分がいる。何より大切なルカ姉の傍にいられるだけでいい。
でも、それだけじゃ満足できない、物足りないって強欲な私がいて、ルカ姉を自分だけのものにしたい、誰にも渡したくないって思う。
でもそれ以上に臆病な自分がいる。拒絶されることばかりを恐れて前に進んでくれない。
 私は

こんなに弱い。
こんなに脆い。
こんなに我侭。
こんなに幼い。

幼い愛。
告白して、拒絶されるからって怯えて私は悲劇のお姫様気取り。自己愛にも程があるよ、ミク。私は自嘲する。


気が付くとあたりは真っ暗で。ここがどこかも解らない。見知らぬ場所。街灯が私と一緒に周囲を照らす。
 無意識のうちに歩いて、迷子になっちゃた……。
どうしよう!なにも持ってない。財布どころか携帯も。どうする?どうすればいい?警察にいく?迷子ですって?冗談じゃない。恥ずかしくて死ぬ。軽く死にたくなる。

「お~い!ミク~!」
聞きなれた声。青い髪の…カイト兄さん!助かった。恥ずかしくて死ぬところだった。
「どうしたの?こんなところで」
片手にカップアイス。食べ歩きですか兄さん。まぁ…今回は何も言わないけど。
「えっと…迷子になりました」
「えぇ!?なんで?」
「ボーっとして歩いてたみたいで。気が付いたらここにいました」
「そっか。じゃあ帰ろう」
よかった。兄さんは優しいから、私を笑ったりはしない。
 そういえばメイコ姉がいない。
「めーちゃんはね、僕より先にレコーディング終わったから先に帰ったんだ。思ってたより早くデュエットの曲が終わったから、マスターがソロもレコーディングしたいっていったから」
私の思ったことを悟ったのか、彼は解りやすく説明してくれた。
 「あ、帰る前にアイス買おっか」
「……何個目ですか?」
「う~ん…7個目」
「………」
もういいでしょうって呆れた顔でいつもなら取り上げるけど大大大サービス。ていうか、そうしないと。兄さんは助けに来てくれたも同然だから。
「はい。兄さん」
笑顔で答えを返した。

家に帰るとメイコ姉だけがリビングにいて、お酒を飲んでいた。
ルカ姉やリンちゃん、レン君は?
さぁ。帰ってきたらもういなくてさ。外食かな~と。
メイコ姉はそういってから携帯を開いた。
「ミクだけが帰ってきてその質問じゃあ3人ともどこに言ったのか気になるわ」
 どこに行ったのだろう。
そんなことを考えて私はふと思った。
朝の8時には消えていた私がいつまでも帰ってこないんじゃ、心配して探してくれたんじゃないの?と。
「あ、もしもしリン?どこに行ってるのよ。ルカは?え?一緒じゃない?ミク?今カイトと帰ってきたわよ。…じゃあルカとレンにはリンから電話してくれるのね。わかったわ」
リンは今朝のことを話したんだろうか。
だとしたら嫌だな。メイコ姉に怒られちゃうし。

部屋に戻って私は結局決めきれずにいた告白するか否かを考えていた。自分自身が嫌なのも十分理解。でもルカ姉が諦めきれないのも十分理解。どうしよう………

ダダダダッ!

走ってる。誰かが。

ガチャ。

ノックもなしにルカ姉が入ってきた。呼吸が整ってない。走って帰ってきたのかな。
 ルカ姉は私を見るとまず怒ったように睨んできた。仕方が無い。私は彼女に大きな心配をかけさせたんだから。
「どこに行ってたの?」
「…隣町まで行ってたみたい」
「どうして黙って出て行ったの?」
「気が付いたら出て行ってた。ごめんね、ルカ姉」
 …………………………………………………………
 長い沈黙。怒ってるんだ。
 ルカ姉に唐突に引き寄せられ、彼女に抱きしめられた。彼女の豊満な胸に顔を少しばかりうずめる形。やわらかいなぁ……ルカ姉の胸。
「心配させないで。私はあなたがいないと生きていく自信が無いのよ」
彼女の表情はわからない。ただ少しだけ震えているような気がする。
「……大げさなこと言わないでよ、ルカ姉」
「…好きよ、ミク」

え?
今、なんて?

「はは…冗談は…」
混乱した思考回路で私は答える。
「冗談じゃないわ。本当に好きよ。愛してる」

あ……
これって、告白?
「ルカ姉?」
「ミクは私のこと、好き?」
照れているのか、私に配慮してか、引き離してくれない。
「……うん。愛してる」
「…じゃあ、恋人でいいわね?」
「いいよ」

ヤバイ。
嬉しくて泣いちゃってる。

でも、結局ルカ姉に助けてもらってる。
私は怖かったのに。


愛してるって伝えてくれた
私も大好き。
あなたのことを愛してる。

こうやって抱きしめられていても
泣きそう。

好きだからね、
だから、今度は私が言う
伝える

怖がらないよ




3話 ルカ視点




頷いてくれた
貴女は
泣いてくれた

それだけでも十分
でももっと欲しい
貴女の全てを知り尽くしたい
そんな欲望

私は
我侭ね


お風呂上り。乾かした髪をいじっているとリンがやってきた。私はこの子に感謝しなくてはならない。感謝しきれないくらいに。何せこの鏡音リンのおかげで私はミクを手に入れることが出来たのだから。
「どうだった?ミク姉」
「おかげさまで私のものよ。ありがとう」
嬉しそうに笑みを浮かべてくれた少女に、もう1度ありがとうと言葉を紡いだ。
「レンを騙すの無理っぽくてさ。言ってよかったかな?」
「あら。もうばれちゃったの?」
まぁいいけどなんて考えるのはいいことだろうか。
「レンね、よかったって。ミク姉が寝言でルカ姉って言ってたの知ってたみたいだし」
寝言で言ってくれてたのね、ミク。そう考えると嬉しくなってきた。ますますこの少女に感謝。あとその片割れにも。
「レンに祝福ありがとうっていって頂戴。明日、私からも言うから、よろしく」
「うん」
 お休みを言って私はリビングを後にし、2階の自室へと足を運んだ。

椅子に座って机に置かれたままの本を手に取る。しおり、ちゃんと挟んだかしら----よかった。挟んでいた。しおりを外して黙々と本を読み始める。
1ページ。2ページ。3…4…
5枚目をめくる一瞬前に控えめなノックが響いた。しおりを挟んで本を閉じる。
「どうぞ」
そう言ってから少し間をおいてノブが回った。
 「えっと…いい、かな?」
青緑の髪の…ミクはお風呂上りね。シャツだしタオル持ってるし、髪ほどいてるし。
「えぇ。いいわよ」