好きだから【臨帝】
「消火器そろそろ新しいの買わないといけないから……使いたいなって。あ、消火器って使用期限が――」
「使用期限があるものを! ギリギリで使って……使えなかったら」
「いや、使えなかったら問題だろう。訴えて勝てるよ」
「僕が火傷でもしたら……どういう」
「………………お利口さんな帝人君はそんなことにならな」
「考えてませんでしたよね! 僕のこと考えてませんでしたよね?! 消火器使いたいなぁとしか考えてませんよね!!!」
怒る帝人に「鍋で使ったガスコンロもあるからさー」と何が楽しいのか笑いながら言ってきた。
「怒らないでよ」
「怒りますよ!」
「泣かないでよ」
「泣いてませんよ」
「嫌わないでよ」
「好きですよ」
怒鳴る帝人を臨也は抱き締める。
嬉しそうな顔をしている臨也を「好きだから怒りますよ」と蹴る。
上手く蹴れなかったのは「許して」と甘ったるく耳元に囁かれたせいではない。
(惚れた弱みだ……それも情けない理由かな?)
罰として帝人がする気だった夕飯は臨也の当番になった。
天ぷらと蕎麦は美味しかったので少し憎たらしかったが、帝人が作ったわざと生焼けの天ぷらを臨也が喜んで食べたのでむず痒い気持ちと罪悪感を覚えてしまった。
結局、好きだから。