お正月の争奪戦?
──結果として。
友情の取り替えた羽根が爆発して両者KO。
「わぁい、勝ったよ洋ちゃん!!デート行こう!!あ、一匹とも一緒でいいよね?友達じゃないかっ!!」
「………ガル」
爽やかに言い放つ友情と、相槌なのか、口癖を呟く一匹狼。
しかし師弟は目の前の惨状に、答えでは無い言葉を口にする。
「鬼ですか兄さん」
「もう反則なんてもんじゃねーなぁ…」
だが友情は動揺の欠片も見せず、
「だって羽根が何故か爆発してなくなっちゃって、当事者達が戦闘不能に陥っちゃったんだし、仕方ないよね?」
「何故かと言いますかこの事態を」
「…こんなバイオレンスだったかなぁ、友ちゃん…」
「それも友情のいいとこガル」
「えー」
一匹のそれはフォローになっているのか疑わしいが、本人としては真面目の本気だ。
「とにかく決まりっ!!」
「ええー」
「私も同行して構いませんよね、兄さん?」
「わぁ、ちゃっかりしてきたね、努力!!」
「…承諾してないのに流されるしかない様な気がしてきた件について」
「どうせ攫われる時は攫われるガル」
「攫われるって一匹ちゃん…」
洋一が諦めの心境で溜息を吐く。
その耳に、ずるり、という何かを引き摺る様な音。
「ゆ・う・じょ・おぉ~~~………」
「フッ………いい度胸だ………」
黒焦げでぷすぷす煙を上げながら、青筋立てつつゆらり、と立ち上がる勝利と天才。
怒気を纏う二人の姿は、恐怖が呼び起こされて然るべきだと思われる。常人にとっては、だが。
「うわ、しぶとい」
案の定、常人では無い上兄達のそういう姿に慣れてもいる友情は、その様子に感心は含みつつも呆れた様に呟いて。
「この程度で俺を倒そうなんて甘いんだよっ!!」
「この天才を足止めするにも足らないな…」
「やだなぁ、そんなの狙ってないよー。第一、爆発は大した事ないんだよ?ただ…」
二人から放たれる殺気もなんのその。
友情はにっこりと、
「仕込んであった睡眠薬が、超強力なだけでっ♪」
爽やかな笑顔でのたまったその瞬間に、前触れ無く唐突に、勝利と天才がぶっ倒れる。
「………友ちゃん、超こわい」
「…爆発の際に飛び散った粉塵、妙に多いと思ったら…兄さん…なんて恐ろしい人だ…!!」
「持つべきものは友達だよねっ!!」
「天才にも気取られない為に工作したらしいガル」
「自慢げに言う事なのかそれは…」
「…ていうか僕の拘束とやらにここまでする理由が解らないんだけど…」
何されんの僕…と不安そうな洋一に、
「まぁ、ここまでしたのは一種、罰みたいなものだから」
だから気にしなくていいよー、との友情の言葉に、洋一が首を傾げる。
「罰って?」
「うん、色々と、ね」
具体的な事は言わず、友情はそれだけ言って、笑顔のまま黙った。
頭の上に疑問符を浮かべる洋一を置いて、なんとなく努力には解ったらしく。
「…まぁ、気にする必要ありませんよね」
素っ気無く呟いた。
「………洋一に普段からベタベタするのはお前も同じなのにな」
語尾にガルを付けず、努力のみに聞こえる声量で、一匹狼がぼそりと一言。
「………すぐ押し倒そうとする連中と一緒にされたくないな」
応える様に、こちらも一匹狼にのみ聞こえる声量で努力。
そんな様子を眺めつつ、何を話しているのかを正確に把握している友情は、
「うんうん、水面下での争いは見てると楽しいなぁ!!」
僕は漁夫の利が理想だけどね!!なんて言っていた。
「………なんかもー………」
爆睡中の勝利と天才、何だか睨み合っている努力と一匹狼、にこにこ笑っている友情。
そんな光景から目を逸らし、
「………訳わかんねー………」
寒空の中、天に向けて、途方に暮れた様に呟く洋一だった。