Trust You
まともな答えではないにも関わらず、津野は顔をほころばせた。無理もない、今までは松浦に完全に拒否され続けてきたのだから。
「今日はありがとう」
背中で津野のお礼を聞きながら、思わず漏れた苦笑を見られないように、松浦はすぐに部屋から出た。
松浦の言葉を聞いた瞬間の、津野の嬉しそうな顔が浮かんだ。
よかった、といった時の笑顔。
松浦と呼んだときの、少し恥ずかしそうな顔。
それから、体を張って松浦を止めた時の、必死の顔。
「・・・あいつ、どれだけ」
どれだけ俺のことが好きなんだ、と呟きかけて、口をつぐんだ。
好きだと?なんだよそりゃ。
「・・・調子狂うっつーの」
そうだ、今まであんな奴いなかったから、扱い方に困るんだ。
舌打ちしつつ病棟の廊下を歩く松浦は、ふと、白と黒のボールが恋しくなった。サッカーシューズも、もう長く履いていない。
あいつがそんなに言うなら、部活に出てやってもいいかな。
end