「ただいま」
「おぉー、ほんま冷たいなぁ。血色悪いし、トマト食べてるか?」
それを意に介するでもなく空気を読まない男は温い手でプロイセンの冷えた頬を撫で回し、冷えた髪を梳いて陽気に笑う。
「な、んで、トマトなんだよ?…ってか、お前らなんで…」
「フランスと俺が栄養つくように今日は温かいもん作ったるからな。残さず、食べなあかんで?」
「…ちょっと待て、お前、なんの話してんだよ?」
どうにも上手く話が繋がらない。プロイセンはスペインとの会話を諦め、助けを求めるようにフランスを見上げた。
「だから、俺ら、プロイセンに会いに来たの!」
スペインが投げ捨てた手袋を拾い、フランスが笑う。そして、ぎゅっとスペインとプロイセンを抱きしめる。
ああ、それでも思う。
俺達は深いところで交わらない。交われない。それでも、一緒にいる間だけはこうして全てのしがらみを忘れて、「国」ではなく気の置けない「友人」でありたいと。
「おかえり、プロイセン」
「おかえり、プーちゃん」
言いたかった言葉がやっと言えた。スペインとフランスは腕の中、痩せた男を抱き締める。やっと、戻ってきた。やっぱり俺達は、三人で「悪友」だろう。誰が欠けたって駄目だ。
右と左。
ぎゅうっと抱きしめられ、プロイセンの瞳が堪えようとしていた何かがじわりと涙で潤む。こういう、ちょっと感情的で変なところで涙脆いところは変わってはいないようで、それにほっとしながらフランスとスペインは顔を合わせ、によりと笑った。、
「プロイセン、そんなにお兄さんに会いたかったの?お兄さん、感激!」
「な、ちげぇよ!!」
「フランス、違うで!プーちゃんは俺に会えたんが嬉しかったんやで!!な、そやろ?」
ぎゅぎゅうと右左。冷えた身体が温もっていく。
「何、言ってんだよ!!俺が帰ってきて、一年過ぎてんだぞ!!言うの遅ぇよ、お前ら!!」
怒鳴って、プロイセンは口を開く。
「…っ、お前ら、ただいま!!」
オワリ
ドイツに自販機があるのかどうかは知らない。気にしないでくれ…。