二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Family complex -星を見た日(仮)-

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
Family complex

-星を見た日-





「おい、星見に行くぞ!」
帰宅したギルベルトが、やけに弾んだ声をして玄関先でそう言い出したのは、日も落ちかけた夕暮れ時だった。
夕飯の準備をしていた菊は、その声を聞きつけて何事かと玄関へ出る。
「なんですか帰ってきて早々」
「だから星!流星群、見に行くぞ!」
「は?」
今度は何を言い出すのかと思えば、この男は相変わらずのようである。
そういえば、確かに昨日の朝、流星群が見頃というような事をニュースで言っていて、それを二人で見た事を頭の隅でちらりと思い出したが、それにしても唐突すぎる。
騒ぎを聞きつけたのか、居間からルートヴィッヒも出てきた。
「兄さん、お帰り」
「おう、ただいま。ルッツ、流れ星見に行くぞ」
菊は困惑の表情を崩さず、「どこで見るというのです?」と尋ねた。
ここのあたりは街灯が多くて夜も明かりが絶えない。
菊は流星群を見た事はないが、さすがにここでは明るすぎるのではと思う。
菊の懸念を見通してか、ギルベルトはさらりと隣県との境あたりにある自然公園の名前を口にした。
「あそこなら、まあ見れそうではありますが…でも車がないと行けないでしょう」
「車なら借りて来たぞ」
得意満面の顔で、ギルベルトはポケットから出したキーを掲げた。
それを見て、ルートヴィッヒも顔を輝かせる。
「じゃあ車で行くのか? 兄さん」
ルートヴィッヒの問いかけに、ギルベルトも「そうだぞ」と嬉しそうな顔で答えている。
「貴方は本当にもう…いつも突然なんですから」
菊はため息を一つついて、台所へと踵を返した。
車まで用意されてはもう頷くしかない。
なによりルートヴィッヒの、この嬉しそうに弾んだ声を聞けば拒否などできるものか。
「おい、どこに行くんだよ」
「行くなら早くごはんを食べてしまわないと。後片付けもあるんですからね」



**



毛布にビニールのシート、それからポットに入れたお茶と、ありあわせになるが簡単な軽食も作ることにする。
大慌てで出かける準備をしながら、何だかんだいいながらも、だんだんと楽しくなってきている自分を菊は単純だと思う。
けれども、流れ星を見たかったのは本当だし、それに夜の外出というのはなぜか気分が高揚するものなのだ。
「おい、こんなに持って行くのかよ?」
菊が茶と握り飯の準備をしていると、ジャケットを着込んだギルベルトが台所へ顔を出した。
こんなに、というのは玄関に出した荷物のことだろう。
「もちろんですよ。ルートヴィッヒさんもいるんですから、暖かくして風邪をひかないようにしないと」
そんな返答の間に、「お、美味そう」とさりげなくつまみ食いをしようとした手を目敏く見つけて叩き落とす。
「いてっ」
「貴方はもう…!」
「いいじゃねえかよ、ちょっとくらい」
ギルベルトは顔を顰めて口を尖らせた。あいかわらず子供のような男だ。小学生のルートヴィッヒの方がよほど大人かもしれない。
「良くありませんよ。それよりルートヴィッヒさんは? 寒くないようにしてあげて下さいね。お願いしますよ」
「わーってるよ。ルッツは寒くないようにさせたって!もう車に乗ってる」
「じゃあ、玄関のを積み込んだらギルベルトさんも車に乗っていてください。私ももうすぐ行きますから」
「大丈夫か?」
ふいに問われて菊は思わず眉を跳ね上げた。
「ええ。奇跡的に仕事も返事待ちの状態でしたから」
わざと嫌味な言い方をして返すと、「可愛くねーの」などと言いながらギルベルトは笑った。
「じゃあ、待ってるからな。なんか手伝う事があったら呼べよ」
それからギルベルトは、菊の腰に手を回して背中に触れながら、台所を出て行った。