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Family complex -星を見た日(仮)-

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昼間はまだ暑さが残るときがあるが、夜は冷え込む日も多くなって来た。
やはりもう冬が近いのだろう。
1時間程の道のりを経てたどり着いた夜の自然公園はしんと静まり返っていたが、駐車場にはすでにいくつか車が見える。
菊達の他にも流れ星を見に来た者がいるようだ。
「菊さん、何か手伝う事は?」
トランクを開けていると、降りたルートヴィッヒが寄ってくる。
菊が軽めの物の運搬を頼むと、快く承諾してくれた。あいかわらず気遣いのできる子だ。
「あとはもう大丈夫ですから、ギルベルトさんと先に行って場所を見つけていてください」
「はい」
ギルベルトは待ちきれない様子で、もうすでに先を歩いている。
慌てて毛布とシートを押し付けたが、そうでなければ荷物はすべて菊が運ぶ羽目になったのかもしれない。
「おい、早く来いよ菊、ルッツ!」
はしゃぐような声を聞くと、そんな事は自分がやればいいかと思ってしまうから厄介だ。
ふと、ギルベルトの元へ行こうとしたルートヴィッヒを見て、その小さい首が露出しているのに気づいた。
外套などは菊が言いつけたせいもあってか、ギルベルトが念入りに身につけさせたようだが、首がまだ寒そうだ。
「ルートヴィッヒさん」
呼び止められて、ルートヴィッヒは立ち止まった。
「寒いですから、これを巻いていなさい」
菊はそういって、首に巻いていたマフラーをその小さな首に掛けてやる。
「あ、ありがとう…」
「風邪をひいてしまいますからね」
「でも菊さんが寒いんじゃ」
困惑した様子で見上げてくるやさしさがいじらしくて、菊はそっとその頭を撫でた。
「私は大丈夫です。ほら、早くしないとギルベルトさんを見失ってしまいますよ、行きなさい」
促すと、ルートヴィッヒは少し躊躇ったのちにギルベルトの元へ駆けていった。



**



駐車場の辺りはまだ街灯があって明るかったが、中へと入るとそれも少なくなり、公園の中は暗闇に包まれ、その向こうには黒い影のようになった林が静かに佇んでいる。
空を見上げると、雲がちらりとあるものの快晴と言って良い空模様だった。
運良く今夜は月も控えめにしているらしく、空の色も濃い。
すでに芝生の上には星見をしているグループがちらほらとあって、時折歓声が上がっていたが、ギルベルトとルートヴィッヒは更に奥に行ったらしい。一体どこにと思いながら携帯に着信を入れてみると、ギルベルトの携帯に出たのはルートヴィッヒだった。
「菊さん!すごいんだ、早く来て!!」
普段の様子からすると珍しいほどに、電話の向こうのルートヴィッヒは興奮しているようだった。
なんとかそれを宥めて場所を聞き出すと、どうやら彼らがいたのは目と鼻の先だったらしい。
菊が向かうと、広い芝生の上に二つの人影らしきものがあった。
「菊さん!」
二人はビニールシートを引いて寝転がっているようで、菊に気づいたルートヴィッヒが起き上がって手を振っている。
「よかった、良さそうな場所ですね」
「おう。菊も早くここに寝ろよ、良く見えるぜ」
ギルベルトは菊の顔を見ると、至極楽しげに笑った。
「さっきすごく大きいのを見たんだ!」
「あれはでかかったよな!」
そう言う二人は興奮気味に顔を見合わせている。
「まだ荷物がありますので、もう一度行ってきますね」
その楽しそうな様子に目を細めた菊がそう言って車に戻ろうとすると、ギルベルトがむくりと起き上がった。
「バカ、んなもんいいから早くここ来いよ、見た方がいいぜ」
「でも毛布が1枚では…」
躊躇う菊に、ギルベルトは立ち上がると菊の腕を引く。
そしてルートヴィッヒの右隣へ座らせると「いいから寝ろ」と言った。
渋々と菊が身を横たえると、ギルベルトはルートヴィッヒの身体を一旦起こさせ、自分はその左に身体を横たえると、おもむろに菊の方へと身を寄せてきた。
そして腕枕をするように、菊の頭の下へ腕を回す。
「えっ…」
一体何をするのかと戸惑う菊に、ギルベルトは「いいから」と言って菊の頭を抱くようにして引き寄せる。
「ほら、お前も腕伸ばせ」
それから、菊の左腕を広げさせると、今度は中央のルートヴィッヒに頭をその上へ載せるように言った。
菊の腕に、ルートヴィッヒの小さな頭が載せられる。
そして互い違いのようになった3人の上へ、ルートヴィッヒが毛布を引き上げた。
「…な?」
菊が見遣ると、ギルベルトが満足げににやりと笑う。
「こうすりゃ毛布が一枚でも温かいだろうが」
「…でも、」
「誰も見てねえよ」
確かに周囲には他の人の気配はない。
その上、夜の闇のせいで、例え誰かがいることは認識できても顔まではわからないだろう。
観念して二人の方へ身体を預けると、ギルベルトとルートヴィッヒの体温が、じんわりと伝わってくる。
「窮屈ではありませんか?ルートヴィッヒさん」
「ううん、俺は平気。温かいよ、菊さん」
そう言うと、ルートヴィッヒの意識はすでに空へと行ってしまったらしい。
菊の頭にある暖かく大きな手が、しっかりと包むように触れて来る。
時折悪戯するように髪を弄るのが、何だか愛し合った後の睦みあいのようでこそばゆかった。
菊はこっそりとギルベルトの手のひらへ自分のそれを重ねた。
ギルベルトが驚いたようにこちらへ視線を寄越したけれど、素知らぬ振りをして空を見上げる。
「あ、また流れた!」
ルートヴィッヒの楽しげな声がする。
夜の公園はしんと静まり返っていて、まるで世界にはこの3人しか存在しないような錯覚を起こしそうだ。
視界の中に、白く輝く光がまた一つ線を描いて消えていった。